若手棋士による塔矢アキラ研究会 9 - 10
(9)
長髪の男がアキラの肩を掴んでアキラの体を反転させ、背中から抱きすくめるように
して来た。後から来た男達がそのアキラの前に来て顎を捕らえるとキスをして来た。
「…!」
すでにかなり興奮しているその2人は奪い合うように交互にアキラの唇を吸い、
思い思いの角度で重ね、舌で唇の内側を舐め回して来た。
「もっと口を開けよ!」
興奮に行為が追い付かないもどかしさに苛つきながら1人がアキラの顎を掴んで
強く揺さぶって来た。だがかえってそれはアキラに掴まれた痛みを与えてますます
歯を食いしばらせる結果になった。
こいつらの好きにはさせない。何より強い意志でアキラは出来うる限りの
ガードを崩すまいと身構えていた。
「おい、あまり乱暴にするなよ。可哀相に。」
後ろで抱きすくめている男が仲間をなだめる。
「そのうち嫌でも口を開けるようになるさ…。慌てるなって…。」
背後からアキラの頭髪の香りを吸い込み、耳に息を吹き掛け、しゃぶりつく。
「あっ」
小さく叫んでアキラは首を振った。男は片手で抱きすくめたまま片手でアキラの顎を
押さえ、耳の中まで舌を這わせて来た。ザ−ッと音を立てるようにアキラの全身が泡立った。
「やめ…」
やめろと叫ぼうとしたアキラの口が塞がれ、もう一つの舌の侵入を許してしまった。
(10)
口内を生き物のように這う相手の舌を押し戻して歯を閉じようとするが、
耳の中を同じ熱く蠢くモノで刺激されては意識が分断され、うまくいかない。
ぴちゃぴちゃと耳の中でやたらに大きく響く音と、自分の舌を吸われる音に
アキラは自分の思考まで汚されていくような気がした。
「や…め…ろ…」
舌を吸う男が交代する一瞬だけやっとの思いで口にした言葉は無視される。
誰のものか分らない手が、薄手のニットのセーターの中を弄っている。
がくんと膝の力が抜けて折れた。だがそれに合わせて前後の男達も姿勢を低め、
施される行為から逃れる事は出来なかった。
それでもまだアキラはその時点ではいくらか冷静だった。5人が5人全てが理性をなくしている
訳じゃない。碁盤のそばにいる2人はあきらかに目の前の光景に気後れしている。
「こんな事をして許されるんだろうか」という良心の呵責と戦っている。
激しく抵抗すると、こちらの3人の獣性をますます煽り立ててしまうかもしれない。
彼等だって自分より年上の、普段は立派な棋士達なのだ。一瞬の気の迷いで行動して
しまったが、どこかで踏み止まるはずだ。アキラの体から少し力が抜けた。
「…おや?」
長髪の男がアキラの耳から口を離した。男のだ液で髪がアキラの頬から顎にかけて
張り付いていた。前の男はまだ夢中でアキラの舌と唇を貪っていた。その男の額を押しやって
アキラから引き剥がすと、長髪の男はアキラの顔を自分の方に向けさせた。
「…ちょっとだけ休憩するか。」
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