断点-3 9


(9)
上から下へゆっくりと降りていった視線がまた上に戻り、ヒカルの目を捕らえる。
言葉もなく真っ直ぐ見る目に耐え切れずに奥歯を噛んでぎゅっと目を瞑った。
普段以上に肌の表面が敏感になっているような気がする。
空調の風が肌にあたるのがイヤな感じだ。
早く。
早く何とかして欲しい。
せめて何かひとこと言って欲しい。
塔矢。

空気が乱れたような気がして目を開けると、アキラが椅子から立ち上がり、けれどヒカルを見ては
いない事に、ヒカルは呆然とした。
「…塔矢……!」
その声が届いてもいないように、アキラはヒカルを見ないまま、その横をすり抜けようとする。
「待てよ、なんだよ、どこ行くつもりだよ。」
思わず引きとめようと伸ばした手を無言ではらわれて、ヒカルの目は大きく見開かれる。
「どういうつもりなんだよ、おまえ!」
やっと振り返ったアキラはヒカルをちらりと一瞥して言い捨てた。
「――やる気が失せた。」
「…なんだよ!?それ!!」
「いくら据え膳でもそんなんじゃ食欲がわきやしない。出直してきな。」
「な…ふざけんなよ!」
「何が?」
「何って、ここまでさせておいて、それはないだろう…!」
「キミが勝手にした事だろう。
残念ながらその気になれそうにないから失礼させてもらうよ。」
「ふざけんなよ、塔矢、いい加減にしろよ!!」
「触るなッ!」



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