俺、相田ケンスケ14歳。普通の中学生だ。
まぁ、ちょっと普通じゃないといえば普通じゃないかもな。
趣味は戦争ごっことカメラ。盗み撮りなんかが専門だ。
おっと、誤解しないでくれよ? 盗み撮りといっても俺がそれを
楽しむわけじゃあない。需要があるから供給しているまでだ。
今まで生きていて、特に何もなかったな。女の子にモテた事もないし・・・。
エヴァに乗りたくても俺は選ばれなかったし。だから…。
―だから、それはまさに夢のような出来事だった―
ある日、俺の前に現れた人物、その人に出会ってから俺の人生は一変した。
その人は、ベリーショートに切りそろえた髪がきりっとした顔を
ますます際立たせ、スタイルも抜群の美人だった。
「君が相田ケンスケか?」
彼女の第一声はそれだった。
俺がはいと答えると有無を言わさず車に連れこまれた。
一体なんなのかさっぱり自体が飲みこめないまま連れてこられた場所こそが
俺の憧れとも言うべき場所だった。
「す…すげぇ…感動もんだよ!!」
俺は無心でカメラのシャッターを切りまくった。
「相田ケンスケ! お前をここに連れてきたのは写真を撮らせるためじゃない」
突然大声で怒鳴られ俺は大事なカメラを落としそうになった。
「あ、あの…俺は、なぜここに連れてこられたんですか・・・?」
「話は後でする。ついて来い」
「あ、は、はい」
俺は彼女について歩き出した。
案内された場所は仮設事務所のような建物だった。
「もうわかっていると思うが、ここは日本政府の基地だ」
「はっ、はい!」
「堅苦しい話は抜きで単刀直入に言おう。君にロボットに乗って欲しい」
「ロ、ロボットに!?」
まさに夢のような話だった。
「そうだ。君は以前作られた無人のロボット、ジェットアローンを知っているか?」
「あ、はい。パ…いや、父のデータを見たので・・・」
「ならば話は早い。前のJAは失敗だった。そこで今度は人間搭載型のロボットを開発した」
彼女の凛とした瞳も今の俺は感涙で曇ってよく見えなかった。
「そ、それに俺が乗るんですね!?」
「そうだ。それで君にはエヴァのデータを取って欲しいんだ」
「データ・・・ですか?」
「そう。こと使徒に関しては今までエヴァにだけ頼っていた。それは政府の名折れだからな」
「調査によると君は以前エヴァの中に入った事があるね?」
「はい。一度だけ」
「まずはその時見た事を教えてもらおう」
俺は覚えている事、パパのデータから読み取ったもの、全て彼女に話した。
エヴァの中は水で満たされている事、パイロットの意志で動く事、
彼女は俺の言葉を熱心に聞いていた。
「よし…とりあえずそれだけ分かれば今は良い」
彼女は"極秘"と書かれたファイルをパタンと閉じ立ち上がった。
「相田ケンスケ、ついてきなさい」
そういって彼女に案内された場所はロボットの格納庫だった。
「こ、これが政府の開発した人間搭載型ロボット・・・」
真っ白なボディに赤のライン、シェイプされた人間のような形。
見た目だけならエヴァに勝るとも劣らないモノだった。
「今、第三新東京市に使徒が近づいている。当然エヴァが出動するはずだ」
「はぁ…」
「そこで、君にこれに乗ってエヴァに近づいて欲しい」
「えぇ!? なんの訓練もなしに!?」
「君なら大丈夫だろう。戦争ごっこには慣れているようだしな」
「だ、だけど…」
「何も戦闘をして来いといっているわけではない。エヴァに近づいてデータを取るだけだ」
彼女はむちゃくちゃな事をいっている・・・。
だけどとりあえずこれは願ってもないチャンスだ! 俺はそれを快諾した。
「相田ケンスケ、聞こえるか?」
「はい、聞こえます」
見た目だけならエヴァに勝るとも劣らない政府開発の人間搭載型ロボット。
まさに勝るとも劣らないのは外見だけだった。
「これでエヴァに勝つつもりなのかよ・・・トホホ」
普通ならば使う事のない"トホホ"というセリフをこのロボットは使わせてくれた。
「何か言ったか?」
「あ、いえ! 何も言っていません!」
「使徒が出てきてエヴァも出動された。時間がない」
「それでは簡単に機能の説明をする」
―機能ったって・・・ボタンと飛行機の操縦桿のようなハンドルがあるだけじゃないか・・・―
「まず、前に進む時は目の前にあるFボタンを押す。するとロボットが動き出す」
「右に行きたければハンドルを右に切る、左ならばハンドルを左だ」
「加速をつけたい時はハンドルを手前に引け。手前に引いた分の加速がつく」
「後ろに進みたい時はRボタンを押すんだ。止まりたい時は足もとのペダルを踏め」
「それから左右と足下についているレバー。それが手足を動かすレバーだ」
「右のレバーを動かせば右手、左足のレバーを動かせば左足が動くからな」
「説明は以上だ。では行け」
―い、行けったってこれだけの装置で・・・―
まるで車を運転するかのように操作するロボットに別の意味で涙が出てきた。
「あ、あの、攻撃の巻き添えを食らったら・・・」
「大丈夫だ。ある程度の衝撃には耐えられるようになっている」
―あ、ある程度!? エヴァや使徒の攻撃による衝撃はそんな生易しいものじゃ・・・―
「さぁ、説明は終わった。行くんだ!」
「は、はい(涙)」
仕方なく俺はロボットを出動させた。
「と、とりあえずエヴァに近づけば良いんだよな・・・」
幸いエヴァ3機は使徒との闘いに夢中でこちらには気がついていないようだ。
それにしても…。歩くたびに振動がかなりの衝撃で伝わってくる。
「こんなんでエヴァに勝てるわけないよ・・・トホホ」
俺はとにかくエヴァに近づきビルの影からこっそりとその戦いを見ていた。
「あぁ! カメラもって来ればよかったぁ! こんな間近で、しかも同じ目線で戦闘が見られるなんて!」
ロボットの性能に関しては不満だらけだったが唯一この事によって俺は救われた気がした。
結局この闘いは惣流の一撃で決着がついた。
「はぁ〜やっぱり本物はすごいなぁ…(感涙)さて、データも採れただろうし、戻るか」
俺は格納庫に引き返そうとした。
「待て! 今のデータだけでは不充分だ」
「え…? ま、まさか…」
「エヴァに攻撃をしかけろ!」
「そ、そんな! 無茶ですよ!! エヴァになんて勝ってこないじゃないですか!」
「大丈夫だ。いざというときは脱出装置が働く」
「は、働くって言われても・・・そんな…」
「つべこべ言わずに行け!」
「で、でもエヴァは三体いますが・・・」
「そうだな…あの紅いのに攻撃をしかけろ」
―あ、紅いのといえば惣流のエヴァじゃないか!! ―
「だ、だめです! せめて他のにしてください!!」
―惣流じゃあ確実にやられる! せめて綾波かシンジにしてくれぇ!! ―
「あの紅いのがプロダクションモデルなんだ。試作機やテスト機よりも確実なデータが取れる」
「で、でも…」
「良いから行け!」
―俺は死を覚悟した―
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まともな装備を何も持たないであろう政府認定人間搭載型ロボットで弐号機に攻撃をしかける。
攻撃を仕掛けるというよりも…ただ突っ込んで行っただけだが・・・。
「何よ! こいつ!!」
惣流の、弐号機のけりが俺の乗るロボットに直撃した。
直撃したというより俺は弐号機の足がこちらめがけて突っ込んでくる時点で気を失っていたのだが・・・。
その後俺は"脱出装置"が働いた為か山の頂で救出された。
もちろん、俺の体はぼろぼろ、全治6ヶ月と診断された。
―なんの為の脱出装置なんだよ。全然大丈夫じゃないじゃないか(涙)―
俺、相田ケンスケ14歳。普通の中学生だ。
今まで生きていて、特に何もなかったな。女の子にモテた事もないし・・・。
エヴァに乗りたくても俺は選ばれなかったし。だから…。
―だから、それはまさに悪夢のような出来事だったんだよ…―
「ケンスケ、どうしてこんな怪我したんだよ、びっくりしたよ」
何も知らないシンジ達が俺の見舞いに病室にやってきた。
「どーせ女の子の写真でも撮るのに夢中で車にでもはねられたんじゃないのォ?」
―惣流、お前のせいだよ…―
「せやなぁ。あ、それとも戦争ごっこに夢中で大怪我負ったんかいな?」
「みんな、もう俺のことはほっといてくれよ・・・燃え尽きたんだよ・・・真っ白にな・・・」
その後、彼がベリーショートの彼女に会うことは二度となかったという・・・。
―神様、俺ってずっとこんな役回りなんですか〜〜? (涙)―