涼 子 【11】
澤田の目の前で自慰をすれば、処女を奪われなくて済む。
そう頭では理解していても、涼子は凍りついたまま動けずにいた。
「とっととやれよ。俺が退屈してるぞ」
頬杖をついて、トントンと机を叩きながら、澤田は冷酷な声で言う。
涼子は、固く握った両手を絨毯について、うなだれたまま動かない。
「あいにく俺は、気が短い。十数えるうちに始めないと、こいつを突っ込むことにする」
硬化した一物をしごきあげながら、非情に宣告する。
「一、二、三……」
涼子の返事を待たず、澤田はゆっくりとカウントしていく。
「……八、九」
「ほんとうに、それで許してもらえますか」
ギリギリのところで、床を見つめたまま、涼子は震える唇を開いた。
「そうだな。オマンコに突っ込むのは、勘弁してやるよ」
血が滲むほどに唇を噛み締め、意を決して涼子はのろのろと膝を立てる。
さきほどと同じように、じわじわとかかとを左右に滑らせていく。
澤田に下着をはぎとられてしまっているので、脚を開くともろに秘部があらわになり、
スースーとあたる外気にさらされてひどく心細くなる。
「……ああ」
肩幅あたりまで脚を開いたところで、耐えきれずにまた涙が湧き出てくる。
「早くしろよ。俺にやり方を教えられなくとも、慣れたもんだろう」
そう言うと澤田は、テーブルに置いてあった藤崎のタバコを手に取り、1本くわえて火
をつけた。
うまそうにフーッと煙を吐き、薄笑いを浮かべて涼子を見る。
「んくっ……えっく……うう……」
しゃくりあげながら、血の気の失せた小さな手を股間に伸ばす。
指を這わせたとたんにくちゅっと蜜液がはじける音がたち、涼子のみじめな気分に拍車
をかける。
「……猿か、おまえは」
軽蔑しきったような目で、プカプカとタバコをふかしながら澤田は言う。
若い頃とは違い、単純に女に突っ込んで出すものを出すだけでは、もう満足できなくな
っている。
とことん惨めな思いをさせて、根こそぎプライドをもぎとってやって、セックスするの
はその後でいい。
「えっく……え?」
「オナニーおぼえたての猿じゃあるまいし、勝手にいじってんじゃねぇよ。挨拶はどうし
た。どうか、涼子のオナニー姿をご覧ください、だろ」
いっそ、欲望のままに襲われていたほうが楽だったかもしれないと、涼子は思う。
なぜ、目の前にあるのは確かに夫のマイルドセブンなのに、吸っているのは白目が黄色
がかった、冴えない男なのだろう。
「うう……ど、どうか、涼子の、お……オナニーするところを、見てくださいっ……あう
う……」
大粒の涙が頬を伝い、鼻水まで出かかって、かわいらしかった顔はもうぐちゃぐちゃに
なってしまっている。
それでも涼子は1分でも早くこの屈辱から逃れようと、憑かれたように指を動かす。
「おまえも、顔やら股やらぐちゃぐちゃにして、大変だな」
まるで人ごとのように言い、澤田はすっかり冷めてしまったコーヒーをうまそうにすす
る。
涼子の指の動きが、徐々に激しくなっていく。
「ああ……うくっ、ん、んん……」
泣いているのか喘いでいるのかよくわからない声が、部屋に響く。
涼子は余計な感情を殺して、内から湧き出てくる甘美な感覚を掴み取ることに集中して
いる。
澤田にイカされたばかりの身体だ。昇っていくのもいつになく早い。
「イクときは、ちゃんと言えよ。勝手にイッたら、もう1回だ」
「あぐ……うう、んん……」
内腿の筋肉が細かく痙攣しはじめ、つま先がもどかしげに床を蹴る。
「くっ……もう……イ、イキますっ……あああっ」
憎むべき男を目の前に、涼子は自らの指で屈辱の頂点に達した。