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小川の操るブルーメタリックのインプレッサが、陽光を反射させながら前を走る2台の大型トレーラーを追っていた。
トレーラーの前に運河にかかる大きな橋が見えてきた。 その向こうには、大きな観覧車やジェットコースターも見える。
あの橋を越えれば、その先は“ドコカノランド”だ・・・。
『だめなのか・・・』
ハンドルを握る小川が唇をかむ。
その時、
「先輩! 信号弾です!!」
助手席の西村が叫び、小川も視線を上に向けた。
雲一つない青空に、信号弾が赤い光を輝かせている。
「!!」
小川はインプレッサを急停車させた。
前を走るトレーラーとの差は、見る見るうちに開いていく。
『さあ・・・頼みますよ・・・』
小川はじっと前を見据えながら、この後に起きる事態を・・・・待っていた。
「艦橋よりCIC! 信号弾が上がりました!!」
「よし!」
小沢が精悍な表情を、艦長に向けた。
艦長が力強くうなずいた。
「対地ミサイル、発射用意!!」
艦長の力強い声が、CICに響く。
「対地ミサイル1番から4番まで、データチェック完了」
管制員の声が響く。
「発射!!」
艦長が力強く命ずると、管制員がボタンを押した。
艦橋の前に設置をされたVLS(ミサイルの垂直発射ランチャー)から、4本のミサイルが炎を噴き出しながら青空に舞い上がってゆく。
発射の瞬間、『まや』の大きな船体が、わずかに身震いした。
「ミサイル1番から4番、ターゲットに向かって飛行中!」
管制員が報告する。
艦長も、小沢も、唇を真一文字に結んで結末を待っていた。
2台のトレーラーが運河にかかる大きな橋を渡っていた。
トレーラーのマフラーからは、ディーゼルエンジンの黒煙が後ろにたなびいている。
その時、海から飛んできた一発のミサイルが、前を走るトレーラーのコンテナに命中した。
爆発が起きると同時にコンテナはバラバラに砕け散り、先頭車両は横倒しになり路面と接触をして火花を散らす。
その瞬間、2発目のミサイルが橋の本体に命中をした。
装填された炸薬が爆発をすると同時に、橋げたが運河に落下して大きな水しぶきが上がる・・・橋は二分されてしまった。
先頭を走っていたトレーラーは、横倒しになったまま橋げたと一緒に運河に落下した。
後ろを走っていたトレーラーが、急ブレーキをかける。
その瞬間、2発のミサイルが命中した。
一発はトレーラーの走る橋桁に、そして残りの一発は橋脚に命中した。
橋脚が真っ二つに折れて橋が傾く。
そして橋げたが爆発と共に粉々に砕かれ、道路が崩壊していく。
立派な橋は、残ったトレーラーと一緒に、大音響とともに運河に落下して大きな水柱を上げていた。
「よし・・・」
橋から上がる黒煙を見ながら、小川は微笑みを浮かべていた。
海風がフレアースカートをユラユラと揺らしている。
助手席側に立って橋を見つめているいる西村を見ると、彼女は黙って頷いた。
「帰るわよ」
微笑みながら声をかけると、小川は運転席に座った。
「全弾命中!ターゲットの破壊を確認!」
管制員が弾んだ声で小沢に向かって報告をした。
「そうか・・・」
小沢の鬼瓦のような顔に、会心の笑みが浮かぶ。
小沢は艦長に視線を移した。
艦長も満足そうに頷いた。
「任務終了、これより『まや』は帰投する!」
「わかりました」
艦長は敬礼すると、必要な指示を出していく。
やがて『まや』は海上に白い孤を描き、“ドコカノランド”から離れて行った。