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「いくらなんでも・・・・やり過ぎだろう?」
海上からあがる3つの黒煙を見ながら、あなたは呟いた。
「いくら10周年だって言ってもなあ・・・・限度があるだろう・・・」
あなたは肩を竦めながら歩き始めた。
携帯電話から着信音が聞こえてきた。
メールだ。
From:変身中 To:【あなた】 Sub:ミッションA結果 【あなた】の活躍により、監視部隊は撃退された。 |
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「“撃退”ではなくて、“撃墜”だろう?」
あなたはメールを読みながら、苦笑をしてしまった。
とにかく、これで必要以上に捜索されることは無くなった。
残りは畑野と二人・・・。
あなたは腕に付けられたタイマーに視線を落とした。
『04:58』
「よし・・・!」
あなたは再び歩き始めた。
その頃
畑野淳は、ベンチの陰に隠れていた。
「ありがとう・・・」
安堵のため息をもらしながら、畑野は携帯電話をポケットに戻した。
タイマーを見て残り時間を確認する。
「これで・・・逃げ切れる」
畑野の顔に微笑みが浮かんだ、その時、
「?!」
何かを感じ、振り返った畑野の表情が凍りついた。
「しまった?!」
次の瞬間、赤い光が畑野の体を包んでいた。
あなたの携帯電話から着信音が流れてきた。
メールだ。
「またミッションじゃないだろうな・・・」
あなたは苦笑いをしながらメールをチェックした。
From:変身中 To:【あなた】 Sub:確保情報 畑野淳は、ウエディングドレス姿の花嫁になった。 残りは【あなた】1名 |
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「クソッ!」
あなたは吐き捨てるように言うと同時に、携帯電話を乱暴にポケットに戻した。
とうとう残りは、あなた一人になってしまった。
あなたは辺りを見回した。
無人のメリーゴーランドや観覧車が回り、やはり人の乗っていないジェットコースターが轟音を立てながら走っている。
どう考えても、おかしな風景。
しかし、あなたは逃げ回っているうちに、それをおかしいと思わなくなってしまった。
そう、あなたの気持は、“鬼”との対決に向けられていたのだ。
あなたはタイマーに視線を落とした。
『00:58』
これで逃げ切った・・・という感慨は、この時のあなたにはなかった。
いや・・・むしろ、
『奴は必ず、僕を追いかけてくる!!』
そういう思いが、あなたを熱くさせていた。
あなたは堂々と道の真ん中に立ち、あたりを見回していた。
『来るなら来てみろ・・・』
そう思いながら・・・。
タイマーの残り時間は、どんどん減っていく。
『00:57』
『00:56』
『00:55』
そして・・・。
「来た!!」
あなたは叫んだ。
ショートカットの艶やかな黒髪を揺らしながら、美女・・・“鬼”がまっしぐらにこちらに向かって走ってくる!
あなたは走りだした。
ショートカットの美女が、その後を追う。
その差は、見る見るうちに詰まっていく。
あなたは道を走り続けている。
あなたの左手に、芝生の広場が現れた。