その瞳に映るのは

 

(三)

 

 

「きちんと後始末をなさい」

 放出された液でぬらりと光る箇所を顎で指しながら、膝立ちにJrの顔へと近付ける。 必然、私の雄の獣欲を示すそこを突き付けられる格好となったJrの、アメシストの瞳からはチカリ、煌めきが放たれた。両腿を閉じ合わせての身じろぎ。切れ長な目尻の縁がうっすらと赤いのは、さんざん嬌態を演じておいて今さらの恥じらいか、それともあれだけ---忘我するほど---満足を憶えたばかりのくせに、もう......。

 Jrの髪に指を梳き入れる。くすぐったい様な滑らかな感触を愉しみながら導いてやると、そのまま下半身にとりついた。唇が柔らかにまとわりついて、脈打つ棹を、先端に向かってなぞってくる。
 明白な意図を持った動き。性交を誘う仕種。

 思わずぴくりと反応するが速いか、鬼頭は口腔粘膜に包み込まれた。ねっとりと密着する舌の、鈴口をくすぐる淫媚な蠕動に、我知らず、低いため息が漏れた。
 これも父親---ブロッケンマン---による仕込みの賜に違いない。 そう、この子は実父との淫行に耽ってきたのだ。 まだほんの子供のくせに。どんな顔で誘い、股を開き、つがい、 閨声をあげたのか。
 
 ---この色魔め---

そう考えた刹那、倒錯的な背徳感から込み上げる劣情に、いや増す淫欲を押さえ込もうと、銀糸の髪に梳き入れた己の指に力を込めずにいられなかった。髪を掴まれた苦痛に眉間を歪ませるJrの、だがその表情には確かに、恍惚と悦楽のない混ざった妖しい色が見え隠れしていた。 見ればJrの脚の間のものも、再び、露を含み起ち上がり始めているではないか。
 
 ---見てみたい、この目で---

 誘惑に抗う事など出来なかった。

 「No,」

 私の反応に気を良くしたか、更に喉の奥深くへ飲み込もうとするJrに対して、制止の言葉を発した。が、困惑げに動きを止めたのもつかの間、命令を無視し、再び舌を使いはじめる。

---躾のなっていないペットだ。おあずけ一つ満足に出来ない---

  そそうはその場で罰さなければ理解できまい。躾の基本と云うものだ。
  掴んでいた髪をぐいと後ろへ引き戻すと、ぽん、と音を立てて口を離した。粘性の高い唾液が糸を引いて光る。髪に廻した私の手をふりはらおうとふるふる首を振るのも構わず、耳元に手の甲を当ると、ぴしゃりと一つ頬を打ちすえた。

 「ひゃ、んっ」

 短い悲鳴。たいして痛くもなかろうが、躾の目的にはかなうだろう。

「ぁ、う、...ぶっちゃヤ、だ...」

 おしゃぶりを咎められた幼児がすねる様な口調。いや、飼い馴らされた動物のみせる媚態と云うべきか。この媚態が本能的なものか、それとも計算された上でのものなのかは、にわかに判別し難いが、 聞く者の嗜虐心を妖しく掻き立てる声音にうなじがざわついて、股間の膨張を痛いほどに促した。我ながら、浅ましいほどの獣欲。だがもう、これを押さえ込む術など在りはしない。

「お前が零した恥ずかしい汚れを清拭しなさい」

「ァ...はぅ、ロビ...」

 ---その後で---

 「...ん...Ja...」
  
 名残惜しく陽根に頬をかすめると頭を下げていった。寝台が軋む。
 膝頭の上からJrの 温かく濡れる舌が押し付けられた。密着感。脚の付け根までぐっと舐めあげた後には、いやらしい軟体動物めいた、粘液の軌跡を残して...。
 理性など、とうにかなぐり捨てていよう。自ら放出した体液を自らの口で浄めさせられる屈辱さえ、快楽を貪る為の手段にすぎないのだ。この子には。

 
 そうして、舌にまったり絡み付いた白濁は、少しのためらいもなく口中に納められて行った。こく...、と喉を鳴らしての嚥下。唇に残った残滓まで器用に舐め取ると、再び膝頭から舌で這い伝う。まるで、甘露でも味わうかのような恍惚とした表情の中に、目だけがひたと、天を仰ぎ脈動する私の猛りにすえられているのだった。

 


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