望-太陽- 1

憧れだった。
11の時にその剣を見て。
私にとって、鮮烈だった。
目を奪われて、憧れた。
そして、その人に命を救ってもらって。
私は二重でその人に惹かれた。
いつか、近くに立てたらいいのに。
ううん。
立てるように自分を磨こうと。
私は、自分の剣を見出して、近づきたいと日々の鍛錬をこなした。
近くに行くためには騎士にならなきゃいけない。
両親を、兄を説得して。
漸く許してもらえたのが15の春。
あの人が私のことを覚えていなくても仕方がないけど。
だけど、いつか覚えてもらえるような騎士になれたらいい…。
そう思って入団試験を受けて、訓練期間を耐えて。
そして、配属が決まるのを待っていた訓練所で驚くことが起こった。
第二騎士団第一大隊の隊長・ディアス殿から声をかけられたのだ。
私をあの人の小隊に配属すると。
そして、そこに…忘れない、あの人がいた。
変わらない。
銀の髪と夕闇のような灰紫(アッシュモーヴ)の瞳。
繊細な容姿なのに、この人の剣は鋭くて激しい攻撃の剣。
二振りの剣の鮮やかな軌跡は今でも覚えてる。
ゆっくりと近づきながら、動悸を押さえつけるのに必死だった。
「エドウィン=ハートランドと申します。ディアス大隊長より、 ハルスフォード小隊長の隊に配属になると伺いました。よろしくお願いいたします」
声、震えてないだろうか。おかしくないだろうか?言っていること。
凄く緊張して私は敬礼をした。
「ああ。よろしく頼む。第二騎士団第一大隊第四小隊隊長、ヒューイ=ハルスフォードだ」
声。あの時と同じだ。
低くて、安心させてくれるトーンだ。
私は自然に、顔が緩んで…たと思う。

それから、雑務の手伝いをさせてもらえることになった。
私は家でも雑務…主に物資手配や実経費の決済が多かったけれど…をしていたから 書類整理などは、極普通のことで苦にはならない方でよかった。
ハルスフォード小隊長は、私のことは覚えていないようだったけど、それでもよかった。
覚えてる方がちょっと恥ずかしいか。
あの時は、女の子にも見えるような格好だったからな…。
帰りにご飯をよく奢ってもらう。
ちゃんと自分の分くらいは払いたいのだけど、許してくれない。
確かに1年目の私と、小隊長では給与も違うから甘えてもいいのかもしれないけど…
でもやっぱり、奢られっぱなしは申し訳ない気がする。
仕事で返すしか…ない、よなあ。雑務頑張ろう…。
そうやって過ごしてて、凄く平穏で楽しくて。
だから、両親や兄さんたちに言われてたことをすっかり忘れてて…。
余り感情を表に出し過ぎないようにって言われていたのに
毎日が楽しくて。
多分、家にいたときのように毎日私は笑っていたのだと思う。
それが悪いのか判らないけれど…
何故だか、第一騎士団の人から呼びつけられた。
いい気になってるな、ということみたいだ。
私が、『銀の狼』と異名を取る隊長の側にいすぎたのが気に入らない、みたいだ。
足をかけられたり、訓練用の剣の刃が潰されてたりなんて…茶飯事で。
貴族の御子息の姑息な部分を垣間見る感が一杯だった。
訓練で負けることぐらい、耐えられる。
潰された刃で戦うことを覚えればいい。
その時には勝てなくても、次には負けない。
実戦なら、尚更負けてなんかやらない。
誰に言われても、何と言われても。
あの人が許してくれるなら、私は近くにいたい。
そう思うのが、何故悪い?
近くにいたいなら、努力すればいい。あの人に認められるように。
今の私が、認められるだけの腕があるとはまだ、思えないけど。
でも、努力していることは、わかってくれる人だから…。
そうして、あの人の側にいて
あの人に見えないところで、戦いながら
それでも楽しかったのだけれど
思いもよらない反撃に合った。
それが、私と小隊長…ヒューとの間を変えた。
自分の中に、そんな感情があったなんて自分でも気づいていなかった。

2010/11/23

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