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そして朝が来る

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明けて翌日。
ごく普通の朝の風景だった。
生徒総代はやや元気がないものの、いつも通りにこやかだった。
白虎寮長は、友人達と元気にご飯を食べていた。やや、カラ元気。
青竜寮名物の4人も相変わらず一緒に朝食らしいが、いつも元気な書記さんは やや元気がない。病み上がりのせいかな。と思われるが・・。
少し前と変わらない情景となっていた。

「智隼と、どういう関係なんですか?総代」
放課後。まだ他の役員達が来ていない生徒会室。
副会長の安東はストレートに切り出していた。
「智隼は・・・後輩だけど?」
何を聞きたいんだろう?と、聡明な後輩を不思議そうに泪は見返す。
「白取は、そう思ってないようですよ。貴方が熱を出した智隼を、連れ帰った 夜以来」
「と、言われても・・・それ以外どういう・・・」
困った顔で泪が答えるが、安東は一向、気にかける気配も無い。
いつも通りの冷静沈着な顔のまま。
「総代。俺は執行部内をばらばらにする気はないんです。貴方は、無理をして 笑ってるし、智隼もここ1週間まともに寝てない。白取も空元気で明るいですが、 部内の空気がおかしいのは、判っていらっしゃいますよね?」
正論を言われては、立つ瀬がない。
「言わなくては、駄目かな?」
「少なくとも、当事者には言わなければならないでしょう」
きっぱりと安東は答える。
「ただ、白取が貴方も、智隼も避けていますし、言っても信じないでしょう。 多少、不信気味になっていますから」
聞いて、泪は大きく溜め息をつく。



「・・・義弟なんだよ」
「は・・・?」
「意外かな?腹違いなんだけどね。兄弟なんだよ。私と智隼は」
「・・・それで、あの日一緒に出かけたんですね?」
あの日・・・智隼の母親から電話の来た日、である。
「そう。智隼の母上が私と同じ学校では本家に迷惑がかかるのでは、とね。 私の家のことは、判っているだろう?君なら」
泪は苦笑しつつ、凰山一の情報網をもつ次期総代に問いかける。
「ええ、ある程度は。先輩に何人か御本家の外に御兄弟がいることも知って いますが。興味ありませんでしたから、調べはしませんでした」
惜しげもなく、安東も答える。
「それは、ありがたいね。うちはともかく、外の方々に迷惑はかけたくないです からね」
にっこりと、やや牽制ぎみに言う。
「信用、ありませんかね?俺は。情報を持っているのは俺で、 実家じゃないですから、ご心配なく」
先輩と後輩の会話では無くなっている気配がある。
「智隼とは親友な君のことだから、信用しているよ」
「そういうことにしておきましょうか」
一層、『食えない子だな』と泪は苦笑をする。
安東は至って無表情で対応している。心境は、判らない。
そんな不毛な雰囲気の中、廊下がいきなり騒がしくなる。
そのうるさい声が近づいてきてばたんと勢いよく扉が開く。



「せんぱいっ!!」
肩で息をして、意気込んで智隼が入ってくる。
安東が側にいるのに気が付くと、はっとする。
「先輩、話したの?安東に・・・」
「俺がそんなこと、気にすると思うのか?」
先を制して安東が智隼に答える。
「僕は、平気だから。話しちゃっていいよね?先輩。もう嫌だよ、耐えらんない!」
その答えを聞いてか、智隼が泪に許可を求める。
「話せって言ってるだろ!西藤っ!」
智隼の横には引きずられてきたと思しき由也。
必死の形相で逃げようとしている。
火事場の馬鹿力。本来智隼の方が非力な筈である。
「かまわないよ。由也が何かを誤解しているようだし・・」
にっこりと智隼に笑いかける。

「白取。先輩と智隼は腹違いの兄弟だそうだ」
「腹違いだから何!?・・・・え?兄弟?」
取りあえず逃げようともがいていたのを止める。
「僕が、私生児って訳。母さんは、2号じゃなく3号か4号か・・ わかんないけどさ・・・」
俯いて智隼が続ける。
「まず、中に入って座りなさい?2人とも」
椅子から立ちあがって泪が言う。
「2人じゃないんだ(^-^;)先輩」
心配していた37期生たちが後ろに控えていた。

「智隼が気にしていたし、余り胸を張って言えることではないしね。 智隼と兄弟なのは、嬉しいことだけれど」
泪が話すと頷いてから智隼が誤解した一因を言う。
「白取、僕が先輩をルーイって呼んだの、聞いたから誤解したでしょう?」
「そうだったのかい?由也」
「え、だって、名前呼ぶほど親しいとは・・・・」
後が続かない由也である。
「ごめん。兄弟だって、あまり言えることじゃないから・・・」
泪の両親の実家はそれぞれそれなりに『由緒ある家柄』と『大企業』である。
ゴシップのタネとなることは、なるべく控えたいと思う智隼である。

「智隼が母子家庭とは知ってたけどな」
意外そうに竜崎が言う。
「まあ、それは置いておこう竜崎。で?誤解は解けたな?白取」
「だから、白取。正直に自分の気持ち言ってよね」
「え・・・?え!?」
いきなり自分に話題が振られて、由也はおろおろする。

「俺達は退散しますから。総代」
にっこりと笑いかけた安東に率いられ、面々は退散を始めるのだった。
「ちょ、ちょっと!安東!?」
「智隼が言いたくないことを公表したのは、何の為だ?」
と、安東。
「そーりゃ、白取の早とちりのせいだよなぁ?」
にやりとわらって軽口を叩くのは竜崎。
「責任は、しっかり取っておいで?白取」
にっこりと笑って一原が白取に引導を渡す。
「明日は大宴会かな♪」
「良くも悪くも、大反響だね」
「まあ、それは野となれ山となれってことでさ」
執行部37期生の連携いつもの通り。
部屋には問題の2人だけが残されることになる。
「先輩。僕母さんに転校はしないって返事しましたから」
部屋を出掛けにそう言って、生徒会室の扉が閉められる。
その後は、2人だけの話。



その後、毎朝白虎寮では。
金髪の方が幸せそうに、一つ年下の少々低血圧な恋人を 起こす姿が見られるようになった。
綺麗な総代に口説かれてしまった寮長さんは、後々まで 『智隼を意地でも黙れせておけば良かったな』と皆様に苛められるほど幸せに おなりだったのである。
周囲に巻き起こった混乱と落胆は、まあこの際放っておこう(笑)
こうして、物語(か?)は大団円で終わるのである。



泪=フィネス。凰山学園2年A組。第36代生徒会総代
白取由也。凰山学園1年D組。白虎寮寮長

他、37後期生徒会執行部員オールキャスト

そして「日常風景」へと続いていくのでした。


やっと END
ちょっとおまけ

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