777HIT記念小説

大花火



俺はここまで五千円を投資している。
この台は当たりを引くと、どうやら上部のデカいリールに「大当たり」の文字が出るようだ。
俺の台は上のリールが回っても、キャラクターやら花火の玉やらが出るばかりで一向に「大当たり」が出ない。
しかし俺はこの台で大当たりを出してみせる!
そして嫌なことは全部ふっ飛ばしてやる!
半ば自棄だった。
六千円目の千円札を投入しメダルを入れる。
ピコーン
またかよ。
一個 トン 二個 トン 三個 トン
ヴィーン ピタ  ピカ!ピカ!ピカ!ピカピカ!

うっ。なんだ?光ったぞ。
うーむ。もう一回。
ピコーン グルグルグルグル
なんだ!?上のリールがグルグル回り出して止まんないじゃないかぁ〜〜。
おろおろおろ。どーしたらいいんだっ。
普通にSTOPボタン押しちゃっていいのかな?

「にーちゃん、入ってるぜ」

隣の台に座っている人に声をかけられた。
えっ?入ってるって?えっ?当たってるってこと?
言われた意味が掴めなくて、思わず隣の人を凝視してしまう。
なんか・・・アヤシイ雰囲気のガテン系オヤジ。

「BIGだよ。BIG」

そのオヤジはいきなり手を伸ばしてきて俺の台のリールを止めだした。
トン  トン  トン

「えっっ!?ええっっ!!」

そこには燦然と輝く青いが三つ揃っていた。
ヴィーン ヴィン ヴィン ヴィン ピカーン! 
大当たりだ。上のリールに大当たりの文字が止まっている。
そして軽快に派手な音楽が流れ出した。

「にぃちゃんこの台打つの初めてか?」

「えっ?ええ、初めてなんです」

この台も何もスロット自体初めてだってーの。

「この台はな、BIG中この上の4thリールに赤ドンちゃんが出たら左リールに3連ドンちゃんを狙うんだ。後は適当押しで15枚役が揃う。やってみな」

「はっ、はい」

俺は隣のオヤジに言われた通り3連ドンちゃんとやらを狙ってSTOPボタンを押すことにした。
狙って狙って〜〜 ていっ!
トン  ズルッ
うっ・・・止まらない。
もう一回!リールをよく見るんだ!ていっ!
トン  ズルッ
むーーーー。

「にぃちゃん目押し出来ないのか?」

うっ。出来ないよ、出来ないさ、今日初めてスロットやるんだ。
出来なくて当然じゃないか。

「俺、スロットやんの初めてなんです」

隣のオヤジは俺の言葉を聞くとニカッっと笑って、俺に目押しやリプレイはずしのやり方なんぞを親切に教えてくれた。

「いいか、この左リールに黄色っぽい塊が通るだろ?見えるか?」

「は、はい」

「これが3連ドンちゃんだ。これが2コマ目くらいまで来たらSTOPボタンを押すんだ。やってみな」

「はいっ」

よお〜く見て〜〜〜〜 2コマ目!ていっ!
トン  止まった!!

「おう、初めてにしちゃ上手いじゃねーか」

「はい!出来ました!」

なんとなく誉められて気分がいい。
よし!あとは適当押しだな。
トン トン
うしっ!15枚役GET〜〜〜
ヴィーン
うっ・・・青いドンちゃんだ。

「青ドンちゃんが出たら普通に押してみな」

OK普通にね〜〜
トン トン トン

「リプレイが揃ったろ?JACゲームだ。」

とりあえずオヤジの指示にしたがってゲームを消化していく。

「おっと、3回目の青ドンちゃんは揃えないでリプレイはずしするんだ。いいか?見てな」

トン トン
オヤジは通常の反対の右リールから止めだした。

「真ん中にリプレイが揃ってんだろ?ここで左リールにBARをビタ押しか3連ドンちゃんを狙うんだ」

言うとオヤジは左リールにBARをビタ押しした。
凄ぇ・・・・。

「にぃちゃんは初心者だから3連ドンちゃんのほうが狙いやすいかもな。残り8ゲームまではリプレイはずししたほうが得なんだぜ」

BIGゲームが終わって、カウンターに獲得枚数が表示される。
618枚。
六千円使ったから今換金すれば丁度倍だ。
俺はオヤジに缶コーヒーを買ってきてお礼に手渡した。
最初はアヤシイオヤジだと思ったけど世話好きな良い人なのかもしれない。

「あの〜 色々教えて貰ってありがとうございます」

「おう、悪りぃなにぃちゃん気を使わせちまって。ありがとよ」

缶コーヒーを受け取るとオヤジはまたニカッっと笑った。
うう、このオヤジ良く見ると結構男前じゃないか。
ぼさぼさの髪や薄っすら生えた不精ひげのせいで気がつかなかったが、彫りの深い顔立ちは整っていて、ハンサムって言葉がぴったりくるような顔をしている。
多分体を動かす仕事をしているんだろう、腹も出てないし腕も太くて筋肉質だ。
ワイルドな渋い中年だな。
オヤジなんて呼び方は失礼かもしれない。
でも名前知らないしな。
「なんてお名前ですか?」なんてパチンコ屋で聞くのも変だし。
俺はくだらないことを考えながら再びスロット台に向き直った。
どーせ暇なんだ、今日は閉店まで打ってやる。
今日とゆう日が終わる頃には、俺はりっぱなスロッターになっていることだろう。

それからもBIGが入るたび、隣のオヤジは目押しで当たり絵柄を揃えてくれたり、リプレイはずしをしてくれたりした。
俺は80%くらいの確立で3連ドンちゃんを目押しすることが出来るようになり、オヤジと世間話をしながら楽しい一時を過ごしたのだった。
俺は閉店までずっとその「大花火」を打ち続けた。
俺の座った台は調子の良い台だったらしく、あまりハマることなく閉店まで出続けた。
そして・・・・・







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