めざめ
窓のない、密閉された・・・・・・教室のような場所。
机がきちんと並べられ、気付けば皆きちんと席に座って,いや、座らされている。
眠っている律も。それを起こそうとしている達哉も。
閉じ込められている。
おそらく、クラスの全員が。
「おい、てめぇ、起きろ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「起きろって言ってんだろ、ボケが!!」
ドカッ
頭に響いた衝撃とともに、覚醒する意識。
重い瞼を半分開くと、その向こうには達哉がいた。
ああ、なんだ?前も、こんなことなかったか?ってことは、これは夢なのか?
まだ状況を把握できていない律は、ゆっくりと無表情で周りを見回した。
「?なんだ・・・・・もう、着いたのか。」
場違いともいえる律の第一声。
けれど ”いつも通り” だった。達哉に言わせてみれば。
それは、達哉を呆れさせ・・・少しの安心感を与えた。
心を落ち着けるかのように、達哉はため息をつく。
「はぁ・・・お前、どこ見てんなこと言ってんだよ・・・」
それからまた、面倒そうに口を開きかけた瞬間。
カッ カッ カッ
遠くから、近くへと。
規則正しいハイヒールの足音が部屋の外から響いてきた。
その音は、段々と近くなり、律たちがいる部屋の前でカツッと音を立てて止まった。
そして、ゆっくりとドアが開かれる。
カラッ
全員が、一瞬心を奪われた。
一言も喋らずに、目の前に立つ女性に視線を向けた。
瞳に映ったのは、どこか高貴なイメージを持ったひと。綺麗な、ひと。
女は何も言わず教室に入り、まっすぐ教壇に向かう。
エレガント、と形容するのがぴたりとはまる身のこなし。
部屋を一瞥し口を開く。
「今日は、一つ、お知らせがございます。」
女性の艶やかな声音が教室に響くと同時に、静かな時間は終わり、誰だ?と、騒ぐ声が教室を包んだ。
驚きや混乱で、みないつもよりハイになっているらしく、一人一人の声がやけに大きく響く。
一瞬の静寂が嘘のように、部屋全体が騒音で溢れかえった。
そんな中、部屋の前方に立った彼女は、微笑みながら教室を見回した。
ウェーブのかかった長い髪を首の後ろで一つに結び、恐いくらいに整った顔に妖艶な笑みをたたえて。
その美しいひとは、言った。
「あなた方は、プログラムの対象クラスに選ばれました。今年最初の、69番プログラムです。
わかりますか?つまり、みなさんには、殺し合いをしていただくことになるのです。」
とても、静かに。
けれど、とても強く。
「友達を、殺してください。あなたが、生きるために。」
例え、それが正しくても、そうでなくても。
意志をこめられた言葉は、鋭い凶器となって生徒全員を襲った。
それだけは、確かだった。
【残り38人】