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佐藤浩明をやり過ごした比呂達4人は、
その後何の問題もないままに目的地に到達する。


松本朋美の遺体。


まだ、それほど時間がたっていないにも関わらず、
その亡骸には何羽かのカラスがたかっていた。
比呂達の気配を察し、近くの木の枝へ移動した今も、
朋美の死体を貪ろうとその機会をうかがっている。


絵里と綾にはこの死体を見せるべきではないと判断し、
二人には近くの茂みに身を隠すように指示していた。
カラスのことまでは気が回っていなかった比呂は、胸を撫で下ろす。
恐らく、この姿をみれば、絵里は再び取り乱してしまうだろう。
すべての物事は冷静でいなければ巧くはいかない。
比呂がサバイバルゲームで得た、教訓だ。


朋美の死体はキレイに頭の部分だけが抜け落ちている。
襟元にはどす黒い血が凝固し、こびりついている。
すでに死斑が出始めた手と足は、朽ち果てた人形を思い起こさた。
とても、あの素敵な笑顔の少女のものとは思えなかった。


和彦は、少しだけほっとする。
まるで、それまで生きて、笑っていた者と同じ姿には見えなかった。
マネキン。
生命を感じさせるものがないことが、在りし日の朋美を思い出させる事の障害となった。


「首輪、無事かな?」


和彦は幾分低いテンションの声で尋ねる。


「知らね・・・。」


比呂は答えながら、亡骸に近づきその周辺へ目を凝らす。
ところどころに血の赤と、肉片らしき赤黒い物体が見えた。
死亡した直後に垂れ流された、糞尿のすえた匂いが鼻をつく。
顔をしかめぬように、それに気付かぬように、努めた。
死者への礼節。
死しても尚、比呂は朋美を女性と扱おうと決心していた。


首輪を見つけたのは和彦だった。
思ったよりも遠くへ弾かれたのだろう、
朋美の亡骸よりも2メートル離れた場所へ転がっていた。
和彦は無言でそれを拾い上げ、比呂へ示す。


比呂はそれに気付き、和彦から首輪を受け取る。


首輪を高くかざし、あらゆる角度から観察する。
指で金属を弾き、その音を確かめる。


ひとしきり首輪を眺め終えた後、比呂は無造作に首輪を投げ捨てた。
そして、すばやくベレッタを抜き、首輪へ照準をあわせ、引き金を引いた。


パンッ!という乾いた銃声と同時にギィン!という金属が弾かれる音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



一瞬の大音量で、咄嗟に顔を覆った和彦が恐る恐る、その顔を上げた。
比呂は両手を広げ、首を振った。


「移動しよう。」


言葉短く、そう伝えると絵里達が隠れている茂みへ歩を進めた。













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