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「どういう事だか説明しろよ?」
朋美の遺体より500メートルほど南へ戻り、
比較的、木が多く茂っている林の中へ身を隠した後、和彦はそう言った。
先ほどの比呂の行動についての説明を求めていた。
比呂は、首輪をひとしきり眺めた後、それを捨て、銃で撃った。
その結果、首輪は爆発し大きな音をあたりに盛大に響かせた。
「みての通り。首輪ははずせない。」
「?」
「俺は首輪の機能を停止させるためにはショートさせるしか方法はないと思った。
当然、その予防策も練ってはいるだろうが、
それ以外の方法は爆弾に関して全く無知な俺たちには不可能だ。」
「それは・・・そうだな。」
和彦は相槌代わりにそう言うと、続きを待った。
「当然、ショートさせるには何とかして隙間を作らなければならない。
首輪はざっとみただけでもわかるほど、精密なつくりをしている。
ロレックスなんかの高級時計なんかおもちゃに見えるほどな?
そんな首輪に隙間を作る方法なんて、俺は知らない。
出きる事と言えば、銃で弾くしかない。」
比呂は一度言葉を切り、内ポケットから煙草を取り出した。
すばやく火をつけると、白い煙をふうと吐き出した。
「結果は見てのとおりだ。首輪には大きな衝撃を感知して起爆する
ユニットも機能しているらしい。つまりは―――」
「つまりは―――?」
「俺の知識と、手持ちの道具じゃ外す事も、
それ以外の方法を模索する事さえも出来ない。
極めつけに、死んだ朋美の首輪は、まだ、その機能を停止してはいなかった。」
「・・・・。」
「あの坂本とかいうクソヤローが言ってたよな?金網を張り巡らせてるって。
恐らくそれと連動しているんだろう。
さらに、俺たちのように死んだ奴の首輪を解体しようとするのもそれで予防できる。」
「八方塞がり・・・か?」
「八方どころじゃねーな。蟻一匹通れねー。」
「よく出来てるんだな・・・?」
「一瞬でも外せるかも、って思った事が恥ずかしいよ。」
和彦も、黙って聞いていた絵里も、綾も、絶句した。
この”プログラム”から逃れる事は、出来ない。
それは紛れもない事実であった。
「じゃあ――」
和彦が話しを前に進めようとするのを、比呂は右手で制止させる。
「そのことで、お前と話がある。綾、和彦を借りるぞ?」
比呂の言葉にもう、綾は頬を染めたりはしなかった。
無言で頷くが、目の焦点はどこかへ行ってしまっている。
和彦を連れ、比呂は少しだけ二人から離れた場所へ移動する。
短くなった煙草を靴の裏でもみ消して、比呂は口を開く。
「なぁ、和彦。
きっとお前は俺と同じ事を考えてるんだろう?
俺は―――
俺は―――
このゲームに乗る。」