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和彦はさして、驚きはしなかった。
無言のまま、比呂の目を見据え、頷いた。
何度も自問自答した。
恐らく、比呂も同じ事を考えているとわかっていた。
これは話し合いなどではなかった。
確認するだけだ。
「おまえも、同じ事考えてるんだろ?」
比呂はそう、和彦に問い掛ける。
「まぁな。」
「一応、確認する。」
「あぁ。」
「このゲーム、なんとしても4人で生き残る。他のやつら、全員殺して、だ。」
「あぁ。」
「その後・・・俺は――
お前と綾を殺す。」
「あぁ。」
「絵里だけを生かして、このゲームを終らせる。」
和彦は一度視線を外し、一つ息を吐く。
そして、もう一度比呂の目を見つめ、言う。
「悪いけど、生き残るのは綾だ。俺はおめーには負けね―よ。」
「やってみなきゃ・・・わからないよ。」
「そうだな・・・。」
二人は、ふ、と小さく笑った。
二人の決意はお互い理解していた。
このことを絵里と綾が知ったら、きっと驚き、罵倒し、取り乱し、自ら命を絶つだろう。
それは容易に想像できた。
だからこそ、この確認は二人だけで行わなければならなかった。
自分の惚れた女だけを、生かせる。
男としてのエゴ以外の何者でもない。
当然、一人残されたとして、それを本人が望むとは二人とも考えてはいなかった。
ただ、そうするほかないのだ。
そうする以外に、生きる目標は見つけられない。
二人には適当に説明するつもりだった。
4人になってから、脱出の方法を実行するとかなんとか。
盗聴されている事を巧く使って、その時まで方法は明かせないと。
比呂は和彦の目を見る。
和彦も比呂の目をみる。
二人の間を風がすり抜けていく。
「こうするしかないんだよな?」
最後の確認だ。
「生きて帰れるのは一人だけだ。」