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「なんだ、いつのまにか仲良くなってんな? 」
「え? 何が? 」
「あほ。あの二人だよ」
「あー・・・」
「何気にちょっと心配だったよ」
「俺、そんな事考えてなかった」
「呑気ですね。比呂隊長」
「うっせ」
比呂がそう言いながら和彦に肘を突き出した所で、絵里が口を開いた。
「何か決まったの?」
「ん・・・。ま、これからの事」
比呂はそう言いながら突き出した肘を和彦に当てた。
和彦は大袈裟に肘の当たった右腕をさすりながら、
今相談した事を簡単に説明する。
しばらくは今までどおり動かずに様子を見る事。
”山中のほうが身を隠しやすい”という点を考慮して、西南へ若干の移動をする事。
これ以上グループ内の人数を増やさない事。
つまり、積極的にゲームに参加するわけではないが
他のクラスメイトに対しては逃げるか、殺すかの選択をする事。
最終的に4人だけになる頃にひとつ、考えがある事。
その考えは首輪で盗聴されているので、今は説明できない事。
絵里と綾は反論はせずにただ、頷いた。
若干、抵抗はあったが”積極的にクラスメイトを殺すのではない”という建前で納得した。
全員の納得を得、比呂は”よし”と呟いた。
そして広げた地図を手早く折りたたみ、ディバックにしまう。
その間、和彦は空を見上げていた。
綾もその視線を追ってみる。
6月の空は雲がはやく流れている。
先ほどより、若干雲の量が増えている事に気付く。
「こりゃクルな」
誰に言うわけでもなくそう呟くと、ズボンの後ろのポケットから財布を取り出す。
綾は不思議そうにその行動を見つめていた。
折りたたみの財布を取り出すと、それを片手で開き、
隠しポケットのような場所から5cm四方の袋を取り出す。
二つのビニールの片方を比呂へ手渡した。
そして一言。
「つけとけよ」
それは紛れもないコンドームだった。
「なっ」
綾は赤面する。
こんなところで?!
これから?!
何考えてるの?!
絵里も同様に驚く。
「和くん何出してんのっ! 」
「は? 何ってゴムだよ」
「・・・っそうじゃなくて、なんでこんな時にソンナものだすのっ」
真っ赤になった顔で絵里は言う。
そこまででやっと和彦は気付く。
そして声をあげて笑った。
「あほかっ。これはこうやって使うんだよ」
ビニールを手早く破き、人差し指と親指にコンドームをはめる。
先端の突起を内側からつまみ、引っ張る。
内側を外側に、外側を内側にそっくり裏返し、
そのままレミントンの銃口に被せた。
「雨降りそうだろ? こうやって銃口に水が入んないようにするんだよ
戦争映画なんかでよくやってるだろ? 」
比呂は二人の赤面を見て、和彦とは対照的に声を抑えて笑った。
「変な想像するほど元気あるなら、まだ大丈夫そうだな」
二人は仲良く、より一層に顔を赤くした。