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「千春ぅっっ!!! 」

叫んだ栄介の体が弾かれる。
その一瞬前に銃声が聞こえた。
左脇腹に鈍痛。
振り返ると、辰巳陸将が拳銃を構えていた。
銃口からは硝煙。
防弾チョッキがなければ即死かもしれなかった。
栄介はかっとなる。
血が上り、怒りが込み上げる。
体中のアドレナリンが爆発的に体を駆け回り、汗腺から熱い汗が吹き出る。
栄介は再び陸将に銃を向け、引き金を絞る。


だだだだっだだ! 


という小刻みな銃声にあわせ、陸将の身は左右に弾かれる。
何発かが、顔面を襲い、首もろとも後ろへ飛び跳ねた。
そしてそのまま、どさりと倒れる。
栄介はその姿から即座に目を離し、金網へ視線を戻す。
肩から血をしぶかせて、千春が崩れ落ちようとしていた。
目が見開かれ、肩が完全に体から分離していた。


「千春!!」


 と栄介は声をはりあげる。
金網に手をかけて、崩れ落ちながら千春は言う。


「おにい・・・ちゃん・・・痛い・・・いた・・・た、助けて・・・」


駆け寄ろうとした瞬間、栄介の視界に飛び込む、斧の切っ先。
その切っ先は一直線に千春の頭を狙い、振り下ろされた。
ガバンという音と共に、千春の頭が地面に叩きつけられた。
金網ががしゃんと響く。


栄介は、あっと声をあげた。


千春の頭はまるでスイカが割られたようにぐちゃぐちゃに地面へ散らばる。
どす黒い血と、ピンク色の肉片。
そして、白い骨が見えた。




…………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁあああああっ




栄介は抑えられない感情をそのまま声にして、叫ぶ。
目の前には斧と、千春の頭を見下ろしながら“うふふ”と噴出す武士沢雄太がいた。
栄介はそのまま引き金を引く。


叫びながら。



あああっああああっ
あああああああ
ああああああ
ああっ!!!!!!




連続する破裂音と共に雄太の体が踊る。
右手が、左足が、小さな肉片とともに吹き飛ぶ。
そして、頭が破裂するようにぱんと弾ける。
雄太はどさりと倒れた。
手足はそれでも跳ね上がる。
倒れてしまった雄太に栄介は執拗に弾丸を浴びせた。
もう自分の意志では動かなくなった雄太の体が弾丸の衝撃で跳ねる。
栄介は弾倉の弾が一つ残らず吐き出されるまで、引き金を引いていた。
いや、弾丸を撃ち尽くしてもそのまま引き絞っていた。
口からは嗚咽が漏れる。





「千春・・・千春・・・俺・・・・・・俺・・・。


俺が・・・俺が・・・。


千春・・・。


こんなところで・・・。


誰が・・・。


千春・・・。


ご、ごめん・・・千春・・・。


あぁ・・・ああ・・・あああああああああああ! 


崩れ去るようにその場に突っ伏す栄介。
悲しみというよりも激しい怒りと、憤りを感じていた。


誰が、妹を。


こんな目に。


俺の大切な妹を。


必ず、またあおうと約束した妹を。


俺の家族を。


誰が。


この国か? 


この国が、俺から大切なものを奪ったのか? 


あいつは、千春はまだ15なのに。


この国が、このプログラム・・・が。


俺が守ろうとしたプログラムが。


俺が。


違うっ! 


俺じゃない。


国だっ! 


この国が。


俺の大切なものを! 


俺から、俺から・・・。


くそっ! 


俺はこんな国を守ろうとしてたのかっ! 


ふざけるなっ! 


狂ってる! 


この国は! 


馬鹿げてる! 


プログラムなんて! 


俺を! 


俺を! 


こんなことに! 


こんなことにっ!!! 



・・・。
 


・・・・・・・・・。



壊・・・す。


ぶっ壊してやる・・・。


こんなもの。


俺が。


俺の手で。


ぶっ壊してやる。


俺から、大切なものを奪ったんだ。


と、当然だ。


壊す。


壊してやる。






















壊す。

壊す。

壊す。

壊す。

壊す。

壊す。











  。









肩を振るわせる栄介の、はずれてしまったインカムからは本部からの応答を求める声が響く。



――第2班、応答せよ。 第2班。
応答せよ。 ――




[残り8人]

 


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