-126-




「あの斉藤?! 」


「そうだよ。アノ斉藤だよ! 」


「マジカヨっ! 」


「あいつ銃上手いぞ? 二発とも、当てやがった」


「あぁ! わかってるよ。どうする? 比呂っ! 」


「逃げ・・・れないよな? 」


「無理っぽくね? 」


「ヤルしかねーだろ?! じゃぁ! 」


比呂はすばやくベレッタを抜く。
コンドームを剥ぎ取り、腰の下に構えた。


「どうやる? 」


和彦もショットガンを構え、ゴムを引き剥がした。


「お前が援護、俺が飛び出る」


「いつものってことか? 」


「そう! 腰抜け和彦大作戦」


「うるせ――ってか・・・ちょ・・・比呂、やばい」


比呂は今にも岩から横へ飛び出しそうな姿勢で、聞き返す。
緊張で声が大きくなる。


「なにが?! 」


「やばい・・・反対から――」


「んだよっ! 」


比呂はわずらわしそうに振り返る。
そして和彦の視線を追った。
その視線の先に・・・
雨の雫の中に丸木一裕の姿が見えた。
距離20メートル。


「嘘・・・だろ? 」


比呂は呆然と呟く。
一裕は走ったりせずにゆっくりと比呂達へ向かっていた。
左手には銃を握っているのが比呂達にも見えた。
比呂の額に汗が浮かぶ。
和彦は舌打ちをついた。


「ついてねぇ! んな時に一裕かよっ! 」


「和、斉藤との距離は?! 」


和彦はそう尋ねられると同時に岩の上部から顔を出す。
即座にギインと火花が散った。
すばやく顔を戻して、元のように岩に背を向け座り込む。


「20メートル、いや15だ!」


「近づいてるか?! 」


「ああ、真っ直ぐな!! 」


「ちっ・・・」


「もっかい、比呂、策練れ! 」


「練ってるっつのっ! 」


一裕がうっすらと笑みを浮かべているのが見えた。
まずい――と比呂は思う。
この状態で一裕に発砲されたらそれまでだった。
なんとしても一裕の注意をひきつけつつ、
斉藤知子を遠ざけなければならない。
いや、撃ち殺さなければならない。
偶然の挟み撃ち。
比呂の頭がフル回転する。
そして、一つの筋が出来た。


「和彦っ! 絵里! 良く聞けっ! 」


「おう! 決まったか? 」


「俺が飛び出す。せーので和、一裕撃て! 」


「撃てって当たんねーよ! こんな距離じゃ! 」


「誰が当てろって言った! 威嚇だ! 」


「ん?・・・で? 」


「俺、そのまま左にずれながら一裕ひきつけるっ! 
和は撃った瞬間振り返って岩の向こうの斉藤撃てっ! 
威嚇だっそれも! 」


「わかってるよっ! 」


「で、その後すぐ、絵里! お前ワルサーで斉藤撃て。
当てなくていい。威嚇だ」


「え? あたしっ?! 」


「出来ないなんていうなよ。命かかってんだっ! 
絵里は間隔を短めにあけて、斉藤を狙いつづけろ! 
その間に和は弾いれて、左から飛び出せ! そっからは絵里も狙え。
当てるつもりで撃てっ! 絵里に注意がイってれば和が仕留めろ。
和に注意がイってれば絵里、なんとかして仕留めろ」


「わかったっ! お前どうすんだよ?! 援護なしでイケんのか?! 」


「あほかっ! 援護欲しくても銃がねーだろうが!! さっさと斉藤片付けて、加勢しろっ! 」


「わかったよっ! いくぞ!! 」


比呂は痛む右足に一瞬目を落とし、唇を引き結んだ。


「せー・・・の―――」


「ちょ、ちょっと待ってっ!! 」


絵里が割って入る。


「なんだ?! 」


比呂は焦りを顔に浮かべたままにじれったそうに絵里を見る。
生暖かい雨の香りが苛立ちを煽る。


「あたし・・・できるか――」


「あほっ! しょっちゅうエアガンで俺の頭撃ってんだろうがっ! 」


「だってホンモノなんて初めてだよ?! 」


「大してかわんね―よ! 衝撃が強いだけだっ! 綾っ! 
弾切れたら横で渡してやれっ! 絵里、弾の入れ替えわかるな?! 」


「比呂のエアガンと一緒?! 」


「一緒!! 」


「わかった! あ・・・比呂っ」


「なんだ?! 今急いでんだよ! 」


「――気をつけてね? 」


「・・・ああ、お前らもなっ 」


「比呂、いくぞ?! 」


「ああ…」


「せー・・・のっ 」




[残り8人]

 


PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル