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「ついてないね」

ぼそりと康明が言う。その言葉にまだいくらか混乱している比呂が尋ねた。

「何? 何? 」

「政府の電源が落ちた。理由はわからない」

「ちょ、ちょっとっ。よくわかんねーけど、康くんどうなってんの? 」

「だから、さっきから言ってるけど二分三分でほいほい説明できるほど簡単な事じゃない」

「んな事言われたって…」

「簡単に説明すると、僕たちこれから援護も、誘導も期待できない。自力でこの会場から出て、ランディングポイントへ行く」

「・・・だから、よくわかんねって」

「いいよ、理解しないで。とりあえず走って」

「…なんか気分悪い言い方だなぁ。ポイントわかってんの? 」

「大体ね」

「…」

「七年前と大して変わらないな…」

「七年前? 」

「昔話。走れる? 」

「走んなきゃ死ぬ? 」

「その通り」――――





「だってさ」

イサムが軽く溜息をつく。

「比呂は?! 康くんは!! 」

「心配すんなよ、和。合流した。位置はわからない。個別で離脱するしか方法はなさそうだな」

「…」

「怪我もないだろう。大丈夫だ」

「離脱っても、んな簡単に出来るの?! 」

「ぎゃーぎゃーうるせーなー。出来るよ。段取りだけでいくつあると思ってんだ。ま、これからサイアク
の手段でいくんだけどな」

「サイアク? 」

「そう、兵士がどばーと出てくる。おそらくだ。見つからなければめっけもんくらいに思っとけ。で、兵士――いや、障害物は実力で跳ね除ける」

「実力…」

「お前の手に持ってる銃だよ」

「…わかった」

「和、惚れてるコは絵里ちゃんじゃないほうだな? 」

「なっ――んなときになにいってんだっつの! 」

「へ、せいぜい守ってやって点数稼げ。もっとも、死んだらエッチもできねーぞ」

「冗談言ってる場合じゃないでしょーが! 」

「よくわかってるね。いいか? こっから本物のサバイバルだ。死ぬか生きるかのな」―――






「大田さんっ! やばいって! 」

「わかってるよっ! 離脱だ! 急げ」

広志があたりを見回す。突然に6人の男たちが慌てだした。当然、広志には何が起きているのか理解できない。それは由布子も同様だった。そんな広志の顔みて、大田は早口で告げる。

「悪いね。手違いでのんびりしてられなくなった。走れる? 」

「え? えぇ。逃げるんで…すね? 」

「そう、逃げれればね」―――






「どうなってんだ!! 」

「わかりません!! 」

「早く復旧しろ!! 」

「電源です!! 秋吉が! 」

「何?! 」

「秋吉が変電所の配電盤を破壊! 自発電に切り替えます! 」

「バカヤロウ! 急げ! 」

「秋吉は?! 」

「確保しました!! どうします? 」

「…」

「堀田副指揮官! 」

「教授…指示を」

「…なんだ…なんなんだ…私は……関係ないっ。私の責任などではないっ」

「何言ってるんですか? こんな非常時に。あなたはここの最高指揮権を持ってるんです。中央に指揮を仰げない今、あなたが決断するんですよ?! 」

「わ、私は…知らん!! き、貴様らが無能なのだ!! 私は完璧だった!! なぜあの小僧を野放しにしたのだ!! 国家反逆罪だ! 堀田! 貴様の責任だ! 」

「…くそっ。だからこんな奴つかえねーって言ったんだ…」―――







「栄介…」

「浩太郎か」

「お前何やってんだよ――」

「千葉、かまうな撃て」

「しかし…」

「幸太郎。この国に守る価値なんてもんはない」

「栄介…」

「千葉、こいつは国家反逆罪だ。撃て。殺せ」

「しかし―――

「撃てよ。俺はお前に撃たれるなら本望だ」

「栄介…」

「ええい! いらいらする。友情ごっこなど誰がしろといった。貸せ。俺が撃ってやる」

「あっ、南雲伍長! 」

「秋吉、最期に一言言い残すことはあるか? 武士の情けだ、聞いてやる」

「…狂った国と狂ったあんたら。お似合いだね」

「はっ。いいたいことはそれだけか? 」

「うるせーよ、南雲。俺は疲れた。あほみたいにあんたに従ってるのもこの国の馬鹿さ加減にもな」

「まぁその暴言は許してやろう。もう残り少ない命だからな。どうだ? 俺は寛大だろう?  秋吉
ぃ…」

「何を偉そうに。あんたがヅラだってのは有名なはなs―――



ぱぁん




 


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