-137-





 

「足、平気? 」

康明は足を休めずに体だけを比呂に向け、そう尋ねた。
比呂も足を休めることなく前へ進みながら頷き、答える。
少しだけ顔をしかめ、右足をかばうように不恰好に走る。
比呂には体が鉛のように重く感じられた。
足が言うことを聞かない。
痛みではなく、もう感覚が薄れているのだ。
たとえ逃げられたとしてももう元通りにはならないだろうな、と感じた。

「ポ・・・ポイント、こっちでいいの? 」

そう尋ねられた康明は左右を見渡しながら答える。

「こっちでいい。方角はね」

「方角は? 」

「兵隊さんが待ってるかもしれないけど、って意味」

「兵隊? ――陸軍? 」

「そう。気付かれたかも知れない」

「――?! 」

「アクシデント。全てのことは簡単に上手くは進まないんだよ。物事が大きければ大きいほどね」

「ちょっ・・・もし、もし陸軍とばったりなんて事になったら――」

「あぁっRiotと陸軍いっしょにしてもらっちゃ困る。悪いけど、その辺の特殊部隊なんか目じゃないよ。Riotの実行は」

「だからって、数が・・・」

「それは言わないでよ。“多勢に無勢”って言葉、和がよく使うけど今回に限りそれは否定させてもらうよ。そうだ、比呂、ガバメント撃ったことあるの? 」

「いや、ベレッタしか撃ってない」

「じゃ、僕のソーコム渡しておく。ベレッタよりは軽いよ。精度も悪くない。格好悪いけど」
康明の伸ばす手に一裕のガバメントを渡し、代わりにソーコムを受け取る。

「ひとつ、聞いていい? 」

「何? 」

「何のために? Riotは・・・活動してるの? 」

「・・・。そんなに大層なことじゃないからあまり言いたくないな」

「それくらい教えてっての。聞きたいことなんかほんとは200くらいあるんだから」

「カタキウチ」

「へ? 」

「僕はね」

「敵? 」

「ちょっとこのプログラムには因縁がね・・・」

そう言いながら康明は胸のあたりにそっと手を当てる。ちょうど、首から下げたロケットのあたりを。

「じゃ―――

比呂が言いかけたところで、目の前に火花が散る。
劈くような破裂音が比呂の鼓膜を乱暴に揺らす。
康明はM4A1を構え、引き金を引く。
3度、連続した破裂音の後、もう一度、3発。
右前方へ銃を構えたまま左後方へ後ずさる。
左手を水平に伸ばしひょいひょいと揺らす。
指先で行けと合図する。
比呂は敵――この場合陸軍だ――の位置を把握し、左後方へ退く。
ちゅんっと弾丸が風を切る音が聞こえた。
比呂の顔の近くを飛んだのだろうか。
ごくりと唾を飲み込み、比呂の体は硬直する。

――ゲームじゃない――

サバイバルゲームのような高揚感などとは程遠い、恐ろしいほどに張り詰めた空気を感じた。

「比呂。射撃の腕、期待してるからね? 」

「そういうの、中学生に言うなよ―――」

 



 


PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル