-138-





 

「千成さん。撤収します! 」

「段取り忘れんなよっ! 」

テント内から次々と飛び出していく通信技師や、技術員を隆志は同じ言葉で送り出していく。



"段取り"

この演習場まで乗りつけた車で、まずI.C周辺へ出る。
その場で陸軍が待機しているのならば強行突破。
なんとしても高速へ入る。河口湖から北西へ。
甲府の手前でその車を放置し、中央分離帯を越え名古屋方面から来る別部隊と合流。
隠しシートで富士エリア周辺の検問を突破。
千葉に入る前に車を捨て、散開。

すでに名古屋方面の回収部隊は行動を開始している。
一刻の猶予、いや、一秒の余裕も隆志たちには与えられてはいない。



「秋也、おまえたちも行け」

そう言われた秋也は一度典子の顔をみて、口を開く。

「しかし――」

すばやくそれを隆志はさえぎった。

「次だ。次がある」

「千成さんの息子さんがっ・・・」

「次だ。この作戦は失敗なんだ。次だ・・・」

隆志は押し殺すようにそう言うと、典子が空気を悟り秋也の袖を引っ張った。

「秋也。私たちがいても、千成さんの足手まといだよ・・・」

「そうだ。足手まといだ。君たちには章吾君がいる。子供のためにもここは退け」

「千成さん・・・」

隆志は典子へ目配せをする。
典子はその意図を汲み取り、さらに秋也の袖を引っ張った。

「わかりました。必ず、生きて戻ってください」

「あぁ。いつかいっしょに酒でも飲もう。政府のほえ面を肴にな」

「はい。必ず」

テントの前に黒いワンボックス滑り込む。
勢いよくスライドドアが開き、通信技師が手を伸ばした。

「大丈夫、あと6台ある。千成さんはどうせ最後まで残るつもりだ。はやく」

秋也はもう一度振り返り、隆志へ目を合わせる。
隆志は腕を胸の前で組んだまま黙って頷く。
秋也もそれに答えるように頷き、ワンボックスに滑り込んだ。
来た時と同様に、ワンボックスは土ぼこりをあげ、勢い欲走り去った。

「頭のイイコですね。典子ちゃんは」

テントの奥から戦闘準備を整えた武士が出てくる。

「ああ、熱血バカと冷静女房。お似合いだね」

武士は隆志の前に黙ってM4A1カービンを差し出す。

「どうせ、最後まで残るつもりでしょ? 千成さん」

隆志は銃を受け取りながら

「大分わかってきたみたいだな。俺って人間を。でも、俺のサポートはおまえじゃ役不足じゃないか? 」

武士はそれを鼻で笑い飛ばす。

「光栄って言うんですよ。こういうのは。なんせ次にRiotをしょってたつのは俺ですからね」

「そういうセリフは康明に一回でも勝ってから言うんだな」

「・・・必ずちゃんと、勝負をつけますよ。だから、死なれちゃ困る」

そういうとヘルメットを深くかぶり、ふーと息を吐いた。
緊張を少しでも和らげようとしているのだろう。
隆志はそれを境に口を真一文字に引き締めた。


 



 


楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル