堀田が大声を張り上げる。
「必ず生け捕りにしろっ! 自決などさせるな! 必ずだ! 」
本部の通信はパンクしそうな勢いだった。
ひっきりなしに部隊発見の報告。
「くそ。本当にレジスタンスか? やけに統率が取れてるな・・・」
堀田はモニターを睨みつけながら爪を噛んだ。
「副指揮官! 西山間部第4班全滅です! ならびに第3班より応援の要請! 」
堀田は舌打ちをつき、眉間にしわを寄せる。
「東山間部の3〜4班を西に回せ。目標の進路は? 」
「恐らく、南西に一直線です」
「ならば先に回せ。西の3班は深追いせずにそのまま牽制を続けろ」
「伝えますっ! 」
相当の腕と武装だな。と堀田は思う。
レジスタンスに出来る芸当ではない、と。
かねてから噂されている、米帝CIAの差し金か? と勘ぐる。
「和っ! ばててる暇なんかねーぞ! 」
「わかってるよっ! 」
Riot実行第二班は左後方からの銃撃を牽制しつつ進む。
すでに4個の手榴弾を投下しているものの、銃撃の手は休まらない。
綾も絵里も息が続かないのか、赤い顔から徐々に青みを増していっていた。
チアノーゼ。
いわゆる酸欠の状態に陥る一歩前と言えた。
「金網越えてんだからもうすぐだっ。がんばれっ! 」
そんな二人にイサムは声を掛ける。
実際は自分もすぐにその場にへたり込みそうになっていた。
「イサムくん! 弾! 切れた! 」
和が後ろ向きに走りながら顔だけを前に向け、言う。
イサムはすばやく代えのマガジンを取り出し、手渡す。
和は左腕でそれを受け取り、残弾を打ち切った瞬間にマガジンを排出。
すばやく装填し、切れ間なく銃撃を後方へ浴びせる。
「ってかなんでこんな武装してんのよっ! どっからそんな金沸いてくんの? 」
「うるせぇ! 撃ってろおまえは! あとで説明するって言ってんだろうが! 」
「気になって銃撃どころじゃねーよ! 教えてよ! 」
「この国潰したいって思ってる国なんかいくらでもいるんだよ! 俺達のスポンサーはそれ! アメリカだ! 」
「裏じゃいろいろやってんだ! アメリカも! 」
「外面ってのはいつも綺麗なもんだ! これで気兼ねなく撃てるだろ? 撃ちまくれ! 」
「リョーカイっ! 」
一足先に前へ進んでいる隊員からイサムへ無線が入る。
「イサムさんっ! 回収部隊を目視で確認! 距離、約200です! 」
「了解だ! イケるぞ! 」
「機関銃での一斉掃射の合間に乗り込む段取りだそうです」
「5.56ミリか? 」
「はい、そうです! 」
「聞いてる! 」
「急いでください! ICのほうも相当硬いみたいです! 援護の要請来てます! 」
「わかった! 」
イサムは足を止め、後方の3人へ告げる。先に絵里と綾を走らせ、その後ろへつくように。
そして、ありったけの弾を打ち込むように。
「弾幕張れ! 距離200だ! 」
その言葉を合図にイサムも銃撃に加わり、切れ間なく、まさに弾丸のシャワーを後方へ浴びせる。途端に向うからの銃撃がおとなしくなっていく。
「このままだ! このまま行くぞ! 」
それでも和は、比呂の安否が気になり気分が高揚することはなかった。
――俺だけ、助かったって・・・意味ねー――
険しい表情のまま、気持ちを引き金にぶつけるように銃撃を放つ。
後ろを振り返ったイサムの目に黒いワンボックスが見えた。