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大東亜共和国。
言わずと知れたファシズムの国。
総統と呼ばれる最高権力者を中心に構成された完全なる独裁国家。
偽りで塗り固められた国。
国民のほとんどがこの国の真実の姿を知らない。
いや、知ろうとはしない。
準鎖国によって情報は制限され、表現の自由さえも奪われている。
すべてにおいて閉鎖的で偏った考え方は、世界の中でこの国を孤立させている。
しかし、4年前のあの事件によってこの国は揺れ動き出した。
「プログラム担当教諭殺害事件」
二人の生徒(当時中学3年生)がプログラムより逃走。
船内にはプログラム担当官、坂本金発教諭ほか十数名の銃殺体を発見。
警察はこの二人の生徒を事件の重要参考人として指名手配。
全国に緊急配備が行われた。
しかし依然として行方はつかめず、事件は暗礁に乗り上げた。
この事件は公開捜査によって広く国民に知られることになる。
「プログラム」という殺人ゲームの実態とともに・・・・。
この事件以降、各地では「プログラム」に関する様々な反対運動や、デモなどが行われ始める。
しかし、圧倒的な政治力によりそのすべては闇の中にもみ消されていく。
この国は狂っている・・・。
そう考える国民は水面下ながら確実に増えはじめていた。
空港。
中国からの定期便。
降りてきた二人の男女。
深く被られた帽子の下にはまだ幼さの残る顔。
「久しぶりだね・・・・・。」
「あぁ・・・・・。」
「もう・・・ずいぶん前の気がするな・・・。」
「本当に・・・寄らなくて良いのか?・・・・」
「・・・・・・うん・・・・。迷惑・・・・かけちゃうと思うから・・・。」
「・・・・・。」
「大丈夫。・・・・あたしにはあなたがいるから・・・。」
「・・・・・・・あぁ・・・・。」
「ね?秋也。」
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