康明は会場内に侵入する際に、ひとつの予防策を張る。
侵入の時点ではランディングポイントはそのまま侵入したポイントだった。
何らかのトラブルで追われながらポイントに入ることを考慮して、対地爆薬を埋め込んでいたのだ。
侵入直後から康明はポイントの周辺にマーキングを施す。
赤いスプレーで木の幹にしるしをつけていた。
正確に爆薬を埋めた位置を割り出すために。
康明が投げた包みは、それらを誘爆するためのプラスティック爆弾だ。
比呂はそれを打ち抜く。
衝撃を与え、起爆させた。
切り札。
一瞬にして、爆炎が巻き上がる。
同時にすさまじい爆音と熱風。
康明と比呂はすばやく地に伏せ、それらをやり過ごす。
そして、熱風が過ぎ去った瞬間に行動を開始する。
目の前は炎の海だった。
それが突破口。
右後方から銃声が聞こえる。
左方向からも。
しかし、煙幕の中の二人にはその銃弾はあたらない。
前方の兵士はうまく排除できたらしい。
もっともあの突然の爆発に耐えられるとは思ってはいなかった。
康明と比呂は躊躇なく炎の海へ飛び込む。
呼吸を止めて。
息を吸えば肺が焼け爛れてしまう。
自殺行為ともいえたが、二人にはそれ以外の選択肢はなかった―――