隆志を乗せた武士のランドクルーザーがI.Cの手前へ到着する。
どこからか、一台のワンボックスが後ろにつく。
それはイサムの運転するマルフタ回収車輌だった。
武士はブレーキを踏み、車を停める。
イサムも車を脇に寄せ停めた。
運転席からすばやく飛び降り、イサムがランドクルーザーに駆け寄る。
ランドクルーザーのパワーウインドウがモーター音を静かに鳴らし、降りる。
「武士、どうだ? 」
「康明たちは回収できない。すまない」
「いや・・・仕方ない。判断は間違ってない。通信が途絶えたら無理だ」
「突破しよう。詳細は? 」
「緊急配備を敷いているが火力は少ないだろう。強行でいける」
「よし、俺が先陣を切る。続いてくれ」
「わかった」
「和にはまだ言うな」
「嘘をつけってのか? 」
「本当のことを今、説明できるか? 」
「いや、無理だな―――わかった」
「行くぞ」
「40秒後だ。照明弾をあげる」
イサムは車へ戻り照明弾の支持を出す。
和彦が後部座席からイサムに食って掛った。
「イサムくん! 比呂は! 康くんは?! 」
「遅れる―――そうだ」
「ちっ。大丈夫なの? 」
「恐らく―――」
イサムは身を切られる思いではぐらかした。
しかし今は集中しなければならないことがある。
I.Cを突破するのだ。
40秒後、イサムのワンボックスから照明弾があがる。
同時に、どこからともなくエンジン音がいくつも沸きあがる。
車道わきの茂みから、林から、自動販売機の陰から、数台の車が飛び出す。
先頭のランドクルーザーが勢いよく走りだす。
そして6台の車がそれに続いた。
武士の視線の先、フロントガラス越しに、河口湖I.C高速発券所が見えた。
同時にバリケードと数人の兵士、軍の車輌が視線に入る。
アクセルをさらに強く踏み込む。
うなるようなエンジンが決意の強さを示しているようだった。
武士の車のすぐ後ろから対空砲のショットガンが火を放つ。
発券所のブースに被弾し、派手な音が響く。
同時に数人が車の窓から身を乗り出し、一斉射撃。
突然の襲撃に緊急配備の兵士は戸惑う。
応戦が間に合わず、バリケードを弾きながら武士のランドクルーザーが難なく突破。
間を空けずにそのまま二台目が続く。
二台目、イサムたちの車輌は通り抜ける際に手榴弾を七つ、放る。
若干車間距離が開いた3台目のタイミングに合わせ爆発。
爆風を浴びながら3台目、4台目が突破。
そして、残り3台が政府の銃撃を浴びながら辛くも突破。
最後の車輌はブースを突破した瞬間バックドアを開き、対空機関銃で一斉掃射。
何台かの軍車輌は燃料タンクに被弾し、炎上。
これで追っ手をいくらか遅らせる事が出来るだろう。
武士は少しだけ、胸の緊張を解く。
後ろ髪を引かれながら―――