―――正直、きつかった。
それを聞かされたときは。
でも、"同時に仕方ないな"とも思った。
今、俺は船の上にいて、アメリカに向かっている。
五体満足であのプログラムから逃げ出せた事、今でもうまく信じられてないけど。
同様に、比呂が一緒じゃないってことも信じられてない。
絵里はずっと泣いてた。
それを聞かされた時。
そりゃそうだよな。
あの状態で生きてられる訳ない。
事実上、"死んだ"って言われたようなもんだ。
俺は悲しかったいうよりは、なんだか力が抜けた。
寂しさよりも、そうか、と妙に納得した部分があった。
いや、何言ってんだろう。
うまく表現できないけど―――そう、実感が湧かない。
比呂がいないってことがうまく理解できない。
なんかこのまま振り返れば、退屈そうな顔でタバコを吹かしてるあいつがいるような気がする。
もちろん、振り返ったってあいつはいない。
でもそれは空気みたいなもんで、絶対なくならないもんだと思ってて、今でもすぐそばにある気がして、でもそれはなくて―――
最後に交わした言葉。
なんだったっけ?
いつもの軽口だったっけ?
覚えてない。
でも、最後のお別れなんて顔じゃなかった。
そんなこと思っても見なかった。
たかだか2年くらいの付き合いだったけど、時間で換算するような関係じゃなかった。
仲が良いってのはちょっと違う。
俺はあいつが好きだったし、同時に嫌いだった。
いや、好きな部分もあったし嫌いな部分もあった、って言ったほうが適当かな。
あいつもそうだったと思う。
でも、その先が俺とあいつの間にはあった。
解り合ってた。
うまくいえなくてもどかしい。
こういうのあいつは的確な言葉でずばっと簡単に言ってのけるだろうな。
なぁ―――そうだよな? 比呂――
アメリカについたら、おまえの欲しがってたoasisのビデオ、探しておくよ。
いつか、また会えるだろ? そうだろ? ―――
だから、それまで―――じゃあな―――