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大東亜空港。


千葉県成田市にあるこの国唯一の国際空港。
もっとも中国への定期便のみなので”国際”と呼ぶのはいささか大げさな気がするが。
もちろん海外旅行などは基本的に許可されていない。
やたらに広いロビーはまったく無意味なものだった.


注)一部の高官や一等労働者(一般人民職階等級)には国際任務という名目で特別に許可される例もある。


そんな閑散としたロビーで千成隆志は”二人”を待っていた。
現時刻午後7:49分。
20分ほど前からロビーの椅子に腰をかけていたが、
その20分間に職務質問を4回も受け、多少なりとも気分がいらだっていた。


―― こういうところが腹立つんだよ・・・。


無償にタバコがすいたくなったが、三日前に息子の喫煙を注意し、
成り行き上自分も禁煙させられてしまったのでポケットにはタバコもライターも入っていない。


―― くそっ・・。バカ息子・・・。


ふと、顔を上げゲートに目を向ける。二人の姿はまだ・・・・ない。
代わりに警官が一人近づいてくるのが見えた。


「もしもし、ここでなにをしてる?」


うんざりした顔で隆志は答えた。


「人を待ってるんですよ・・・。」


「誰を待っているのかね?」


警官は間髪入れずそう聞き返す。
右手は拳銃のホルダーにかかっている。


――どうしてこの国の警官はこうも偉そうなのかねェ・・。


口には出さず隆志はそう思った。


「誰でも良いでしょ?そのゲートをくぐってくるんだから・・・・。
怪しいやつじゃないのはわかってるんでしょ?」


頭を掻きながら面倒くさそうに答える。


「貴様・・・国家権力を軽視する・・・・・


「おお!こっちこっち!」


隆志は警官が言い終わる前にさっと席を立ちゲートに向かって手を振る。
その視線の先には二人の影・・・。
胸には一等労働者を証明する金色のパスポート。
隆志は小走りでゲートに向かった。
あの、金色の趣味の悪いパスポートをつけ、
正規の入国審査を受けているのなら警察だってうかつには手は出せない。
ただの巡査程度ならなおさらだ。
警官は舌打ちをつき後を去る。


近づいてくる男に二人は気づいていた。
からだの大きい、そしてその大きな体に不釣合いなほどひとなつっこい笑顔見せながら、こちらに向かっている。
電話で話した印象とはちょっと違うな、と秋也は思った。



「はじめまして。千成さん。」


秋也は笑顔を見せた。


「はじめまして。」


典子も笑顔を見せる。


「さぁ・・とにかく行こう。話は車の中でだ。」


簡単な挨拶もそこそこ、隆志は二人を車まで案内した。




 


「改めて、はじめまして。七原秋也です。」


秋也は富士へ向かう車の中、ハンドルを握る隆志に向かい礼儀正しく挨拶した。


「こちらこそよろしく。Riotの千成隆志だ。」


進行方向に目を向けたまま隆志も答える。


「七原典子です。よろしくお願いします。」


典子も丁寧に挨拶した。


「よろしく」


こんどは笑顔を見せて答えた。


「大変だったか?入国は?」


「いえ、それほどでもないですね。千成さんに用意してもらったこのパスポートと戸籍情報、完璧でしたよ。」


「当たり前だろ?Riotなめんなよ?」


隆志はまるで少年のような笑みを見せた。


「あ、そうそう・・・・・子供生まれたんだって?おめでとう。」


「ありが・・・・」


二人でハモッってしまい、目を合わせ笑った。


「ありがとうございます。」


典子が笑顔のまま御礼を言う。隆志もその光景を見て微笑んだ。


「名前は?なんていうんだ?」


「章吾って言います。友達・・・・・大切な友達からもらったんです。」


「川田くんか・・・・・・・・?」


「ええ。」


「そうか・・・・きっと喜んでるよ・・・。」


「はい。」


秋也は少し寂しそうに笑った。


「いくつになる?」


「来月で・・・1歳になります。」


今度は典子が答える。


「そうか・・・・必ず・・・・無事で帰るんだぞ。」


隆志は真面目な顔で言った。


「はい。」


はっきりと秋也と典子は答えた。


「さて・・・・このまま楽しい話を続けていたいのは山々だけどな・・・」


「わかってます。」


「君達二人は、これよりRiotによる戦闘実験第68番プログラム、
2001年度第18号対象学級草加市立草加南中学校3−V襲撃作戦に加わってもらう。
作戦終了まで指揮権はRiotにある。いいな?」







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