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車内は沈黙に包まれていた。


息をすることも困難に感じるほどの、圧迫感が充満している。
青木の”三村”についての質問が引き金だった。
千成隆志はフロントガラスの向こう側に視線を集中させている。
その体から発せられる強烈な迫力は、青木の口を完全に閉ざした。


――聞けるわけがない。


青木は直感で感じた。
聞いてはいけないことを聞いたと。
そして、いくら追求したとしてもきっと隆志は答えないだろうということも。
青木にしても”三村”について何か知っているわけではない。
ただ、知っていることは”三村”という人物がRiotを立ち上げた初期のメンバーで、
Riotのミッション中の事故で亡くなったということだけだった。
たしか七〜八年前に。
そしてその事故直後、隆志が30代の若さでこの反政府組織の舵を握ることになったらしい。
ただ、その当時のことは誰一人として話そうとはしなかった。
「千成さんに聞け。」という判を押したような答えが帰ってくるだけだった。


確かに関係がないといえばそれまでだった。
三村と言う人物が、今回の作戦に関係があるかといえば答えはNO。
それでも、青木の好奇心は収まらなかった。
もう一度聞いてみようかと隆志の顔を見た。


しかし、そこにいたのは先ほどまで和やかにお喋りをしていたおっさんの姿はなく、
200人以上のメンバーを人望だけで統率する本当のカリスマがたたずんでいた。
視線は道路のずっと先を睨んでいる。
その顔を見て、青木は我に返った。


そうだ。もう始まっている。ミッションは始まっているのだ。


河口湖のインターチェンジが見えてきた。ここからが難所。
お流れになってしまった質問は宙にういたまま少しずつ消えていった。


このインターを抜けて河口湖方面に2Km。
そこにRiotの作戦本部がある。
もちろん仮設テント。
付近住民によるクリーン作戦を装っている。
あのインターを抜ければ後戻りは不可能。
軍にこの計画が発覚すれば一人残らず抹殺だろう。
青木はごくりと唾を飲み込んだ。
ハンドルをぎゅっと握る。
手に汗がにじんでいるのがわかった。


―― おいおい、こんなとこでびびってんじゃねぇよ・・・。


ふっと思い出したように隆志は口を開いた。


「武・・・ぶっ壊すぞ?この国を・・・。」


深い言葉だった。
政府の恐怖の前に忘れかけていた言葉。
さすが、しめるとこはしめてくれる。
青木は低い声で答えた。


「はい。」








千成隆志(Riot総指揮官)
七原秋也、七原典子
富士河口湖 I・C 通過。


2001 6/13 AM07:41





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