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亜由美の突然の告白。
ゲームとは言え、亜由美にはちょっとは自信があったのだ。
―― 少しうつむいた顔を比呂へ向けてみる。
比呂くんは顔を真っ赤にして、和くんと綾の冷やかしを誤魔化そうとする・・・・。
ちょっと突っ張ったフリしてるけどかわいいとこあるじゃない!
ってなるはずなのに!
なに見てるの?!
比呂くんはっ!
比呂が見ていたのは、バスの外。
――囲まれてる?
なぜジープに?
なぜ軍に?
それともただ並走してるだけなのか?
反対側の窓へ視線を移す。
――やっぱり・・・・。
おかしい。
全部で14台?
前に見える2組のバスにはジープは貼りついてはいない。
亜由美も、和彦も、綾も告白を受けた直後から様子がおかしい比呂の顔を眺めていた。
―― さっきから右見たり左を見たり・・・・。
「和彦・・・・・・」
比呂がそう言いかけると、バスは急ブレーキをかけた。
高速道路で、時速130Km近くからのフルブレーキ。
ヒステリックなブレーキ音と女子の悲鳴がおかしなハーモニーを奏でていた。
前に一気につんのめる。
誰かがいすに頭を打ち付ける。
ゆれるバス。
視界が狭まる。
バスが完全に停止するまでいったい何メートル進むのだろうか?
振動は更に大きくなる。
ゆれるバスの中、生徒達の悲鳴は最高潮に達していた。
ガスン・・・。
窓からの景色は止まっている。
あのヒステリックブレーキと乙女達の二重奏も聞こえない。
バスは完全に停止していた。
安堵の空気が車内に広がる・・・・
のもつかの間、二人の兵士が勢い良くバスに飛び込んできた。
二人とも銃を構えている。
IMI UZI SMGだ。
イスラエル製のサブマシンガン、1950年代から様々な特殊部隊が使用してきた優秀な銃だ。
遅れて、もう一人バスに乗り込んできた。
スーツの上に白い・・・白衣を着ている、小柄な男だ。
銃は持っていない。車内は一気にざわついた。
―― そりゃそうだろう?
高速でのバスの急停車。
突然の兵士の乱入。
ざわつかないほうがおかしい!
「静かに」
小柄な男は一言そう言った。
と、同時に二人の兵隊はバスの座席と座席の間、補助席ができるスペースにUZIをぶっ放した。
ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
9mmの弾丸は子気味良い音を立て、バスの床をかきむしった。
悲鳴があがる。
・・・・・静寂。
「静かに・・・・・・・これから私語をしたもの、席を立ったものは射殺する。」
冷静な声で男はそう言った。
比呂はボーっとその様子を眺めていた。
異常な車内。
二人の兵士。
2丁のサブマシンガン。
小柄な男の「射殺」と言う言葉。
どうやらこのバスは、俺達は、何か大変なことに巻き込まれた。
混乱した頭の中ではそこまで理解できただけ上出来だろう。
男は続けた。
「このクラスは2001年度、18回目のプログラム対象クラスに選ばれました。」
「おめでとう。」
[残り37人]
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