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 ――体がだるい・・・。
なんだろう・・・?
すごく、のどが、渇く・・・。
あれ・・・?
おれ・・・ねてたのか?・・・
ん・・・・・。
誰か呼んでる・・・・?
なんだよ・・・
もうちょっと寝かせてくれよ・・・。


・・・・・呂」
・・・きろよ!」
比呂・・・・起き・・・」
「起きろよ!比呂!」


和彦は比呂の肩をゆすり、比呂を起こそうとしていた。
比呂の低血圧ぶりは周知の通り、和彦だって比呂を起こすのは嫌だ。
しかし、そんなことは言ってられなかった。
和彦は困惑していた。
突然のバスの急停車から、兵士達の乱入、発砲、そして・・・・
プログラム。


和彦たち、3年3組がプログラム対象クラスに選ばれた。
男はそう、いっていた。
あの小柄な、白衣を着た無表情な男だ。
もちろん和彦は、それが何を意味するのか知っていた。
それでも、何かの間違いであることを願っていた。


―― ドッキリカメラかなんかであってくれ!

と心の中で叫んでいた。
しかし、無表情の男(兵士含む)達の、圧倒的な圧迫感。
それはきっと”殺気”と言うやつなのかもしれない。
「プログラム」をこのクラスでやるって言うのは冗談ではなさそうだった。
小柄な男が「おめでとう」と、言った直後、
兵士の手によってバスの中に消火器みたいな器具から無色透明な霧を散布された。
ひどく事務的に。
和彦がそれを催眠系のガスだと認知したのは、まぶたが半分閉じ、体中の力が抜けきってしまう直前だった。
その目に最後に見たのは、白衣の男と兵士達。しっかりとガスマスクを被っていた。


そして、目がさめた時には”ここ”にいた。
窓のない部屋だ。
ドアがひとつ、部屋の隅にある。
教室か、なにか講習のようなことをするための部屋なのか、ひとつの机を中心にいすと机が弧を描き並んでいた。
中心の机の後ろにはホワイトボードも置いてある。
周りを見渡すと、まだ眠っている奴も数人いたがほとんどの奴らは起きていた。
みんなひどく困惑し、怯えていた。
ふいに、隣に眠っている比呂がむくっと起き出した。
まだ目はボーっとしているが、この部屋の空気は察知している様子だ。
部屋をぐるっと見渡して、目をこすった。
あくびをひとつ。
和彦が声をかける前に比呂が口を開いた。


「プログラムって言ってたか?」


――やけに冷静だな。


いつもは頼りない比呂だが、ことサバイバルゲームやちょっとしたトラブルの時には頼りになった。
比呂の度胸と言うか、ある種の集中力は異常な状況下で遺憾なく発揮される。
非常に特殊な能力だと和彦は知っていたし、比呂も自覚していた。
比呂の父親が良く言う


「状況がつかめない時は静かにしてろ。大切な情報を見落とすことになる。」


をまさに実践しているのだろう。


「俺にはそう聞こえた」


ややあって和彦は静かに答えた。


「まじか?」


比呂は確認を求める。


「知るか」


その通りだった。


――少なくても、軍がクラス単位で中学3年生を拉致したんだ、普通じゃない。


それだけはわかっていた。
覚悟を決めた。
たとえこれが最悪の状況でも、俺には相棒がいる。
これが史上最低最悪の糞ゲーム、プログラムだったとしても、俺は一人じゃない。
和彦は比呂の目をまっすぐに見て、言った。


「頼むぜ、相棒。」


比呂は


「こちらこそ」


と、皮肉っぽく言った。


部屋のドアが開き、あの男が入ってきた。
わきにはさっきの二人の兵士。
事務的な手つきで黒のマーカーのキャップをはずしながら、ホワイトボードの前に立った。
何も言わず比呂達に背を向けると、”坂本龍一”と書いた。


「私の名前です。教授と呼んでいただいても結構です。」


その直後、またもや銃声。
今度は天井に向かってUZI(ウージー)を撃った。






ぱぱぱぱぱぱぱ!





一瞬にして、まだ眠っていた奴らも飛び起きた。
最低な目覚し時計だ。


「えー、改めておめでとう。」


白衣の男−”坂本龍一”は静かに言った。


「コンピューターによる抽選で、君達37名はプログラム対象クラスに選ばれました。」


夢でも冗談でもなかった。


―― 俺達草加南中3年3組はあの、史上最低な糞ゲーム「プログラム」に招待されたのだ。


悲鳴に似たどよめきが起こり、三度UZIが火を吹いた。また、静寂が戻る。


「もう一度言っておきます。
これから、プログラムの詳しい詳しい説明を君達にするわけですが、
私語や勝手に動いた者は躊躇なく射殺し・・・」


坂本龍一教授は言い終わる前に銃を抜き、引き金を引いた。
















パンッ!


乾いた音がした。
その弾丸は増田洋子(女子11番)に話し掛けようとした、山崎冴子(女子16番)に額に風穴を開けた。
悲鳴が上がる。
また銃声。





パンッ!!


今度は、高梨英典(男子10番)の右肩を撃ちぬいた。


「声をあげるな!かってにうごくな!」


さっきまでが嘘のようにヒステリックに教授は叫んだ。
高梨英典は肩を左手で押さえ、激痛に顔をこわばらせながらぺたんといすに座った。
山崎冴子が打たれた事とその銃声に驚き、思わず立ち上がってしまったのだろう。
血はそれほど出てはいない、致命傷ではなかった。
比呂も和彦も、そしてクラス全員がもう声をあげなかった。
この状況がうまく呑みこめなかった。


―― あまりにも唐突過ぎる・・・。


山崎冴子は目を見開き天井を見つめていた。
いや、正確に言えば見つめていたわけではない。
ただ山崎冴子の・・・見開いた目の方向に天井があるだけだった。
山崎冴子がもう死んでいることは、少し離れた比呂の席から見てもわかった。
呼吸を整え、教授は続けた。


「いいですか?脅しではありません。しゃべるな、動くな。」


部屋は静まり返った。自分の呼吸さえもうるさく感じるほど。


「これから、プログラムの説明をします。」


教授はそう言うと、背を向けホワイトボードに”プログラム”と書いた。








「簡単に言うと君達にはこれから、
殺し合いをしてもらいます。」










[残り36名]





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