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誰も何も言わなかった。
いや、誰もしゃべることなどできなかった。
今の状況を理解している者が、いったいこのクラスに何人いるだろう。
山崎冴子は撃たれ、そして死んだ。
高無も傷を負っている。


―― そして、俺達はこれから殺し合いをする・・・。
馬鹿馬鹿しい!そんな事をやる人間がこのクラスにいるとは思わなかった。
いや、そう思いたかった。


「は、はい!、質問ですっっ」


ひどく裏返った、恐怖に引きつる声が部屋の静寂を破った。
みんないっせいにその声の方向に目を向ける。
手を上げ、へっぴり腰のままおずおずと立ち上がったのは、松島 弘(男子17番)だ。
クラスでもあまり目立たない、アニメとゲーム愛する臆病な男。
いわゆるオタクだ。


「あ、あの・・・・! 優勝すれば、っい 家に帰れるんですかっ?!!」


優勝・・・。
つまり最後の生存者は?
と言う意味だ。
比呂はギョッとした。


―― まさか、家に帰れるなら優勝目指してがんばります!ってことか?
おまえは俺達クラスメイトを殺してやるって事か?


「そうです。ただ一人だけです。」


松島の目は焦点があってない。
口をパクパクさせて、何回もうなずきぺたんと座った。
クラス中の避難の視線を投げかけられ、それでも席に座った今も頷いている。


―― こいつはやる気だ。

 

比呂はそう判断した。


「みなさん、松島君はやる気になってるみたいですよ?」


意地悪く教授は言った。


「はい、ほかに質問は?」


「はーい!」


能天気なその声は、丸木一裕(男子13番)だ。
独特の甘ったるい声と、幼いしゃべり方とは裏腹に相当頭はきれる男。


「このゲームはー?いつまで続くんですかー?みんな死ななかったら、ず−っとやるのぉ?」


ふざけているのかこういうしゃべり方しかできないのか、丸木はいつもの調子でそういった。


「制限時間と言う意味ですね?」


教授は聞き返した。


「そーでース。」

丸木の、そのクラス1、いや学年1のハンサムな顔はにはうっすらと笑みすら浮かんでいた。
恐怖や困惑といったものは微塵もないようだった。
この緊張した部屋に不釣合いな表情だ。


「いい質問です。制限時間はもちろんあります。」


比呂はそんなことすでにわかっていた。
エリアが限られていて、そのエリアは禁止エリアとして2時間ごとに増殖していく。
そして一度禁止エリアに指定されたエリアは2度と復活しない。
エリアは100個、時間は2時間。
そしてこの本部?のある場所はすぐ禁止エリアに入る
から、198時間後にはすべてのエリアが禁止エリアになる。


しかし、比呂の考えは少々甘かった。


「このゲームは殺し合いなので、24時間中に一人も死なない場合はすべての首輪、
あーこれはガダルカナル30号って名前ですけど、これはすべて爆発します。
それと、気づいてる人もいると思いますけど、会場の全部が禁止エリアになったらこれもまぁ全部爆発です。」


―― なんだって?!
24時間中に一人も死ななかったら?!


比呂は驚愕した。
この糞ゲームを抜け出すことを計画するための時間の猶予は198時間と信じていたのだ。


教授は続けた。


「それから、禁止エリアも2時間で一個とは限りません。
みんなの元気がなければ15分に2個増やしたりもしますよ。」


にやりと笑った。
教授が初めて見せた表情だ。
比呂の、予想は大きく外れた。


「わかりましたか?」


「はーい!」


丸木は満足したように席に座った。
続いて、席を立ったのは斉藤知子(女子6番)だ。
クラスではいつも活発で、元気のいい親分肌の女の子。
それほどというか、かわいい女の子ではないけれど、男子にも女子にも好かれるいわゆる人気者だ。


「これは、・・・・本当にプログラムなんてやるんですか?」


少しヒステリックに言った。


「そうです。だからみんなにはここに集まってもらったんです。」


教授はそう答えると更に続けた。


「あ、男子のほうが有利だろうと、そういうことですか?
なら、安心してください。
これから武器の入ったデイパックを渡します。
ほかに水と食料と地図とコンパスが入ってます。
武器はそれぞれ違います。
銃もあればナイフもあります。
誰に何を配るのかは決めてません、不確定要素としてランダムに配ります。
だから女の子でも、十分に戦える武器を手にすれば優勝は夢ではありません。
現に今までの統計だと、女生徒の優勝確立は男子を上回っております。
だから、斉藤さんもがんばってください。」


彼女の質問趣旨は少し違っていた。
そんな答えは求めてなかった。
坂本教授がドッキリカメラの看板を出して、


「大成功!」


といってくれるのを待っていたのだ。
しかし、そんなものどこにもなかったし、これからプログラムを開始するのは間違いなかった。
現に山崎冴子はすでに撃ち殺されているのだ。

「あ・・・」

斉藤は力なく座った。
うつむいて涙を流していた。


「では、そろそろはじめます。
出席番号順に呼ぼうと思いますが・・・
あ、その前に、携帯電話やその他の施設の水と電気は止めてあります。
それからこの会場は金網で囲まれていますが、金網の外側は禁止エリアになってます。
注意してください。
金網に近づくのも危険ですよ。」


もう止められないのだ。
比呂はそう感じていた。
満足に動くことすら出きないこの状況で、この最悪なブリーフィングをひっくり返すことは不可能だった。


「それでは、順番に出発してもらいます。
・・・・・今日は6月12日だから・・・・男子12番。
高橋光也君から。」







戦闘開始。






[残り36人]


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