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慶の目に、戸惑いや恐怖は感じられなかった。
裕也の思考にも、恐怖はなかった。
疑問符以外には何も無い。
突如響いた金属音を交えた爆発音。
それが首輪の誤爆だと信じた。
瞬間。
撃たれる。
慶は、冷静な表情を崩してない。
それが意味する事は、首輪の爆発が意図的なものだったということ。

何故?
爆発させたの?

何故?
圭介を殺したの?

何故?
首輪をはずそうとしたの?

何故?
僕を撃ったの?

何故?
慶は平気な顔してるの?

裕也は口をぱくぱくと動かす。
アタマに浮かんだ疑問符つきの言葉が声にならずに宙に浮かぶ。
のどが締め付けられている。
それは、突きつけられた銃口と、慶の口に押し当てられた人差し指のせいだろう。

慶はゆっくりと立ち上がる。
照準を合わせたまま、首だけを圭介の体へ向ける。
そして、その死を確認するように”ふん”と軽く鼻を鳴らす。
どこか、自嘲的な響きがあるように見えた。

さて、と言葉にしたかのようなはっきりとした表情で裕也に向き直る。
しばし、そのまま見詰め合う。












沈黙を破ったのは慶のほうだった。



「言い訳をさせてもらえないかな?」


はっきりとそう言う。
その口調は堂々として、まるで揺らぎのない自信に満ちていた。
なおも裕也は、口をぱくぱくと動かす。
声を出す事が、喉を使い言葉を音にすることがうまく出来ないままだった。


慶は照準を合わせたままゆっくりと、腰を抜かした裕也に近づく。


「その前に説明をした方がいいかな?」


非現実的な光景と、その堂々とした態度が対照的なコントラスト。
あくまでも、平静を保つその姿は神々しくさえ見えた。


「いや、質問形式にしようか。その方が理解しやすいだろ?」


優しく響くその声は不気味なニュアンスが含まれている。
裕也はその提案で口火を切ったようにまくし立てた。


「なんでっ?何で殺したっっ!慶がみんなで逃げようって・・・首輪はずそうっていったんだろっ!?」


慶はそれを聞き、うなずく。


「そうだよ。」


「じゃぁ、なんでっ?! なんで殺した?! 無理はしないと言っただろうっ?!」


裕也は勢いに任せて立ち上がり、慶に詰め寄ろうとする。
しかし、それを慶は銃口だけで制止する。
動いたら撃つ、と暗に語るように銃口をちらつかせる。


「無理はしたな。それは事実だ。殺したのも事実だ。」


「この野郎・・・。」


裕也は立ち上がった位置で拳を硬く握る。




「だけど、”首輪をはずして逃げよう”といった覚えは無い。
”首輪を外す”とは言った。後は勝手にしろと言ったつもりだけど?」


「裏切り者・・・。」


「裕也に言われたくないね。一度だって協力的でなかったのにな。」


「それは・・・そうだけど・・・でも! 俺は裏切ったりはしてないっ!! 
はじめから俺たちを殺すつもりだったのかっ?!! 殺すつもりでみんなを集めたのか?!」


「違うよ。」


「な・・・今更何を・・・。」


「はじめから殺すつもりなら、最初の時点で殺してるよ。あの時俺の武器はボウガンだ。
音を立てずに撃てる。びびって足の震えてるバカ二人殺したってリスクは限りなくゼロに近い。」


「バ・・・バカだと? そんな風に思ってたのか・・・?」


「論点がずれてるよ?」


「この・・・糞やろう・・・」


「首輪がはずれれば逃げる事も何でもできる。俺はこのゲームに乗る気はなかった。だから、外す手段を考え、それを実行した。」


「でも・・・圭介を殺した。外せないのならまた他のことを考えればよかったのに・・・。」


「・・・あのな、あの首輪の構造を簡単に教えてやるよ。
ユニットを囲うようにリード線が引っ張ってあった。
切れば即爆発のトラップ。解体防止策だろう。
ユニット本体を解体することは不可能。
水を流してショートさせることも不可能。
少なくとも今の装備ではね。首輪を外すにはリードを切らなきゃいけない。
それか、首を切るか。そのどちらかだ。
もし、あのままで放置したとしても危険性は遠のかないよ。
圭介の首輪はあの時既に、細い銅線一本だけで首に巻きついてた。
当然、何かの拍子で首輪に荷重がかかれば即切れて、爆発。もし近くに誰かがいたら巻き添えだ。
危険。そうだろ? 
そこで賭けに出たんだ。みんなの為だよ。
危険な爆弾をいつまでもぶら下げてるわけにはいかない。」


「なに・・・言ってんだ?」


「タイムラグ。銅線を切った瞬間に爆発しないのなら、その瞬間に遠くに飛ばせばいい。
要は首に巻きついた状態で爆発させなきゃいいんだからな。
銅線を切って、すぐ爆弾そのものを弾き飛ばせば、致命傷を避けられる。
爆薬の量は推して知るべし。
1mくらいの距離で充分危険な範囲からは脱する。
・・・ま、結果は見てのとおりタイムラグなんて微塵もなかったな。
よくできた爆弾だよ。ほんとに。」


「命を掛けて試すことか?・・・」


「犠牲。ッて言葉知ってるか?」


「みんなを助けるんじゃなかったのかよっ・・・」


「俺は一度もそんなこといってないぞ? 俺は首輪をはずすから協力してくれといったんだ。一番大事なのは俺の命だよ。」


「・・・。」


「さ、言い訳はこんなところでいいかな? 裕也、首輪を見せろよ。次の方法を考えよう。」


「お前・・・何言ってるのかわかってるのか?」


「わかってるよ。首輪をはずすんだ。協力してくれ。」


「ふ・・・ふざけんなっ。誰が協力するかっ。」


「じゃ、死ね。」



































パァンッ。















[残り32人]

 

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