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「なんでもいい、話しよ? あ、そだ。あれ覚えてる? 遊園地。」
―――遊園地。
初めて二人で出かけた場所。
「覚えてるよ。前楽園だろ? 」
「うん。まだ付き合ってから半月くらいだったよね。」
「そうだったな。」
「慶、寝坊してきた。―――あ、ごめん、慶って呼んじゃった・・・。」
「あ・・・。別に構わないよ。好きに呼んでくれ。」
「うん・・・。ありがと。」
「あの時は、ちょうど前の日の練習がキツかったんだよ。」
「うん。あの日もそう言ってた。で、あたしがヤキモチ妬いて―――」
「一人で観覧車に乗ったんだよな? 」
「うん。で、すぐ後悔したんだけど・・・15分しないと下に戻らないから、その間に一生懸命ごめんなさいの練習してた。」
「ああ。」
「そしたら慶いなかったんだよね? 」
「ああ。」
「あたしの次のゴンドラに乗って、追いかけてくれたんだよね・・・。」
「ああ。」
「あの時、すごく嬉しかった。”バカじゃないの?”とか言っちゃったけど。」
「死ぬほど恥ずかしかったよ。」
「へへ・・・。ありがとね。ホントはすごく嬉しかった・・・。すごく、すごく嬉しかった・・・。」
「・・・。」
「あと、クリスマス・・・。慶・・・合宿いっちゃうんだもんっ。」
「あれは・・・しょうが―――いや、ごめん。」
「ううん、しょうがないよ。練習だもん。でも、電話してくれた・・・。夜中に抜け出して。」
「夜中にかけておまえのお母さんに説教されたけどな。」
「うん、あのときもちゃんとお礼いってなかったよね。ありがと。」
「うん・・・。」
「一杯思い出あるよ・・・ね? 」
「ああ。」
「ねぇ・・・。一つだけ聞いて良い? 」
「何だ? 」
「あ―――やっぱ、やめた。」
「何だよ? 」
「ごめん、なんでもない。忘れて? 」
「・・・。」
「慶・・・。」
「何? 」
「あたしさ・・・前言った事あるよね? 」
「慶の嘘ついてる時の癖、知ってるって。」
「・・・。」
「慶、嘘つくとき必ず、手、組むんだよね・・・。」
「っ・・・。」
「慶・・・。」
「・・・。」
「あたしを殺してもいいよ? 」
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