第10話 永遠
形あるものは壊れる、とよく耳にする。 この世に永遠なものなどありはしないのはよくわかっているつもりだ。 しかし大切な思い出があればあるほど、壊れるはずがない、壊れて欲しくない、と考えてしまうのもまた真実である。 このままずっと、永遠に、そのままでいて欲しい。 それが大切な人、大切なもの、大切な場所へ抱く願いであるだろう。
6話で少し触れたと思うが、僕らの青春時代の憩いの場、珈琲店@O村実家がこの度、閉店することになった。 なくなるはずがない、そう考えていたもの・・いや、場所の一つである。 それを聞いたときのショックは大きかった。 O村づてに聞いたのだが、どうせいつものガセネタだろうと思い、 「は?何言ってるん?(苦笑)」 と、返してしまったが、本当のことであった。 こういう時に混乱してしまうので、今後ガセネタは控えるように>O村 真実だとわかったとき、自分の半身がもがれてしまったような気がした。 ・・・言い過ぎた。 しかし、4分の1ぐらいはなくなったと思う。
最近、引っ越したせいで遠くなってしまい、最後に行ったのはもう去年のことであると思う。 こんなことになるのなら、もっと行っていればよかった、と、後悔先に立たずを実践している。 まぁ、先に立ったら後悔とは言わないだろう。 先悔?そんな日本語は聞いたことがない。 途中でだったら中悔だろうか? おもわずそんなわけのわからないことまで考えてしまう。 悲しいことこの上ない。 これでは、O村の双子の妹に会いに行く口実がなくなってしまう。 困ったことだ。 別に双子の妹に会いに行っていたわけではないのだが。
正直な話、実家に帰るよりも自分の部屋に帰るよりも、言うまでもないが会社にいるときよりも、僕に安息を与えてくれていたのに。 ある意味、実家よりも実家らしい、そんな場所だった。 なんせ、僕の実家はくつろぐのが困難であるし。 むしろ迫害されることは決定している。 実家では下僕としての地位を確立しているのだから。 もしも僕がM男だったらいい場所なんだろうが、残念ながらS男なのであれほど苦痛を感じる場所以外のなにものでもないというような恐ろしい場所となっている。 ある意味ベストプレイスだ。 いや、むしろワーストプレイスの方が正しいかもしれない。 別に僕の実家の話はどうでもいいのだが。 話を戻す。 実家よりも実家らしい、自宅よりも自宅らしい、あの場所を失って苦しいのは僕だけではないのはわかっている。 僕の悲しみの度合いなど、いつも顔を合わせていた常連の方々、また、O村一家の悲しみの比ではないだろう。 近所のド○ールはライバル店が減って喜ぶかもしれないが。 喜んでんじゃねーよ。むかつくなぁ、ドトー○。つぶれてしまえ。 と、一人で想像をはりめぐらせても何も変わらないことはわかっているし、別に○トールが悪いわけではないのはわかってるし、むなしくなるだけなのもわかっているのでこの辺りでやめておこうと思う。
壊れないものなどありはしない。 先にも書いたが重々承知している。 いずれはなくなる。 それもわかっている。 しかし無くなってしまったとしても残るものもある。 僕らの憩いの場として。 懐かしい思い出として。 戻りたい場所として。 それは、いわば、そう、永遠に・・・。 と、今回もクサイ言葉でしめくくる。
|