第13話 プライド
人はプライドをもって仕事をするべきである。 例えそれがどんな内容のものであっても、誇りを持つ事ができる仕事なのであれば、それはきっと自分の将来に役に立つだろう。 逆に誇りを持つ事が出来ないのであれば、その仕事はきっとあなたに向いていない。 すぐにでも別の仕事を探すべきだ。
先日、26の誕生日を迎えた僕は、現在の会社で5社目になる。 只今入社3年目。 11月に入ったので、入社時は四捨五入すればハタチになる頃であった。 今では四捨五入してしまうと三十路になるので、その歳勘定はなるべくしない事にしている。 ちなみに腹は30代後半ぐらいだ。 顏や手足が細いせいで、見事に着やせする。 気づいていない人にバレる前に痩せようと思う。
今の会社は、一口でいうと「マルチメディアコンテンツの制作会社」になるそうだ。 今の僕の職種は、一口で言うと「プロデューサー」になるそうだ。 普通の人には、こんな横文字だらけの仕事、何やってるんだかよくわからないであろうと思う。 実際、僕もよくわからない。 メインは、制作物件の管理になるそうだ。 まぁ要するに、スケジュール管理と金勘定と客との折衝がメインということらしい。 しかし、中小企業であるからして、雑用から実制作、果ては演出までをこなさねばならない。 なにがプロデューサーなのだろう。 まぁ、会社の事情もわからないわけではないので、一応頑張っているつもりである。 僕は要領がいい方なのでかなりの物件数をこなしているが、S田は要領が悪い方なので少ない物件数で結構大変そうだ。 最近は成長しつつあるようだが、自惚れるわけではないが、まだまだS田には負けないだろう。
そんな要領だけは人並み以上の僕だというのに、24時間以上労働もたまにあり、年俸制という名目で残業手当もつかず、そこらの同い年の人達よりも安い給料で働き、労働基準法って一体何ですか?と言わんばかりの働きっぷりだと思う。 「要領がいいのに、何故そんなに仕事をしているの?」 そんな疑問が聞こえてきそうだが、要領がいいためにキャパに余裕があるように見られ、E原さんや営業部長さんや制作取締役さんからザクザクと仕事をまわされるのだ。 「頼られている」と思えば気持ちもいいものだが、どちらかというと「使いやすいから」と思われているような気もする。 その証拠に給料は激安だ。 うちの近所の三平ストアよりも安いと思う。 なんせ、タイムサービスではあるが、カツ丼が150円だったりする。 赤札堂よりも安いのだが、あまりに店内が汚いので、僕自身は赤札堂に行きがちである。 かと言って、赤札がキレイかというとそうでもない。 ちなみに毛色は違うが、金額だけで例えるならばユニクロぐらいなのはS田である。
こんなに働きつつも三平並みの安さの給料なのに、何故辞めないのか? クライアントさんや外注さんからよく言われる。 気まぐれな人は一緒にやろうと誘ってくれたりする。 心がなびくこともありはするが、会社を辞めようとは考えなかった。 僕なりにプライドを持って仕事をしているからである。 自惚れなのかもしれないが、もし、今、僕が辞めたとすれば会社は間違い無く潰れるだろう。 たかだか40人前後しかいない小さな企業だというのに、毎月2000万以上の固定支払が発生しており、使途不明金(おそらく、社長のお小遣い@風俗費)もあり、外注への支払も遅れ気味であるというのに、それなのに仕事は山のように溢れている。 物件数をこなすことに関しては、おそらく会社一の能力であると思うので、同じ業務内容をS田やE原さん、東京リーガ○マインドを辞め去年入社したI井さんがこなせるかというと、おそらく難しいだろう。 こんな、たかだか26の平社員だが、会社を支えているという実感はある。
「実感」がなければ、仕事に対しプライドを持つことは難しいと思う。 会社を支えているという実感、新しい仕事を自分の力で受注したという実感、すばらしい制作物を作り上げたいう実感、舐めても汚くないぐらい便器を磨いたという実感・・・・・・・・。 人それぞれ、仕事それぞれの実感の感じ方があると思う。 「実感」は言い換えれば「達成感」のようなものかもしれない。 別に今の仕事では無くても、将来やりたい事に向かってでも構わない。 自分が、何かを成し得ているのだと、感じられるかどうかなのではないだろうか。 そこに誇りやプライドを持って仕事をできるかどうかは自分自身の精神の持ち方によって変わるとは思うが、根本的なことは間違ってはいないだろう。
こんな偉そうな事を書いている僕ではあるが、先にも書いた通り、今、うちの会社はかなりの危機的状況に追い込まれている。 本気で潰れそうだ。 僕自身のマインドも下がりつつあり、誇りを持ちつづけるに困難な状況である。 今の仕事は嫌いではない。 無論、今の会社もだ。 誇りを持って仕事をすることが、ある意味容易だった、うちの会社が今よりもイケイケだった、あの頃に戻りたい。
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