第14話 続・恋愛論
あなたに会うために僕はこの世に産まれてきたんだ。 こんなどこかからのパクリな台詞を自信たっぷりに言える人に畏敬の念を抱かざるを得ない今日この頃。 ありきたりではあるが、恋愛と言うものは難しい。 借金まみれの僕が車を買うよりもある意味難しいだろう。
第8話で書いた通り、僕は一つ年上のお姉さんにさっくりとふられてしまった。 傷ついた心を癒すべく色々な女性と関係を持ったりしたが、快方に向かうことはなくあれまくっていた時期だった。 ちなみに「性欲のおもむくまま」という語句はあえて伏せておく。 M崎がそんな僕を遊びに誘ってくれた。どうやら女の子が来るらしい。 その頃、半女性不信に陥っていたのだが、せっかく誘ってくれたM崎への義理もあるので、一緒に行く事にした。 さらに「性欲のおもむくまま」という語句はあえて伏せておく。 待ち合わせ場所にいたのは、その頃はもうすでに知り合いだったY崎と初対面だったその後輩のS織だった。 パッと見た感じ、ぶっちゃけた話ではあるが、S織は僕のタイプと違っていた。 かと言って、「好みの子じゃないから帰るわ」というような場の雰囲気を読めないわけではなかった当時の僕は、一応フレンドリーに話したりしていた。 クドイ様だが「性欲のおもむくままに」という語句はあえて伏せておく。
ダンパ(古)を開くために会場を探そう、というのがその日の目的だった。 現在S田も住んでいる足立区から、葛飾だかどこかに向かうバスに乗った。 バスの中で、あまり好みにはまらなかったため、地味にやる気が3になっていた僕は窓の外ばかりを見ていた。 おもむろに外の空気を吸いたくなり窓を開けようとしたとき、事件は起こった。
ぬるっ
そんな感触が僕の手をつたった。 油だ。 窓の開閉を滑らかにするため注していた油にほこりがついて、かなりの勢いの汚れとなり僕の手に付着した。 今でもそうだが、ハンカチやティッシュを持ち歩かない主義の僕は途方にくれた。 あちゃー。。。どうすっぺかなぁ。。。イスで拭うか。。。M崎の背中で拭うか。。。 そう考えてたその時、目の前にハンカチが差し出された。 渡してくれたのはS織だった。 「汚れちゃったの?これで拭きなよ。」 「え?でも油だし、洗っても落ちないからいいよ。」 「大丈夫。使っていいから。」 他愛の無い会話かもしれない。 さりげない行為かもしれない。 しかし、異性の優しさに飢えていたその頃の僕には衝撃だった。 衝撃の種類こそ違うが、小さい頃母親の運転する車に乗っていたとき「ブレーキってどっちだっけ?」と聞かれたこと並だった。 あまりタイプではなかったはずなのに、一転して気になりはじめていた。 やはり男の子は単純なのである。
しかし、基本的には好みのタイプではないため、あと一歩踏む出す勇気を持てずに、その日が終わりに近づいていった。 ダルいため、そろそろ帰宅しようかと考え、僕は北千住の駅から電車に乗ろうとした。 電車のドアが閉まる寸前、S織が予想だにしなかった行動に出た。 「ぢぃ。(とはその頃は呼ばれていないがとりあえず)さぁぁぁぁーんっっっっ!!またねぇぇぇぇーっっっっ!!」 。。。叫びやがった。。。。地下鉄のホームで。。。。。マンガじゃないんだから。。。。 周囲の人々の冷たい視線を一身に浴び、とりあえず小さく手を振り、ドアが閉まった後別の車両に移らざるを得なくなったが、この愉快さっぷりにハマってしまった。 後から聞いた話だと、別れ際に誰もがやられるお約束的イタズラ行為のようだったのだが。
その次に会った時、確かあれはオールナイトで映画を見に行ったときだった。 M崎がどうしても高田馬場の映画館でオールナイトでやっていた「超時空要塞マクロス(古&寒)」を見たいと駄々をこねたためだったと思う。 なぜにマクロス。。。。いや、いいんだけど。 とりあえず、その周りの雰囲気がかなり怪しげな場で2回目に会い、かなりムードもクソも無かったが、映画館の暗闇に乗じてちゅーをしたような気がする。 懸命な皆様であればおわかりいただけると思うので、伏せてある言葉の事はあえて何も言わないことにする。
そんなこんなでなんだか付き合うことになってしまった僕たちであったが、二月としない間に連絡をとらなくなった時期があった。 理由は特には無いのだが、おそらく推測するに好みのタイプではなかったからではないだろうか。 極悪非道な性格をしていたものだ。 いまとなっては反省するより他に見当たらない。 その間に色々僕にもあったのだがそれは別の機会に話すとして、風邪の噂でS織が他の男と付き合いそうだ、という話を聞いた。 昔の人は言いました。 「離れていく女はすべて美人」 おっしゃる通りでございます。 それから集中してS織と遊ぶようになり、2年ぐらい経った頃、またもやさっくりとふられる事になる。 これはそれなりにダメージが大きかった。 好みのタイプでも無いのに、というところが大ダメージとなった一つの要因であると思う。 でも、まぁ、その後も体の関係は何回かあったりしたのだが。
本当にタイプの相手、心より好きな人と付き合うのがベターなのかもしれないが、付き合って始めて愛情が芽生える場合もある。 タイプの相手ではなかったが、付き合っているうちにやはり好きになったし、ふられた瞬間は手放したく無いと思った。 クサイ台詞なのであまり吐きたくは無いのだが、「愛情は育むもの(若干用途違)」なのだ。 「好みのタイプじゃないから」と付き合うことを恐れて、白馬の王子様なりシンデレラなりを夢見ていては何も始まる事はないのである。 「人間、顏じゃないんだぞ。心だ心。」と言おうとしたが、顔も性格もダメダメな僕はどうすればいいのかわからなくなり、やや自傷ぎみになったところで今回の話を締めくくろうと思う。
余談ではあるが、連絡を取らない間によく遊んでいた、8つ年上のお姉さまはおキレイな方だった。 「離れていく女はすべて美人」の法則にほだされなければ、もうちょっと一緒にいれたかもしれないのに。 色々奢ってくれたし。 色々教えてくれたし。 一時の感情に惑わされるなよと、あの頃の僕に言ってやりたい。 。。。あの頃に戻りたい。
|