これまでのあらすじ
第3話 魅惑の声の主

人と会話をする時に、声によって与える印象というものは変わってくる。

僕は人より早く変声期がきたらしく、小学生の頃から今と似たような声だった。

ボーイソプラノではなく、大人の声だったので、他の子に比べればガラガラに聞こえる。

中学の頃にドラえもんにかけたニックネームをつけられたこともあった。

最初は嫌であったが、よくよく考えるとドラえもんは好きだからまぁいいやと思って納得した頃もあった。

そんな僕としては、かなり声に執着する部分が多い。

 

うちの部署の上司(E原さんと呼ぶ)は、かなり素敵な声をしている。

女の子はイチコロっぽい。あれは反則だと思う。

甘ーい声。

カラオケに一緒に行って、チャゲ&飛鳥の「ひとり咲き」なんか歌ってるのを聞いてしまったら大変なことになる。

「抱いて」と言いたくなるのを我慢したり、さかりのついたメス犬のように腰をすりつけてしまいそうになるのを必至にこらえたりもする。

嘘ですけどね。

ただ、声にコンプレックスのある僕としてはかなり羨ましい限りだ。

 

E原さんの特徴として、声のほかに外見もあげられる。

年齢不詳。

本当にわからない。

別に若作りしているとかいうわけではなく、服装とかも別に普通である。

うちの部署はスーツじゃなくても構わないので、私服を着ているだからだろうか。

まだ独身だからだろうか。

同じ歳ぐらいの、うちの取締役や営業部長と比べると本当にわからなくなる。

ひょっとしてショッカーにさらわれて改造人間になったんじゃないか、ってぐらいわからない。

改造人間であれば、あの魅惑のセクシーボイスも頷ける。

全然かわらない、と、昔からE原さんをよく知る人たちは言う。

この年齢不詳っぷりで、10歳近く離れた彼女をゲットしたのだろうか。

最近髭を伸ばしてる僕としては、ひょっとしたら僕のほうが老けて見えるのではないかという一抹の不安が脳裏を掠めることもある。

若作り、しようかな。

 

更に、イマイチ何を考えているのかがわからない。

いい人なのはわかる。

ごはんおごってくれたし。

給料あげてくれたし。

でもわからない。

感情をあまり表に出さないようだ。

いや、出しているのかもしれないが、僕の感情の表し方とは違う。

ちなみにS田はオーバーすぎるので、わかりやすい。

僕もE原さんも、体が弱いというところで若干親近感も覚える部分はあるが、わかりやすい性格をしていると誰にでも言われる僕とは対称の位置にいる人だ。

わからないひとには恐怖感を覚える。ミステリアスまっしぐらである。

ミステリアスな雰囲気の人がモテやすいという話を聞いたことがある。

だから、僕はモテないのかな、とも思うが、それ以前の問題だという事に今更気づき、やるせない怒りをどこにぶつければいいのかわからないので、とりあえずこんな性格に育てた親に文句を言いたいところである。

 

性格が形成される頃だと言われている、幼児期に戻ってミステリアスな男になるように育てて欲しい。

・・・戻れるものなら。


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