第5話 イニシャルS
知っている人は知っていると思うが、僕の名字はSから始まる。 大変不本意ながら、僕の周りのSというイニシャルにはおかしな奴が多い。 皆様ご存知のS田もそうである。 社内的にS田とキャラがかぶりがちなうちの社長、S谷社長もおかしいことこの上ない。
S田とS谷社長の共通点といえば、田舎が青森というところがあげられる。 頑固で意固地で自分のことばかり話したがって人の話を聞かなくて話が長くて・・・ とにかく似ている。キャラがかぶる。親子か生まれ変わりかというほどかぶる。 青森県民がみんなそういう性格なのかと錯覚してしまう。 今は亡き、僕の親父もそうだったし。 あ、生きてますけどね。どこで何やってるかはわかんないけど。 ・・・僕も青森に住んでいたことがあるらしいけど、それはあえて伏せておく。
しかもこのS谷社長、何をしゃべっているのかわからない。 冗談などではない、マジである。 どもりぎみであがり症のくせに客先に行きたがる。 お客さんの反応など気にせずに、自分の話したい事を話しつづける。 もごもごと延々と。 同席している僕らの苦痛もさることながら、わざわざ時間をとって応対してくれているお客さんもつらいことだろう。たまに波長が合う客もいるようで、そういう時の同席者は半分寝るらしい。 もし、このサイトをうちのお客さんが覗く機会があるとしたら、この場で謝っておきたいと思う。 そんなことは無いとは思うけど、一応。 本当にすみません。いつもご迷惑かけてます。見捨てないでくださいね。
さらにこのS谷社長、自分の生い立ちを、会社のホームページに載せている。 いや、別にいいんだけど。 あまりに面白く、これは僕としてもお勧めできるので、是非見ていただきたい。 あ・・・でも、会社バレるのやだなぁ。 一部抜粋して皆様にご提供します。 *************************以下抜粋*************************** 昭和22年7月9日、山形県米沢市生まれ。 5人兄弟。二人の姉と二人の兄がいる。 しかし、上の兄弟とは父親が違う。 母は何も言わずに死んだ。 僕も聞き出せなかった。あまり、いい思い出ではないらしい。 えっー。下駄屋。
栄養失調姉によると僕は何回も死にかけたらしい。栄養失調が原因。 ジャガイモだけしか食えなかったらしい。そのせいか今でもジャガイモが大好き。 右のひとさし指の爪が二つに割れて、もとに戻ることはない。一生、貧乏の刻印を押されたみたいである。 **************************ここまで************************** こんな調子で淡々と語られている。 そんな、自分の貧乏&不幸をそこまであけっぴろげに書かれても・・・・という感じだ。 ま、面白いからいいんですけどね。
そんなS谷社長に、この間質問をされた。 社長:「ちょっといいか?」 僕:「はい?なんでしょう?」 社長:「あのさ、スラッシュってなんだ?」 僕:「・・・は?」 社長:「ホームページのアドレスとかでな、スラッシュっていうだろう。あれは、この、点々のことだよな。」(手でコロンの形を示す) 僕:「え・・・いや、そ、それはコロンです・・・。スラッシュは斜め線・・・・だと思いますけど・・・。」 社長:「お・・そうか。ありがとう。」 ・・・・一見、おっさんならしょーがねぇなぁって会話に見えるかもしれない。 確かにS谷社長は50ぐらいなので、知らなくてもしょうがないかもしれない。 しかし、しかしである。 うちの会社は他社のHPなどを作成する業務というのも請け負っているのだ。 その会社の長たる人間が、「すらっしゅ」ごときわからなくてどーするって感じがする。 というよりはむしろ、一般的な常識として中学生でも、果ては小学生でも知っている単語のはずだ。 このおやじで本当に大丈夫なのか、信じていいのか、ついて行くのが不安になってしまう。 たのむぜ、社長・・・・。
加えてこのS谷社長、かなりの経費使いこみというのだろうか、自分の為に使う金が多い。 年収で僕の10倍ぐらいとってるくせに・・・。 たまにむかつくことがある。 こんな話がある。 社長がベンツで出かけると、必ず神保町で降りるそうだ。 運転手代わりに扱われている、営業の新人君(6月つらさに絶えかねて退社予定)の情報によると、理由として「テニスラケットを買いにいく」そうだ。 あのペースだと、ラケットは300本近く所有している事になるようだ。 どんな自宅なのだろう。かなり興味深い。
おまけにこのS谷社長、かなりの女好きである。 いや、むしろ風俗好きといったほうが正しいかもしれない。 社長が新しいPCを買ったので、総務の子がおさがりで元の社長PCをもらったらしい。 ネチケット違反といえばそうなのかもしれないが、メールの受信フォルダを覗いたところ、女の名前だらけだったそうだ。 しかも、デスクトップ上に女の名前のフォルダ何個かあり、その中にはその相手に向けたラブレターやらポエムやらがあったそうだ。 内容を読む限りでは、どうやら風俗店の女の子っぽかったそうだ。 「君は、体は開いても心までは開いてはくれない」 なーんて書いてあったそうだ。 思わず鼻で笑ってしまう。 一日PCに向かって何をしているのかと思えば、そんなことにせっせと時間を費やして。 おじーちゃんなんだから、オイタはもうやめなさい、と言いたくなる。
最近僕も多少なりとも知識がついてきたために、S谷社長のことを知ることが多くなった。 知りたくも無いのに。 昔は結構尊敬してた部分もあったのだが・・・・。 今となっては、あの頃が懐かしい。
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