† 第玖話 †
“椅子”と呼ばれたその性具は、まさしく椅子としか呼びようのないものであった。
一見すれば豪奢でアンティークな椅子だ。
流麗な彫刻の施された背もたれがある、安定感のある重厚な椅子。
だが、その座する部分からは、怒張した巨根が屹立している。
それは先ほどの性具よりも更に一回り大きかった。
この椅子に座らされ、こんな性具に犯されたら、きっとサンジの腹は破れてしまう。
そう思えるほどに、それは大きかった。
男達がそれを引っ張り出してきた時、オーナーは、
「いやはや。これはまたえげつのない物を出してきたな。」
と大笑いした。
男達はそれをゾロとサンジに────とりわけまだ正気を保っているゾロに見せ付けて、椅子の横についているスイッチを入れた。
モーター音がして、座席にとりつけられた性具がうねうねと動き出す。
蛇腹の幹が縮んだり伸びたりして、その動きは蛇がのたくっているかのように醜怪だ。
おまけに大きく張り出たカリの周りが更に膨らんだり閉じたりを繰り返す。
ずんぐりした先端は激しく上下して荒々しいピストン運動をしている。
ただ挿れられるだけでもサンジの内臓がどうなってしまうのか不安なほどの大きさだというのに、これは、更にサンジの中でこんなにも容赦のない動きをするのだ。
けれどサンジは、その椅子を目前にしても、ぼうっとした目のままだ。
床に寝そべったまま、口元にはうっすらと笑みすら浮かべている。
「……なぁ…、もぉキモチイイ事しねぇのかよ………、なぁ……?」
けだるそうな、微かにろれつの回らない口調で、幼な子が遊びをねだるように傍の男の袖口を掴んで引っ張っている。
幼児退行したジャンキーと大差ない。
ゾロはもはや、それを、どこか安堵して見ていた。
………そのまま壊れてしまえ、サンジ……。
壊れてしまえば、もう苦しまずにすむ。
もういい。
もう狂っていい。
もう充分だ。
男からの陵辱を強いられて、正気のまま矜持も誇りもずたずたにされていくくらいなら、狂ってしまった方がいい。
壊れてしまえ。
狂ってしまえ。
快楽の中で全て忘れてしまえ。
……きっとその方がサンジは幸せだ。
これをすべて耐えろなどと、…もうゾロには思えなかった。
─────願わくば……誰か─────……あの男を殺してやってくれ─────………
もういい。
もう、いいから。サンジ。
もう、………頑張らなくてもいい──────────
それは底知れない、喪失の絶望。
「これはな、ロロノア・ゾロ。商品を乗せてお客様にお見せするための椅子だ。」
オーナーが楽しそうに腰掛けていたソファから立ち上がって歩いてきて、ゾロに向かって言った。
「実際のオークションで使う贅沢品なのだよ? うちのお客様は上流階級の方々が多いのでね。お目も肥えていらっしゃるんだ。」
椅子を大切そうに撫でながら言う。
「だからこの椅子も、芸術品としても価値の高い逸品でね。材質はルブニール王室御用達の最高級の紫檀。表面には上質の黒漆を何回も塗って艶を出してある。ここの彫刻はグランドラインでも一流の彫刻師に特注で掘らせたもので、装飾は
その芸術品の座椅子部分からは、グロテスクな男根が屹立している。
奇怪に蠢くそれを、オーナーは満足そうに見ながら、スイッチを切って性具の動きを止めた。
芸術品の域にまであるものに、平然とこれほどまでの淫猥な仕掛けを施したこの男の趣味に、ゾロは吐き気を覚えた。
「アア…、この椅子の木肌の艶やかさ…なめらかさ。私のサンジはまさしくこれに座るのにふさわしい…。美しいお人形…。」
ピアノ弾きが椅子を舐めんばかりに撫でている。
男達に引っ立てられて、サンジが椅子の傍に連れてこられた。
オーナーの手が、サンジの顎を掴んでくいっと上を向かせる。
淫らに潤んで、正気を飛ばした、凄艶なサンジの顔。
「実にいい顔になってきたじゃないか、姫君。淫らで扇情的な、発情したメスの顔だ。」
オーナーが舌なめずりをした。
「“本番”では贅の限りを尽くして君を飾り立ててあげよう。麦わらにかどわかされたノースの貴族の息子という触れ込みはどうかね? 光沢のある薄いオーガンジー仕立ての総レースのドレスシャツから透ける君の肌は、きっとお客様方を虜にするだろう。」
サンジは何を言われてるのかよくわからないのか、とろんとした目を虚空に彷徨わせている。
「そして君は大勢の紳士淑女の前で淫らな舞いを披露するんだ。コレに乗せられて、ね…。」
男の一人が、椅子の巨大な性具に上からローションをたっぷりとふりかけている。
それから男達がサンジの体を椅子の上に抱え上げる。
性具の上に、サンジの尻があてがわれた。
「あ」
サンジが小さく身を竦ませる。
ぐぷ…、と、生々しい音がした。
サンジが目を見開く。
赤くひくつく後孔に、巨大な鎌首がめりこんでいく。
「あ、が…、かはっ…、ああっ!!??」
サンジの体が、ゆっくりとおぞましい性具を飲み込んでいく。
「う、あ、あああ、アアアアッッッ!」
抗おうと身じろぎしたサンジの体を男達が押さえつけ、尚も、サンジの体を“椅子”に座らせていく。
「きひゃああああああああッッッッッ!!!」
サンジが絶叫した。
だが抵抗は全て封じられて許されない。
小さな尻を、痛々しいほど太い性具が貫いている。
そのくせ、サンジの性器は腹に付かんばかりに反り返っているのだ。
「はひ、はひゃあ、アア、あ、あ、がっ…!!!」
慎ましやかに見えたくせに、淫らに咲いて貪欲に性具を飲み込んでいくサンジの後孔。
太い幹を半分ほど残して、不意に、ごつ、と侵入が止まった。
「あん? 底付きしたか?」
サンジの体を抱えあげていた男の一人が言うと、隣の男がげらげらと笑った。
「何言ってんだ。女のマンコじゃないんだぜ? 腸に“底”があるわけねぇだろうが。」
「それもそうだな。」
男達が一斉に笑い出す。
「回しながら挿れろ。未知の領域だぜぇ?」
「そーれ。」
有無を言わさず、男達がサンジの腰を回すようにして強引にグラインドさせ始めた。
「ヒイイイイッ!! きひいいいいッッッ!!!」
いっぱいに広がった後孔が、巨大な性具でこね回されて、ぐちゅりぐちゅりと音を立てる。
こね回されるたび、僅かな隙間からローションと腸液の混ざったものが滴り落ちた。
サンジはもう足の先まで痙攣させている。
だが男達は容赦なくサンジの体を更に性具に沈めようとサンジの体を動かす。
だしぬけに、ずぼっ、とサンジの体が沈んだ。
「ッが、───はッッッ─────ッッッッ!!!!!」
サンジの全身がびくっびくっと震える。
見れば、半分ほども残っていたはずの性具の幹は、根元までサンジの尻に埋まっていた。
「あ…ア…あう…あ……ああ……」
サンジの性器が、屹立したまま精液とも尿ともつかないものを漏らしている。
「また漏らしやがった。」
「イッたのか?」
「白目剥いてんなぁ。」
「チンコ孔ぱくぱくしてんぞ。」
男達がはやし立てた。
それから男達は、慣れた手つきで、正面から結合部分がよく見えるようにサンジの足を大きく開かせて、足首を椅子の手すりに固定した。
「んああっ…、や、あ、動かひゃないでぇぁ、ぁぁぁ、ああ…」
もともとそれは手すりではなく、足首を固定させるところなのだろう、専用の器具が付いていて、サンジの足は瞬く間に自力では閉じることが出来ないほど大きく開かされた固定された。
その様子を、オーナーが少し離れて満足そうに眺めている。
「ああ…いいね。やはり白い肌と金髪はこの椅子の紫檀によく映える。艶めかしくて婀娜っぽいのに実に品がいい。」
オーナーは矯めつ眇めつサンジを舐めまわすように検分して、何度も頷く。
サンジの両腕が後ろ手に回されて拘束された。
「けれど、華やかさが足りませんねぇ。どうでしょう…? 花でも活けてみては。」
ピアノ弾きがオーナーに造花のような物を手渡した。
赤い薔薇の造花。
薔薇には細長い管が付いている。
「君はまったく持って苛烈な男だよ。」
オーナーは笑いながらそれを受け取ると、サンジの勃起をつまんで、その管を尿道口に挿し始めた。
「あぅんっ…!」
もはやサンジはそこを犯されても苦痛はないらしい。
漏れた声は喘ぎと言っていいほどの甘さを含んでいた。
ずるずると管がサンジの性器に納まると、まるで性器の先から薔薇が咲いているようになった。
カテーテルになっていたのだろう、薔薇の中央からサンジの尿があふれ出す。
まるで朝露を湛えた花のように、その“薔薇”は艶めかしかった。
「これで、オークションに出す“商品”の出来上がり、だ。本番ではもっと飾り立ててあげるがね。」
「どれだけの値が付くか楽しみですねぇ…。」
「六千万は超えてもらわんとな。そうは思わないかね? ロロノア・ゾロ?」
にやにやとオーナーがゾロを振り返る。
だがゾロの顔にはもう、何一つ表情が浮かんでいなかった。
人間らしい感情をごっそりと削り取られたような能面で、こちらを見ている。
オーナーはすぐに視線をサンジに戻した。
「ではリハーサルといこうじゃないか。」
その手が、椅子のスイッチを入れる。
がうん、と音がして、椅子が動き始めた。
「いひゃああああああッッッ!!!!」
サンジが悲鳴を上げた。
「はひッッッ!!! はひイイイイイイッッッッッ!!!」
下から串刺しにされながら、サンジの体は痛々しくも淫らに踊る。
「やはああっっ!! とめろっ…!! とめてへぇ…ッッ!! 腹ん中ぐちゃぐゃになるうッッッ!!!」
サンジの中にすっかり埋没した性具は、外見からはまるで見えない。
だから傍目には、ただの椅子の上でよがり狂っている色情狂にすら見えた。
「やだああッッッ!!!」
「こいつのやだやだはちっとも真実味がねえな。」
「まったくだ。こんなもんに腹ん中かき回されてピンコ勃ちする奴ってちょっといねえぞ。」
言いながら、男の手が無造作にサンジの股間に咲いた薔薇を鷲掴みにした。
たらたらと尿をこぼし続けるそれを、いきなり引き抜き始める。
「ひゃうッッ!」
かと思いきや、そのまま激しくずぼずぼとピストンさせ始めた。
「きゃはあああっっっ!! ふひゃあああっ!!」
じゅぼっ、じゅぼっ、とカテーテルを抜き差しされ、尿道口が水音を立てる。
「ケツもチンコもズボズボやられて嬉しいか? お嬢ちゃん。」
「や…、やあ…、らめぇ…ッ、ちんぽバカんなっちまうぅぅぅっっ、やあああっ!」
カテーテルの先に咲いた薔薇から、たらたらと蜜液は零れ続ける。
「もうバカになっちまってるよ。」
へへへ、と誰ともなく男達が笑った。
「ガキみてぇなピンクのきれーなちんぽだったのになー?」
「カテ抜いてもションベン垂れ流しかなー、こりゃあ。」
耳元で口々に囃したてる。
「う…あああ…ああ…」
「まーだまだ。言っただろ。ここに指はいるまで拡張するってなー。」
「いや…だっ…、や…、うああ…っ!」
嫌だ、とサンジが泣きながら訴えても、サンジの性器は、まるでサンジ自身を裏切るかのように勃ちあがっている。
それが勃っているせいで、尿道を犯すのも容易だというのに。
尿道の中を薔薇のついたカテーテルで犯されている間も、“椅子”は間断なくサンジの腸を犯し続け、尻から聞くに耐えない湿った音を出している。
よく見れば、サンジの薄い腹は内側から異物に押し上げられ、不自然に隆起している。
隆起はぼこぼこと形を変え、腹の中でおぞましく蠢いているのがわかる。
時折、尻全体が機械的に振動したりしている。
そのたびにサンジは絶叫した。
「ひぐぅぅぅああああっ…あああっ…あああああああああッッッ!!!」
けれどどんなに身悶えても、その体は自由にはならない。
責め苦から逃れる方法はない。
いっそ失神してしまえば楽になれるのだろうが、皮肉にもサンジの強靭な精神と肉体は、苛烈な快楽責めにも意識を手放すことなく耐え抜いていた。
「あーあ、ちんぽから何も出なくなったなあ。」
尿道を犯していた男が残念そうに言った。
「ミルクタンクもションベンタンクも空になっちまったか。もっと射精させたかったのに。」
「何にも出ねェのにちんぽ勃ちまくり。エロい体だな。」
屹立したままのサンジの性器を、誰かが乱暴にしごいた。
「ひいいいっ!!!」
サンジが髪を振り乱して乱れる。
「さわ、るなぁっ…! もう、も、イキ、たいっ…、イかせて…、止めてっ…!」
悲鳴の合間の切れ切れの懇願。
「あー、イかせてやりてぇけど、もうてめェの玉袋は空っぽなんだよ。」
「そうそう。残念だなあー?」
「でも大丈夫だよなー? お嬢ちゃんはケツマンコでイけるいい子だもんなー?」
「い、イけな、強、すぎてっ…、イけな、からぁっ…、止め…ぇぁぁぁっっ!!」
サンジは子供のように泣きじゃくっている。
泣きじゃくりながら、過ぎた快楽に喘いでいる。
「ケツに意識集中しろよ、お嬢ちゃん。」
「あんたのだーい好きな“奥”だぜー?」
「見ろよ、こんなとこまで入ってんだぞ。」
男の一人が、不規則に蠢くサンジの腹を撫でる。
「きもちいいだろー?」
「う…ううあああ…、ひゃうう…、んふぅっ、ひいいっ…!!」
「気持ちいいって言えよ、おら。」
「や、やああ…、あひっ…あひぃっ…!」
「言え。キモチイイ、だ。言え。」
「あうう…、キモチ、いいですぅっ…あああ…」
「どこが気持ちいい?」
「ああっ…、ケツが…ケツ、ぐちゃぐちゃにされてっ…きもちいいですっ…」
「ケツのどこらへんだよ。」
「おおお、奥、奥、奥がああああ、奥っ…、奥、きもちい…」
「ケツの奥がキモチいいのか?」
「きもちい、…っ、ケツの奥、きもちいいですっ…、きもちいいっ、あああっ、ケツのっ…奥が、おくっ…」
次第にサンジの声が常軌を逸してくる。
「来たな。」
男達が目配せをしてにやりと笑いあった。
「あああああっ、キモチいいっきもちいいよぉっ、奥、奥、ケツの中ぐちゃぐちゃで、きもひいいっ!! 奥があ…、奥、あああっもっと、もっとぐちゃぐちゃにして…いいっいいいいあああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッきいいいいいいいいいいいい!!!!」
白目を剥いて絶頂しながら、サンジは凄まじいオーガズムに全身を痙攣させた。
いきなり、ピーーーーーーーーーというエラー音が鳴り響く。
「な、なんだ?」
慌てる男達をオーナーが制して、素早く椅子のスイッチを切る。
「素晴らしいな。椅子が非常停止するほどの力で締め付けるとは。」
くっくっくっと笑う。
「すげ…。おい、見てみろよ。」
男の一人が後孔を指差す。
巨大な性具の入り口となっているそこからは、まるで女陰を犯しているかのような分泌液が止め処もなく溢れていた。
「腸液でまくり。すげーな。」
「女だな。まるで。」
「ケツからションベン漏らしてるみたいだな。ケツぶっ壊れたか?」
「おい、外せ。」
男達がサンジの拘束を解いていく。
サンジはついに失神したのかがっくりと脱力したままぴくりともしない。
ずるり、と後孔から性具が引き抜かれた。
「すっげぇ、びちゃびちゃだ。」
「潮でも吹いたみたいに濡れてんな。たまんねー。」
「裂けてはいないな。血も出てねェ。きれーなもんだ。」
「おら、見てみろよ、ロロノア!」
男達がサンジの体を抱えあげて、ゾロにサンジの尻を向けた。
ゾロは無表情のままだ。
だが、内心では狼狽に近いほど驚愕していた。
皺が伸び切ってぽっかりと穴をあけたサンジの後孔。
それは尚も物欲しそうにひくひくと淫らにひくついていた。
覗く内壁は、粘膜が充血して鮮やかな紅になっている。
そこからぬるぬると溢れている蜜液。
扇情的というにはあまりに鮮烈な、あまりに淫蕩な光景。
それはもはや排泄孔などでは到底なく。
男を迎え入れるための性器に成り果てていた。
2007/01/25
改定 2008/12/24
この話は、私・玉撫子薫の休筆により、連載がここで中断しておりました。
連載復活の目処がつかないため、その後のあらすじをつけることにいたしました。
あらすじでも構わないから結末までの展開が知りたい、という方は、このままNEXTをクリックして続きをご覧ください。
2012/06/29