「久遠に白き鮮血」のその後の展開
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ゾロサン逃亡の一報を受けて、一体ピアノ弾き以外の男達はどうなったのかと訝るオーナー。
しきりに電伝虫で各所に連絡を入れ、ようやく、レストランが“麦わら”に襲われていることを知る。
店の迎撃隊が麦わらとゾロサンを捕らえることを高みの見物するか、自分は安全なところに雲隠れすべきか、オーナーが逡巡していると、いきなり部屋のドアが外から蹴破られる。
そこに立っていたのはサンジ。
どうも敵から奪ったらしく、ちゃんと服を着ている。
完全に快楽に堕ちていたように見えたのに、目の前のサンジからは淫靡な余韻は全く感じ取れず、もはやそこに立っているのは、ふてぶてしい海賊以外の何者にも見えない。
あれだけ調教したのに、サンジの精神が正気を取り戻すことができたことにオーナーは感嘆し、ますますサンジへの執着を強め、それをあらわにしてくる。
それを一蹴し、オーナーに対して足を振り上げるサンジ。
だが、オーナーは、その紳士然とした柔らかな物腰の奥に、凄まじい戦闘力を秘めていて、サンジを圧倒してくる。
調子を取り戻したように見えて、散々内蔵を嬲られたサンジは、実は平素の蹴りの威力を発揮できないでいる。
徐々に追い詰められるサンジ。
「もう一度君を繋いであげよう。今度は遠慮などしない。徹底的に君を破壊してあげよう。」
オーナーの囁きに思わず身を竦ませるサンジ。
その隙をついてオーナーがサンジを拘束しようとした瞬間、斬撃が二人を割って入る。
「これでさっきの借りは返したぜ。」
言いながらゾロが近づいてくる。
その手には三本の刀。
店でルフィが暴れている隙に、チョッパーが刀を咥えてゾロを探して駆け回り、ちゃんと合流できたのだ。
ゾロの斬撃で致命傷を負い、もはやこれまで、と悟ったオーナーは、壁に隠されていたスイッチを押す。
不気味な地響きがする。
「何をした!?」とのゾロサンの問いに、オーナーは「レストランに仕掛けてある無数の爆弾のスイッチを入れた」と答える。
何かあったときのために、中にいる人間諸共、証拠の一つも残らず消去するための爆弾だという。
慌ててオーナーの部屋を飛び出すサンジ。
その後に続こうとしたゾロに、オーナーが話しかける。
ロロノア。
お前はこっち側の人間だろう?
あれを抱く側の人間だ。
そうだろう?
一瞬、動揺するゾロ。
オーナーはそれを見逃さない。
あれは魔物だよ。
化け物だ。
あんなのを仲間に入れていたら、いずれお前達に害を成すだろう。
だが、それを聞いたゾロは、オーナーの言葉を一笑に付す。
「あんたの目にはコックだけが化け物に見えてんのか?
そりゃ残念だ。
冥土の土産に教えてやろう。
麦わら海賊団の船にはな、化け物しか乗ってねェんだよ。
ありゃあ、性奴隷なんかじゃない。
ありゃ、ただの、コックだ。
あいつを語るなら一度でもあいつの飯を食ってからにしろ。
俺が一番美しいと思うあいつは、野郎にぶち込まれてアヘってる顔じゃねえ。
へらへら笑いながら仲間に飯作ってるときの顔だ。
あいつの飯を食ったこともねェ奴が、あいつを知った風に語るな。」
言い捨てて、ゾロは部屋を出ていく。
あちこちで爆発が起き、崩れ始めるレストラン。
麦わら海賊団は、右往左往しながら何とか合流し、命からがらレストランから脱出する。
レストランは完全に崩壊し、オーナーとピアノ弾き、あの男達がどうなったのかわからないまま、麦わら海賊団は船に乗り込み、出航する。
ゾロは全身に何発も銃弾を食らっていたため、船内で緊急手術となり大騒ぎになる。
ゾロとサンジは二人でいたはずなのに、ゾロだけが何発も撃たれていて、サンジが一見無傷なことを気に止めるクルーもいたが、いつものようにお祭り騒ぎになり、どうでもよくなる。
男部屋は寝相の悪い連中がいて危ないため、ゾロはラウンジに寝かされる。
もっとも、ゾロなので、銃弾摘出手術を受けたというのに意識もあり、元気。
むしろ、サンジの方が顔色が悪い。
クルー全員が就寝し、ラウンジがゾロとサンジだけになった時、ゾロがチョッパーを呼び止める。
コックを診察しろ、と言うゾロ。
激しく拒絶反応を示すサンジ。
だが、嗅覚の鋭いチョッパーは、既にレストランでサンジに再会したときから、においでサンジに何が起こったか、大体把握していた。
嫌がるサンジを、ゾロとチョッパーは無理やり押さえつけて診察する。
事件を詳しく話したがらないサンジに変わって、ゾロが、見たままをチョッパーに告げる。
チョッパーはサンジに感染症の可能性の説明をして、直腸を洗浄し、抗生剤の投与と飲み薬を処方する。
レイプの処置はそれでよかったが、サンジが乳首に打たれた薬物の事は、現物を見ないとよくわからない、というチョッパー。
恐らくホルモン剤の類だと思うが…、と言い、とりあえず様子を見ることになる。
しばらくはいつもどおりの航海が続く。
上陸しては事件を起こしたりしながら、船は進んでいく。
だが、サンジは、自分の身に異変を感じていた。
まず、通常のオナニーができなくなった。
ペニスを擦ることで射精に至る事ができない。
ペニスを刺激しているうちに、どうしても肛門への刺激が欲しくなり、それはサンジ自身の葛藤となった。
更に、薬物を投与された乳首が、以前よりも敏感になっていた。
服が擦れるだけで全身が痺れるほどの快感が走り、更に、乳首そのものも常に勃起していて、こころなしか肥大してきたような気すらする。
サンジは、乳首に絆創膏を貼ったり、さらしを巻いたりして、極力、乳首を刺激しないように務めたが、乳首を刺激したいという欲求は日に日に大きくなる。
更にはペニスへの刺激で射精できないため、ストレスはたまる一方。
欲求不満から苛々しがちになり、それはクルーにも伝わるようになる。
見かねたゾロが、サンジに注意をする。
だがサンジは、近づいてきたゾロの男の体臭を嗅いだ途端、ペニスが勃起してしまい、狼狽のあまりヒステリーを起こしてゾロを罵倒しまくる。
その異様な興奮状態に、クルーは唖然とする。
チョッパーがカウンセリングしようとするがサンジはそれを拒否。
弱めの精神安定剤を処方してもらう。
それも常用はダメだと言われて、サンジは男部屋に篭りがちになる。
そこへゾロがダンベルを取りに来る。
ゾロのにおいを嗅いだらまた勃起するかもしれない、と恐れたサンジはゾロを過剰に拒否しようとするが、ゾロはサンジが勃起していることに気がついてしまう。
あのレストランでの一件のせいか?と問うゾロに、サンジは思わず泣き崩れる。
一番弱みを見せたくない男が、一番事情を理解していることに、屈辱と安堵を覚え、号泣しながらゾロに「犯してほしい」と頼むサンジ。
サンジから出た言葉に、ゾロは内心驚愕していたが、顔には全く出さず、サンジを乱暴に引き寄せる。
優しく抱けば恐らくサンジは傷つくだろうから、これはゾロにとってもちょうどいい性欲処理で、サンジは何も気にする必要はないんだ、という態度で、ゾロはサンジの体に触れる。
だが、ゾロが理性を保てたのはそこまでで、サンジのぷっくりと隆起した乳首を見た瞬間に、ゾロの理性は音を立てて切れる。
乳首を乱暴につまみ上げ、歯を立てると、サンジはそれだけで悲鳴を上げて射精した。
ペニスを擦っても射精できない、と泣いていたのが嘘のように早い遂情だった。
だが、長い間射精できないことに悩んでいたのを示すとおり、吐き出された精液は白を通り越して黄味がかるほど濃く、どろどろとしており、ゾロは思わずそれを啜る。
肛門は指を入れただけで嬉しそうにひくひくと収斂を繰り返し、どこまでも柔らかく飲み込んでくる。
男達に散々拡張され、調教された後孔は、ゾロの人並み外れたサイズのペニスも難なく受け入れ、気がついたときにはゾロはサンジの体にすっかり溺れるようになっていた。
ゾロとサンジが体を繋ぐようになると、サンジの苛々は収まるようになった。
元の通りになったサンジに、クルーはほっとする。
クルーの中にはゾロとサンジが抱き合っていることに気づく者もいたが、それは個人のこと、と目をつぶった。
当初こそゾロに対してかたくなな態度を示していたサンジだったが、ゾロは全てを知っているのだからゾロには取り繕う必要がない、と開き直ってからは、積極的にゾロとのSEXを楽しむような仕草すら見せるようになり、すっかり元の明るさを取り戻す。
サンジの中では、夜はゾロとの性欲処理、昼間はいつもどおりケンカ仲間、と完全に割り切って区別がつけられており、体を繋ぐようになったからと言って、ゾロとの関係に目に見えた変化は現れなかったが、ゾロの方は、次第に口づけをしたがったり、事が終わってもサンジの体を抱きしめていたがったりするようになってくる。
次第にそれを鬱陶しく思うサンジ。
突っ込ませてやってるからって俺は女じゃねぇぞ。女と間違ってんじゃねェ、と言うサンジに、ゾロはついに、「女の替わりにしてるんじゃない。お前に惚れてるだけだ。」と告白する。
「何…つった、今。」
サンジが蒼褪めた顔をゾロに向けている。
「俺はてめェに惚れてる。」
「まじ…かよ。」
サンジは一瞬思い切り笑い飛ばそうとして、だができなかった。
ゾロの目が、どこまでも真剣だったからだ。
その目を見ながら、サンジは大きく息を吸って、吐く。
タバコが吸いたい、と切実に思った。
「…てめぇは…同情と愛情を勘違いしてんだよ。俺がクソ野郎どもにケツいわされてたから…」
「違う!」
「違う、同情じゃねぇ。俺は、本当に惚れてるんだ。てめぇに。」
「……………最悪だな。」
タバコが吸いたい。
何でタバコがないんだっけ。
ああそうだ。さっき最後の一本を吸っちまったんだった。
ちくしょう。ホテルに入る前に買っとくんだった。
「ゾロ。」
綺麗な光を放つ目を、できるだけ静かに見返す。
冷静さを、欠いてはダメだ。
「悪い。俺はてめェの気持ちにはこたえられねぇ。
てめェのことは大切な仲間だと思ってるし…男としてすげぇ奴だとも思ってる。
だけど俺は…、恋愛ってのはレディとするもんだと思ってる。
男同士で好きだの惚れてるだの…理解できねぇ。
そういう関係にてめェとなるつもりもない。
…こんだけ姦っておきながら、どの口が言うかって言われたらそれまでだが…、
正直なところ、俺は、今の自分を受け入れんのでいっぱいいっぱいで…てめぇの事まで考えられねぇ。」
一気に言うと、ゾロの目にはっきりと落胆の色が浮かんだ。
それを見たくなくて、サンジは目をそらし、ごまかすようにシャツを羽織ってベッドから降りた。
「どこ行く。」
「あァ? …先に、船、戻るわ、俺。」
「…泊まっていかないのか?」
「んー。てめぇは朝まで寝とけよ。金は払っていくからよ。…明日っからは…元の仲間に戻ろうぜ。この関係は終いだ。」
なるべくあっさりとそう言うと、ゾロが慌てたようにベッドから降りてこようとした。
「何でだ。てめぇは男無しじゃいられねェだろう。」
「…ひでぇいいぐさだな、それ…。」
サンジが苦笑する。口の聞き方に気をつけろと怒鳴る気力もわかなかった。
「あのなァ、ゾロ…。いくら俺でもそこまでひとでなしじゃねぇぞ。俺ンとっちゃお前と姦ってんのは、いわば緊急避難だ。
だけどてめェはそうじゃねぇんだろう? 俺に…その、本気で、惚れてくれてんだろう?
いくらなんでも本気で惚れてくれてる奴を、性欲処理には使えねぇ。
ンなひどいことは俺にはできねぇ。」
サンジの言葉に、ゾロが瞠目する。
「俺が…、俺が、それでもいいって言ったら?」
ゾロがそう言うと、サンジが顔を上げた。
その目には、諦念のような、慈愛のような、不思議な色が浮かんでいる。
「……………てめェの気持ちを知らねェんならいざしらず、知っちまってんのに俺はできねぇ。」
そう言って、力なく笑う。
「ゾロ。」
呼ぶ声は、ほとんど囁き声と言っていいほどひっそりとしていた。
「俺は、人の気持ちをないがしろにして、人に何かを強いる行為ほど卑怯なことはないと思ってる。
そういう事をする自分ではありたくないと思ってる。
男にケツ掘られて涎たらして喜んでるような…男として最低の奴だが・・・、人間として最低にはなりたくないと思う。
だから、てめぇとはもう姦れねぇ。
今までつき合わせて悪かった。…感謝してる。」
2012/07/03