『かさぶた。』

【5】

 

新しくトナカイを船医として仲間に迎え、GM号は大宴会となっていた。

 

サンジも、上機嫌のゾロに注がれるまま、杯を重ねていた。

サンジが酒を飲み干すと、すぐにゾロが酒を注ぎ足す。

気がつけば、サンジはしたたかに酔っ払っていた。

そしてお定まりの小競り合い。

 

「おい、クソコック。もっとつまみ持って来い。」

「おォ? てめェ! 俺をアゴで使おうとはいい度胸だ!」

 

しこたま酒を呑んで暴れまくれば、当然酔いは回る。

 

クルー達がそれぞれ、倒れるようにして部屋に引き上げ、サンジもラウンジに入ったところで力尽きた。

 

おかしな姿勢のまま、ラウンジの床とお友達になる。

冷たい床に、火照った頬を押し付ける。

 

「どーゆー寝方だ、そりゃ。」

ゾロが戸口に立って、倒れたサンジを見下ろしていた。

「うるせェ…ほっとけ…。」

億劫そうに、サンジが口を開く。

目を開けもしない。

ゾロが、そっとサンジの傍に膝をついた。

その手が、サンジの胸元にかかる。

「んあ…?」

「苦しいだろ。緩めてやるよ。」

サンジの首に巻かれたマフラーが、外される。

酔ったサンジは、なすがままにされている。

よく状況が飲み込めていないのかもしれない。

コートを開け、シャツのボタンを外す。

雪よりも尚白い、透き通るような肌が現れた。

その肌に包帯が巻かれているのを見て、ゾロの顔が歪んだ。

出血も酷かったんだ、と、トナカイの言葉を思い出した。

「冗談じゃねェ…。」

思わず呟き、その肌に指を滑らせた。

サンジがぼんやりと目を開いた。

「…な…に、すんだよ…?」

酔ったままの顔で、緩慢に抗う。

「人の怪我にはバカみたいに過敏なクセして、てめェが怪我してんじゃねェよ。」

ぼうっと開いたサンジの目が、思いもかけず色っぽくて、ゾロはどきりとしながら、それでも吐き捨てるように言うと、

「うるせェ…。」

と、可愛げのない答えが返ってきた。

答えは可愛げがないが、声には力がなく、浅い呼吸を繰り返している。

すぐに目も閉じてしまう。

相当に酔いは回ってるらしい。

「水……。」

サンジが目を閉じたまま、小さな声で言った。

即座にゾロは立ち上がり、コップに水を注いで戻ってくると、その水を自身の口に含み、そして、サンジの唇に自分のそれを寄せた。

口付け、水を流し込む。

「ん……。」

コックの唇が開き、舌先が、ゾロの唇を撫でる。

こくん、こくん、と水を嚥下する。

飲み足りないのか、もっと、と催促するように、サンジがゾロの唇をぺろりと舐めた。

その瞬間、ゾロの理性が、あっさりと崩れ落ちる。

コックの頭を押さえつけ、その唇を貪った。

舌を捻じ込み、コックの薄い舌を絡めとり、味わう。

酔いでよく分かっていないのだろう、サンジはそのキスに答えてきた。

ん… と、甘ったるい声が鼻から抜け、ゾロを狂わせる。

またサンジの目が開く。

「あ、れ…?」

ゾロの顔を見て、きょとんとした顔になる。

「俺…、何でゾロとちゅーしてんの…?」

アホそのものの顔で小首をかしげる。

もう凶暴に可愛らしい。

「ちゅーじゃねェ。水飲ませてやってんだ。」

まるで説明になっていない上に、ゾロの口から「ちゅー」等というまぬけ極まりない単語が飛び出したにもかかわらず、サンジは、そっかぁ、と納得している。

ゾロの指がサンジの胸元に滑り込み、包帯の間から覗く、薄いピンク色をした乳首を、摘まみ上げた。

「んぅっ…?」

びくり、と、サンジが身じろぎをした。

「ゾ、ロっ…? てめ、何、して…。」

さすがにサンジがはっきりとした抵抗の色を露にした。

というか、ここにきてようやっと自分のおかれている状況に気づいたらしい。

「何もしてねェ。傷の状態見てるだけだ。」

ゾロは気にもしない。

摘まんだ乳首を、指先で、揉み潰すように、こねる。

「…そ、んなとこ、怪我、してね…ぇっ…」

ゾロが、乳首を摘まむ指先に、力を込める。

「っふ、ぅ、…あァッ…!」

瞬間、サンジが漏らした声の甘さに、ゾロは目を見開いた。

 

────なんて声…出しやがる…

 

もっと声が聞きたくて、乳首を少し強めに引っ張ってみる。

「ふああッ…!」

びくびくとサンジの体が震えた。

「どうした? 傷が痛いのか?」

「ち、違…、傷、なんかっねェっ…!」

乳首に刺激を与えているだけだと言うのに、まるで女のように喘いで身をくねらせるコックに、ゾロの脳は、もう焼ききれそうだった。

わざと爪をたて、乳首を引っかいてみた。

「ッひ!」

サンジの躰がのけぞった。

「な、何し…! や、めろ…!」

「何もしてねェ。かさぶた引っかいてるだけだ。」

逃れられないように、サンジを自分の体の下に組み伏せる。

「そ、そこは、か…かさぶたじゃ… ああっ…!」

びくん、びくん、とサンジの体が何度も跳ねる。

たまらなかった。

かり、かり、と執拗に乳首を引っかく。

「あ、あ… んぅっ… ゾ、ロ、やめろって…!」

もうサンジの声はほとんど哀願に近かったが、ゾロは聞く耳持たず、もう片方の乳首にかぶりついた。

歯でくりゅくりゅと刺激して、強く、吸う。

「あ! …は…あっ……!」

サンジの声は、どこまでも甘い。

小さな乳首が、赤く色づいてすっかり固くなるまで、ゾロは愛撫をやめなかった。

「は…ぅ、あ… やめ…! なん、で…?」

ゾロの体の下で、サンジはじたばたともがくが、酔いのせいかまったく力が入っていない。

その瞳は、酒と快楽に蕩けはじめていた。

何度も何度もサンジの肌を強く吸い、その白い肌にいくつもの赤い痕が、まるで花びらを散らしたようについたのを見て、ゾロは、「うし。」と、満足げに体を起こした。

サンジの体から、すっかり力が抜けているのを見て、更ににやりと目を細める。

サンジが正気に返る前に、とっとと剥いてしまう事にした。

手早く、サンジのズボンのベルトを外し、ズボンのボタンも外し、ファスナーをおろした。

引っぺがすように、下着ごとズボンを取り払う。

ビクっとサンジの体が竦んだ。

髪よりも幾分濃い色の叢と、立ち上がりかけた性器が現れ、ゾロは、ごくりと生唾を呑んだ。

濃いピンク色をしたそれを、ゾロは躊躇わず口に含んだ。

「アアッ…!」

サンジの腹筋に力が入るのが分かった。

喉の奥まで咥え込んで、舐め回してやる。

「ぅんっ…! は…! ひあ…ゾロっ… んく…ぅ…!」

サンジが反応を返すたび、ゾロのペニスが、ズボンの中で暴発しそうになる。そこはもう、限界までパンパンに膨らんで、発射準備万端になっている。

「ふあぁッ… ゾ、ロっ… ゾロっ…!」

快感に濡れた、せつなげな声で、何度も何度もゾロの名を呼んでくる。

 

────エロすぎんだろ…おい…

 

サンジのペニスを根元までくわえ込みながら、ゾロは、サンジの膝を立たせ、足を大きく開かせて、その奥に触れた。

 

────くそっ…。ぶち込みてェ…。

 

けれど、指で触れたそこは、狭く、固く、とても男の性器を迎えられるとは思えない。

いったんサンジのペニスから口を放し、手で上下に扱きながら、ゾロは、サンジの後孔に舌を這わせた。

「て、めェ…! ふざけん…なっ… ああっ…!」

サンジの体の奥の奥を、舌で探る。

味わうように舐め回す。

「う…ん… ふ、あ… んんっ…。」

ちらりと目を上げると、サンジはいやいやをするように、首を何度も左右に振っていた。

そのたびに、癖のない金の髪がばさばさと乱れる。

綺麗だ、と思った。

アヌスをたっぷりの唾液でまみれさせると、ゾロはそこに指を挿し入れた。

サンジを緊張させないよう、再びペニスを咥え込む。

舐められているペニスからも、後孔に挿し込まれている指からも、ぐちぐちゅと卑猥このうえない音が途切れる事なく聞こえてくる。

「あ、ふ… ぅっ… あー…っ…」

そうっと、挿し入れる指を一本増やしてみる。

サンジの中は狭くて熱くて柔らかくて固くてぐにぐにしててひくひくしてる。

ゾロの舌がサンジのペニスのいいところを擦り上げるたび、後ろの孔も、きゅ、きゅ、とゾロの指を締め付けてくる。

眩暈がした。

たまんねェ。

鼻血が出そうだ。

エロコックだエロコックだと思っちゃいたが、こんなにもエロいとは思わなかった。

夢で見たコックの痴態なんて霞むほどのエロさだった。

「ゾロっ… く…ぅ…」

サンジの腰が快楽に揺らめく。

そんなサンジの痴態に煽られ、ゾロは舌と指で、サンジを追い上げていく。

「ふ、あ…っ…!」

サンジの体がのけぞったかと思うと、ゾロの口の中に熱い奔流が流れ込んできた。

微かにアルコール臭のするそれを、ゾロは、喉を鳴らして飲み込んだ。

サンジの体は、まだびくびくと痙攣している。

放心して彷徨う瞳が、壮絶な色香を放っている。

それを引き寄せ、だらりと伸びてしまったサンジの膝を、もう一度、立たせる。

さっきはペニスを舐めていたので、見る事の出来なかったアヌスを、じっくりと視姦する。

乳首とおんなじ薄ピンク色だな、と思いながら。

じっくりと堪能していると、不意に、

 

「なあ……。」

と、窺うような声がした。

 

見上げると、サンジが泣きそうな目でこちらを見ている。

泣かせたいわけではない。

ゾロはちょっと焦った。

 

「俺、何でおいしく頂かれようとしちゃってんだ…?」

 

情けない声でサンジが問うてきた。

問われて、初めてゾロは、そういえば自分の想いを何一つサンジに伝えていなかった事に気がついた。

 

「うまそうだったから。」

正直に答えると、サンジの顔が更に泣きそうになった。

子供がべそかいてるみたいな、顔。

「うまそうなら、てめェは誰でもこんな事すんのか…?」

何でそうなる、と思ったので、

 

「俺は性犯罪者か。」

と言った。

「性犯罪者だろーが。」

サンジが唇を噛んだ。

何でそんな顔するんだろうな。

そんな顔させたいわけじゃないのに。

「まぁ、てめェ限定なら性犯罪者になってもいい。」

「…なんで、俺限定なんだよ…。」

「惚れてるからだろ?」

 

その瞬間、サンジの顔が呆けた。

 

ややあって、頬が赤くなる。

「てめ、俺に、惚れてんの…?」

「惚れてもねェのに、男のちんこは舐めねェだろう。ふつー。なんぼ性犯罪者でも。」

いや、性犯罪者なら尚のこと舐めたりしねェぞ、いきなり突っ込むだろ。と、ちょっと的外れな事を呟いてみたりする。

「…惚れてんだったらさあ…。」

まだサンジは何か言おうとしている。

ゾロはもう、臨戦態勢のこれをサンジに突っ込みたいのに。

「いきなり押し倒す前に告るとこからするもんじゃねェ?」

「…男に告られて、そうですかってケツ出す奴はいねェと思ったから、とりあえずやっとこうかと。」

「……んだ、そりゃ。」

やっぱ性犯罪者じゃねェか、等とサンジはぶつぶつ呟いている。その目がはっと上を向いた。

「……もしかして、俺にばかすか酒注いでたのは…。」

「ああ、酔わせちまえばこっちのもんかと思って。」

長い長い沈黙の後、サンジは、はぁ〜っとため息をついた。

 

「……………お前……宇宙最大級の馬鹿だろ…。」

 

バカとか言うなって言ったろ、と、ゾロは憮然とした表情。

「そろそろ挿れてェんだが。」

正直に白状すると、サンジが笑った。

やっと見れた笑顔だった。

 

「初めてだから優しくしろ。このクソバカ。」

 

 


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