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ゾロは優しかった。
乳房に吸いついている金髪頭ごとナミを抱きすくめると、その唇に深く、口付けながら、ナミの体を押し倒す。
スカートと下着も、ゾロとサンジが二人がかりで脱がせた。
まるで女王様扱いだ。
ナミの両足を抱えあげながら、ゾロがその足にもキスを落とす。
巨大な剛直の頭でナミの秘裂を二、三度撫でてから、ゆっくりと、それは入ってきた。
「…っ… あ… あっ…」
ゾロも、自身の大きさがどれほどのものが熟知しているのだろう。
ゆっくり、慎重に、抜き差ししながら、少しずつナミの中に自身を埋め込んでいく。
「あ、…はぁっ… んん…っ」
それでも、ナミは凄まじい圧迫感に襲われていた。
「ひあ… あ、あっ… あぁ…っ」
思わず眉根を寄せたナミの耳元に、サンジが「ナミさん、痛い?」と、心配そうに囁いた。
たまらずに、ナミがサンジの首にしがみつく。
何かを抱きしめていないと、体がばらばらになりそうだった。
「あああっ…」
サンジが、ぎゅっと抱き返してくる。
「ナミさん…。」
優しい、掠れた声。
「ナミさん、ゆっくり息を吐いて…。」
「ん、んっ… ふ…ぅっ…」
息ってどうやって吐いたっけ。
そんな事が頭の隅を掠めるほど、うまく呼吸が出来なかった。
「ナミさん…。」
サンジがナミの頬にキスをする。
ナミの耳朶を優しく噛む。
「ナミさん、可愛い。」
出し抜けに囁かれ、ナミは目を見開いた。
思わず、ナミの体から力が抜けた。
その隙をついて、ゾロが一気に自身を埋め込む。
「ひああああんっ!」
ナミの背がのけぞる。
「サン…サンジく… ず、るい…っ!」
ゾロが律動を開始する。
「んあ… あん、あ、んふ… ァ、は…」
ナミの腕はまだサンジにしがみついたままだ。
こうしていると、ゾロとサンジ、どちらに抱かれているのが、一瞬分からなくなる。
サンジがまた、ナミの耳元に口を寄せた。
「どうして? ナミさんは可愛いよ。」
「や、やあっ…!」
普段の時にも惜しみなく注がれ、ナミが平然と受け流すそれらの言葉に、今のナミは乱された。
だって、こんな時に言うなんて。
ゾロに抱かれてる時に、サンジ君が言うなんて。
「可愛い、ナミさん。すごく可愛い。綺麗だ。」
サンジの言葉がくすぐったい。
どうしようもなく、恥ずかしい。
あたしを見ないで、と口走りそうになる。
それじゃまるっきり、さっきの、サンジ君だ。
そっか、こんなに…くすぐったいものだったんだ。
くくっ…と、ゾロが笑った。
「エロコックのエロトークもたまにゃ役に立つな。」
ぐりぐりと奥を刺激しながら言う。
「コックが囁くたんびに、中がヒクつくぜ。ナミ。」
このへん、というように、膣内のゾロが、ナミの弱いところを何度も何度も擦り上げる。
子供の悪戯のようなそんな動きにすら、ナミの体は敏感に反応した。
「いやあ…」
「すげぇぬるぬるだぜ。中。気持ちいいか?」
うわ。
快感と悪寒でナミの全身の毛穴がぶわっと開いた。
気持ちいいか、だって。
キモチイイか、だって。
言葉責めだよーっ!
ゾロがーっ!
「エロいなぁ、ナミ。」
エロいのはあんたよーっ!
どうしたの。
ゾロは一体どうしたの。
ナミの頭は軽くパニックに襲われていた。
あんた、あたしとする時そんな言葉吐いた事なかったじゃない。
そりゃ、最後まではイタサナカッタけど。
甘い言葉とか、エロい言葉とか、言った事なかったじゃない。
なんなのその変わりようは。
誰これ。
このゾロ、誰。
あたし、こんなゾロ知らない。
サンジくんの?
サンジくんのゾロ?
うわ。
あたし、いま、ぞろにだかれてる。
「ナミさん。」
耳元でサンジが笑う気配がした。
「ナミさん、なんか余計な事考えてるだろう。」
「あ… や… っだって、…ァ… だって…。あぅん…っ…」
サンジの手が、ナミの乳房に触れた。
「ナミさんは、何も考えなくていいんだよ。」
言いながら、きゅ、とナミの乳首を摘まむ。
「ひぅんっ!」
ナミの体が反るのと、ゾロが「おっ」と声を漏らすのが同時だった。
サンジの指が、尚も、ナミの乳房を揉んだり、乳首を摘み上げてはひねったりする。
「や、やっ…! サンジくん、やだ… おっぱいだめぇ…!」
普段の自分からは想像つかないほど、自分でも驚くような甘ったれた声が出て、ナミはギョッとした。
少し驚いたようにナミを見たサンジの目が、すぐに、実に嬉しそうに、笑んだ。
「…すげぇ可愛い…ナミさん…。」
ちゅ、とナミに軽いキスをする。
それは恋人同士が戯れに交わすキスのようで、ナミは思わず赤くなった。
この人はこんなに優しいのに。
こんなに、全身からあたしが「好き」だと聞こえてくるのに。
どうしてこの人の「愛してる」のはあたしじゃないんだろう。
どうしてあたしはこの人じゃなく他の男を愛してるんだろう。
「それイイな。続けろ、エロコック。」
ゾロが言った。
「あ?」
途端にサンジは剣呑な目をゾロに向ける。
「すげぇ締まる。すげぇイイ。ナミの乳揉んでろ、エロコック。」
抽迭を繰り返しながらのセリフのくせに、その声音はナミがむっとするほど平然と聞こえる。
意志の強さに舌を巻く。
「エロコックエロコックと、このクソエロ剣士が。」
じゃあ、ここならどうだー、と、サンジの指が、ゾロとナミが繋がっている方へと伸びた。
その指が、ナミの敏感な肉芽を捉える。
「ひぁっ!!!」
ナミの腰が浮いた。
うお、とさすがに驚いたらしいゾロが、慌ててナミの腰を引き寄せる。
そのせいで尚の事、ナミの背はのけぞった。
うっわ、めちゃくちゃ締まんぞ、おい。と、ゾロ。
みっともなくぶっ放しちまえ、早漏剣豪。とサンジ。
その間もゾロの律動はやまないし、サンジの指はナミの肉芽を弄んでいる。
「やだぁっ… や、あっ… ひ、人の躰、で、遊ばな、で…よぉっ…!」
「どうして? ナミさん、キモチイイでしょ?」
「いや、いやぁ… あっ… ふあ… あぁ、あ…」
「ほら、キモチイイ。」
サンジの指は器用だ。
ジャガイモ一つしかなくても、小麦粉しかなくても、サンジの指は魔法のようにそれらをおいしい料理に変身させて、クルーを喜ばせてくれる。
サンジの手の中で、ジャガイモがくるくると回りながら形を変えていくのを見るのは、実はナミの楽しみの一つだった。
今ナミは、自分がそのジャガイモになった気がする。
サンジの手の中でくるくる回らされて、翻弄されて、違うものに形を変えられてしまうような。
だけどそれは、心地いい変化だった。
魚人達に犯されていたときとは、雲泥の差の心地良さだった。
ナミの心を置き去りにせず、ナミの心を踏みにじらず、ナミの尊厳を傷つけず、サンジの愛撫は惜しみなくナミに注がれる。
不意に、ナミは戦慄した。
サンジは与える。
相手が望むものを望む限り与える。
汲めども尽きぬ泉のように、サンジは与え続ける。
誰にでも。
サンジが普段いっそ清々しいほどに粗末に扱う男達に対してさえ、サンジが“与えなかった”ということなど、ただの一度もない。
こんな恋人を持ったら、女はどんな思いだろう。
極上の幸せをくれる恋人。
だけど、それは、自分だけのものではないのだ。
それともサンジは、特定の恋人が出来たら、他には目もくれなくなるだろうか?
例えばナミの恋人になったら、ビビやロビンや、その他の女を賞賛する事はやめるだろうか?
たぶん、その答えは、否だ。
例え、ナミの恋人になったとしても、サンジはラブコックであることをやめたりしないだろう。
変わらずにビビにもロビンにも、その他の女性達にも、惜しみなく美辞麗句を降らせるだろう。
例えばナミという恋人がいたとして、もしビビがサンジに泣いて縋りついた時、きっとサンジはその手を拒めはしない。
ビビを慰め、抱いててやるに違いない。何時間でも。
他の女にも自分へのそれと変わらぬ愛を注ぐ恋人を、笑って許す女など、いやしない。
少なくとも、海賊船に乗り込もうなんて女達の中には、ただの一人も。
海賊になろうなんて女は、人一倍欲が深いから海賊になろうなどと思うのだ。
ナミなら当然耐えられない。
ナミなら、欲した男の心は自分だけのものにしたい。
その男の目が他の女を映す事すら許せそうにない。
ナミは自分が欲深い事をよく知っている。
世界中のポーネグリフを読み解こうというロビンだって相当に欲が深い。
ビビに至ってはその欲の深さは果てしがない。
なにしろビビの望みは何万ものアラバスタ国民全員の命だ。
あの激しい争いの中、ビビの願いは、誰も死ぬな、誰も傷つくな、であった。
そして今頃は、アラバスタ国民全員の幸せを願っているだろう。
欲の深くない女なんて、この世にいない。
この際だからナミは断言する。
自分を基準にして。
それでも、どんなことがあっても、サンジは万人に“与える”ことをやめたりしないだろう。
それはサンジのコックとしての根底を覆す事になるから。
ああ… そうか。
だから、ゾロなんだ。
ずっと、何故ゾロなのか、不思議だったのだけれど。
ゾロがサンジを選んだのは何となく、わかる。
サンジから与えられる事の心地良さを知ってしまったら、それを独占したいと思うのは、ごく自然な事だと思える。
ルフィですら、恐らく、色恋は抜きにして、サンジは自分のものだと思っているだろう。
まぁ、ルフィにかかれば、ゾロもウソップもチョッパーも、たぶんロビンも、そして、ナミも、自分のものだと言うのだろうけど。
だけど、これだけ女に対してメロメロなサンジが選んだのが、どうしてゾロなのか、ナミには長いこと腑に落ちなかったのだ。
だが。
それがサンジ自身の気質に起因するものだと考えれば説明はつく。
全ての女性に等しく愛を注ぐサンジにとって、女の恋人は、
際限なく与え続けるサンジから、際限なく奪い続ける事が出来て、しかも、サンジが女と見れば見境なしに愛を注ぐ事に耐えられる意志の強さを持っていて、なおかつ、しつこくサンジを愛し続けられる、男。
ゾロしかいないではないか。
おまけにサンジの渾身の蹴りでも死なないおまけつきだ。
ベストカップルじゃん。
と、ナミは喘ぎながら思った。
2004/02/26