シンスケは独房の中で、とても退屈な1週間をすごしていた。
(まったく、腹が立つ。いったい誰のおかげで勝てたと思ってんだ。1週間もこんなとこ入れやがって。ミサトさんも抗議くらいしてくれれば良いのに。ぼくが、もどってきても、罰として1週間メシ、ミサトさんの分だけ作らないぞ。シンジがミサトさんの分、作っても僕が食っちゃうからね。もちろん、ビールも全部捨ててやるぞ。)
「本当、シンジ君の作ってくれた、料理は、ほんと美味しいわよね。ありがたいわ。(ミサト)」
「いったい、今日の夕食当番は誰なんでしょ。(シンジ)」
「うっ」
「いったい、今日のゴミ当番は誰なんでしょ。」
「ううっ」
「いったい、昨日の洗濯当番は誰なんでしょ。」
「うううっ」
「仕方ないでしょ、シンちゃん。お姉さんこのごろ、忙しくてぇ、くたくたなの。」
「この前兄さんが、ミサトさんが部下に仕事押し付けるのを見たと証言してました。」
「ううううっ」
どうやら、ミサトは家事もまるでやっていないようだ。シンジも、この時ミサトをキビシ〜クしかる方法を考えていた。それからシンジはひとくまじめな顔になって、口を開いた。
「兄さんと言えば、なんであんなところ入れちゃたんですか。兄さんがいなければ、負けてましたよ。」
「・・・。まあ、気持ちはわかるけど、命令に従ってくれないと命令系統の混乱きたすから、いざと言うとき、困るのよ。ごめんね。そういうわけで、私達もシンちゃんとシンスケ君をあんなとこに入れたくないから、これからはちゃんと命令には従ってね。シンちゃんも、今回は許してあげるけど、今度からああいうときは上の指示にしたがってね、そうじゃないと独房入りになっちゃうわよ。」
(いざというときって、兄さんがああ言ってくれなきゃ、今ごろ僕は使徒に負けている。使徒に負けるってことは、人類滅亡ってことだろ。大人の事情はあるかもしれないけど、やっぱり兄さんを独房にいれるなんて間違ってるよ。)
シンジのNERVに対する不信感は、さらに高まりつつあるようだった。
相変わらず、暑い日が続く。セカンドインパクト以来、1年中夏になってしまった2015年である。シンスケは独房からやっと出て、今日から学校に登校を再開している。
(しかし、トイレにまで監視カメラしかけるとは、プライバシーはどうなっとるんだ。刑務所でもそこまでやらないんじゃないか?まったく罰受けなきゃ行けないのはNERVだろうよ。)
「おお、シンスケ久しぶりやな。(トウジ)」」
「ああ、NERVの訓練で俺だけしぼられてたからね。おはよう。」
(ああ、外の空気は新鮮だな。ん、綾波。あいかわらず、難しい本読んでるみたいだな。僕以上にコミュニケーションが下手だよな。まあ、あんな環境で育てば無理もないのかな。)
「おはよう、綾波。」
「・・・・・・。」
(・・・返事くらいしてくれよ、綾波。未来を変えるためには君もコミュニケーションうまくなって欲しいんだけどな。)
「綾波は、なんでいつも本ばかり見てるの?」
「・・・・・・。」
(・・・頼む、なんかいってくれよ。)
「ホンマ、あいつ無口なやっちゃな。」
「うん、兄さん完璧に無視されちゃってるね。」
どうやら、”綾波レイ”と言う少女に人とのコミュニケーションを持たせようと言うシンスケの作戦は当分うまくいきそうになかった。
シンスケとシンジによる「”ビール&料理抜き作戦”」の効果は抜群であった。もはや、ミサトはシンスケ達の言葉に何も逆らえないようになってしまった。情けないミサトである。
しかしこの作戦も今日の夜から終わるとあって、ミサトは大喜びであった。また、この夜はなぜかリツコがミサトの家に来ていた。
「本当に、美味しい料理ね。つくづく、ミサトが当番の日でなくてよかったわ。(リツコ)」
「本当は今日もミサトさんが当番の日ですよ。まったく困ったもんです。(シンスケ)」
「あはははは、これからはできるだけ家事もやるから許してね。(ミサト)」
「うそですね。まあ万が一、本当だったとしても料理当番はけっこうです。あの、ミサトさん特製インスタント料理は、たいへん美味しかったですよ。」
「なんか、そう、ほめてもらうと照れるわね。それほどでもないわよ。」
はあー、とため息をつく、リツコ・シンジ・シンスケ。どうやらミサトは本気で照れてるようだ。
「そうだ、忘れるとこだった。シンジ君に頼みがあるんだった。」
「レイの更新したカード。渡すの忘れちゃって。レイに届けてくれないかしら。」
「はい。」
「シンジ、僕も一緒に行くよ。レイの家までの道は知ってるからね。」
「どうしちゃったの、シンちゃん。レイの写真をジ−ッと見ちゃって。」
「シンジ、レイにほれたか?」
「それは、兄さんじゃないの。今日も綾波に話し掛けちゃったりして。」
「容姿は確かに良いんだけどね。あの無口にはまいるよ。ああ、俺にほれて、レイの方から俺にどんどん話し掛けるようになってくれないかな。」
「あはははは、まあ、レイのあの性格じゃ、ちょっとそれは無理っぽいわよね。」
「シンジ君、これがレイの家までの地図ね。」
そういって、メモを渡すリツコ。ミサトの日記と違いなかなか綺麗な字である。
「ここが、綾波の家か。なんかさびしいとこだね。兄さん。」
「なんだ、シンジここのイヤホン壊れてるぞ。<とん、とん> <とん、とん>ダメだ、返事がない。仕方がない、勝手にお邪魔させてもらうか。お邪魔します。」
「兄さん、この部屋すごいね。」
「ああ、とても女の子の部屋には見えんな。変わった子だとは思っていたが、ここまで変わってるとはな。とにかく、綾波はいないみたいだから、カードだけここに置いて帰るとするか。まったく鍵くらい掛けろよな。」
突然、中からレイが出てくる。驚いてあせって言葉が出ないシンジ。<ラッキー>予定通り。と、確信犯のシンスケ。
「その、ぼ、僕はカードを届に来ただけで、そ、その、のぞきに来たわけじゃ・・・」
言葉がうまく出ないシンジ。レイは平気な顔をして冷静に返事をする。その2人を面白そうに観察するシンスケ。シンスケは知らず知らずの内に、ミサトのからかい癖が移りつつあるようだった。
後書き
今回ようやくレイが本格的に登場しました。しかしセリフが1つもなく、本編以上に無口になってしまいました。この回はシンジとシンスケの会話が多くしました。この2人の会話は後半、この物語に重大な影響を及ぼさせる予定です。あと、皆さんメールぜひ下さい。ぜんぜん来てないのよ(泣)。お願いします。
次回予告
「綾波レイ、彼女は人と人とのコミュニケーションをまったく知らない少女だった。シンスケはなんとか彼女にのコミュニケーションが彼ができるようにしよう試みる。そんななか、第5使徒が現れた。エヴァ2回目第5話「歴史通りのヤシマ作戦」お楽しみにね。」