「ダメです」
クライスは冷たく言い放つ。
「ええ〜どうしてぇ?」
あたしは甘えたような声を出して抗議する。
「文化祭の出し物で飲食店は10店までと決まっているんです。それに締め切りはとうに過ぎているんですよ。提出期限を過ぎてから一番人気の喫茶店を出したいなど、図々しいにも程があります。無理です。諦めて下さい」
クライスのお言葉はごもっとも。
でもここであっさり引き下がったんじゃ、あたしが出てきた意味がないのよね。
「そこを何とか!お願いよ!あたしとアンタの仲じゃない?」
あたしはウインクなんてしてみる。
「で、貴女の報酬は何ですか?クラスの出し物を認めさせた場合の」
あはは、バレてるぅ。
クライスは生意気にも1年生の癖に生徒会長なのよ。
新学期早々に行われた選挙で、推薦で出たくせにあっさり当選してしまった訳。
文化祭の出し物の決定権は生徒会が持っている。取りも直さず、会長の権力は絶大な訳で。
夏休み前にあたしと彼が付き合っている事が学校中にバレてしまったものだから、ウチのクラスの連中はタカを括っていたらしい。
「いいでしょ?あたし達は3年生だし、コレが最後の文化祭になるんだから、ちょっと融通を利かせてくれても」
あたしは甘えたようにクライスに擦り寄ってお願いする。
「3年生なら文化祭では準備や手間の掛る飲食店などやめて、何かの研究発表とかにしておけばいいのではありませんか?」
「ええ〜、そんなのつまんないじゃない」
あたしの甘ったれた物言いにクライスは溜息をついた。
「何と言ってもダメな物はダメです」
頑固者!ぷぅっと膨れたあたしにクライスは見向きもしない。
「私は職権を乱用する事はしません。大体、家に来てまで言う事ですか?」
クライスの言葉にあたしはにやりと笑って
「そりゃあ、もちろん」
彼の首に腕を回す。
「こうして色仕掛けで誘惑する為に決まってんでしょ?」
ここは学校でもあたしの部屋でもない、クライスの家。
一緒に暮らしているお姉さんはまだ帰っていない。
「ウチのクラスでやる喫茶店のコスチューム、見たくない?」
「持って来たんですか?」
呆れているクライスに頷いて
「ね、見るだけでも見てみて」
と、強引に押し通して着替えてしまう。
「じゃ〜ん!どう?」
ウエイトレスの制服に着替えたあたしはくるりと回って見せる。
これでクライスがその気になってくれるといいんだけどなぁ。
可愛い制服なんだもん。
黒いワンピの襟は白くて大きくて淵にフリルが付いているし、エプロンも白くてフリルがたくさん付いてる。
スカートはミニだけどフリフリのペチコートが覗いていて可愛らしい。
「却下!」
クライスはこんなに可愛い制服を見ても不機嫌そうにそう言う。
「え〜!どうして?」
解んないなぁ、こんなに可愛いのに。
ソファーでぶすっとしているクライスの隣に座って再びしな垂れかかって聞くと。
「こんな格好をさせるわけにはいきません」
へ?
「似合わない?」
こんなに可愛い服、あたしには似合わないのかなぁ。
シアはコレを着て見せれば絶対に喜ぶからって言っていたのに。
ちょっとがっくりと来たあたしの足に、というか太腿にクライスは手を置いて、すっと撫で上げてくる。
「似合いすぎるから、ダメなんですよ」
耳元でそう囁かれてあたしはドキっとする。
自分で誘いをかけておいて何だけど、その気になったクライスはその、強引だから。
「似合っているなら、いいでしょ?」
本来の目的を忘れちゃいけないわ、うんと言わせなくちゃ。
クライスの手は太腿の上を上下して
「ダメです。他の男の目に曝すわけにはいきませんよ」
あたしの首筋を囁きながら滑りおりるクライスの唇。
「こんなに短いスカートやこんなに胸を強調するような服を着ている貴女を」
クライスの片手は服の上から胸を揉み立ててくる。
「んん、クライス」
彼はあたしの弱い所をよ〜く知っているから、確実に攻め立ててくる。
首とか胸とか背中とか、その・・・アソコとか。
「マリー」
呼ばれて、感じるままに目を閉じていたあたしは、目を開けて目の前の彼の首に腕を回す。
そしてキスを交わしながら、あたしは誘惑するのにクライスの嫉妬深さを考えなかった事が失敗だったと思った。
そんなに似合ってるのかな?
キスの間にワンピのファスナーを外したらしいクライスの手が胸に直に触れて来る。
「んん・・・」
塞がれている口から思わず声が漏れてしまう。
クライスの手が不意に止まる。
「マルローネさん、これは?」
クライスは唇を離すと、あたしの下着をつと摘み上げた。
それは殆ど紐とレースだけで出来ているブラ。つまり、セクシーランジェリーってやつ。
「ちょっといいでしょ?買って貰ったの。ちゃんと下もお揃いよ」
ぴらん、とスカートを捲ってみせる。
恥かしくなって、すぐに下ろしたけど、クライスは見逃さなかったはず。
ブラとお揃いのピンクのレースのショーツ。
「買って貰った?誰に?・・・まさか」
「ピンポーン!これが報酬で〜す」
クラスの文化祭費用から買われた下着。
あたしもちょっと悪乗りが過ぎるかなぁと思うんだけど・・・欲しかったし。
「だから、誘惑されてね。クライス」
口元に人差し指を立てて、ウインクしてみる。
クライスは眉間に皺を寄せていたけど、
「ダメ?」
と聞くと、黙ってあたしの体を抱き寄せてくれた。
「どうしてこんな物を欲しがったんですか?」
クライスはあたしの背中に腕を回してそっと抱きしめている。
「・・・色気が足りないってアンタが言うから・・・」
そうなのよ!クライスったらあたしに向かってそんな事言ったんだから!
クライスの片手が背中を滑って、腰に下りる。そしてスカートの中に入って・・・。
「この下着で今日一日学校にいたんですか?」
あたしは真っ赤になって首を振る。
「ここに来てからこの服と一緒に着替えたの!」
だって恥かしいじゃない。
ショーツはTバックなのよ。
今、クライスが撫で回しているのは、下着の上じゃなくて、お尻なんだから。
「ねぇ、ダメ?」
はっきり答えないクライスに答えを促すと、クライスは唇に軽くキスをして、ワンピを摺り下ろして、胸元に顔を埋めてくる。
「あん」
恥かしい声を上げちゃったのは、クライスってば、下着の上から胸の頂を咥えて来たから。
いくら小さい三角形のレースしか付いていないとは言え、下着は下着なのに〜。
「ヤダ、ちゃんと脱がして!」
「これは脱がさなくても良いように作られているものですよ」
た、確かに、ちょっと切れ目が入っていて、脱がなくても良いかもしれないけど・・・。
クライスは下着を脱がさずに胸に舌を這わせている。
いつもとは違う、レース越しの感覚・・・クライスの唾液で濡れてヘンな感じ。
「やぁん・・・うんん」
恥かしい下着を着けていると、ちょっと興奮するって言うのはこういう事なのかな?
クライスはワンピを更に摺り下ろそうとしていた手を止め、ワンピは脱がさずに、スカートの中に頭を入れる。
は、恥かしいよ〜
すっかり濡れ始めてるんだけど、いつもは受け止めてくれている下着が今は無きに等しいから、足に伝い始めてるんだもん。
クライスは真っ赤になってるあたしに気付いているのかいないのか、黙ったまま舌を這わせ始める。
伝っているものを舐め取るように、足から段々と上の方に。
あたしは恥かしさとクライス舌の感触に体が震えてくるのを感じていた。
何だかくすぐったいような、そして多分見られているっていう恥かしさに。
「ひゃん!」
クライスの舌があたしの中心に触れて来て、あたしは思わず声を上げてしまった。
まさか、下の下着も脱がさないまま、なんて事はないよ・・・ね。
でも、クライスは下着に手を掛ける気配もなく、続けている。
「ん、んん・・・あはぁん」
下の下着は付けていても意味がないものだから、脱がなくてもいいのかもしれないけど・・・。
さっきクライスが脱がさなかったブラは唾液で濡れた所が色が変わっていて生々しくてイヤらしい。
クライスの頭はペチコートの陰に隠れて見えない。
彼の舌と指の感覚だけが伝わってくるだけ。
「ああ、クライスぅ」
もう、ダメ・・・あんまり焦らさないでぇ。
あたしが名前を呼んで催促すると、クライスは指をアソコから離さずに顔を上げてくれた。
「もう、ですか?マリー」
クライスは意地悪そうな笑顔を浮かべている。
ん、もう!あたしにあんまり恥かしい思いをさせないでよ!
睨み付けるあたしにクライスは笑ってキスをしてくる。
アンタだってその気の癖にぃ。
キスをしながら服を脱ぎ始めたクライスにあたしは少しホッとして期待する。
あたしってば随分イヤらしい子になっちゃったな、コイツのせいで。
脱ぎかけの服を全部脱ごうとしたあたしの手を
「そのままで」
クライスが止める。
もう!
あたしは上半身下着のまま、腰にウエイトレスの制服を引っ掛けたままでクライスと繋がった。
「あん、ああっ、んん・・・はぁん」
クライスってば下の下着も外さないで突き上げてくる。
こういう下着が好きなのかな?
でも、ちゃんと脱がせて欲しいんだけど、本当は・・・いいけど、どっちでも。
クライスの手が薄い下着の上から胸をキツく握り潰す。
胸の頂を弄り回してくる。
疼くような感触に腰の奥が熱くなってキュっと締まる。
「ああ、マリー」
クライスの掠れた様な低い声に背中がゾクリとする。
「クライス・・・あはぁん」
もうちょっと、あと少し・・・。
ソファーの上で2人で腰を振りつつ、お互いの体を引き寄せる。
動きが止まるとぐったりとした所に感じるクライスの重み。
この瞬間が一番好きかもしれない。
腕を回してクライスを抱きしめると、優しく触れて来る手の温もりも気持ちいい。
「こんな服を着て、人前に出ることは許しませんよ」
クライスの言葉にあたしは困ってしまった。
じゃあ、クラスのみんなには何て言えばいいのよぉ。
学年首席の頭は伊達ではなかったみたい。
クライスの助言によって、ウチのクラスは文化祭で『お化け屋敷』をやる事になった。
それもちょっと変わったお化け屋敷を。
『お化け』は女装したウエイトレス姿の男子達・・・評判は・・・何故か良かった。
リベートを貰ったあたしも面目躍如というところ。
シアにウエイトレス姿で誘惑しきれなかった事を謝ると「分かっていたわよ」との答え。
「どうして?」
「クライスがマリーにあの格好をさせるとは思ってなかったもの」
ならどうして、あんな格好をさせたのよ!
憤慨したあたしに
「だって、代わりにもっといい案を出してくれると思ったから。正解だったでしょ?」
そ、そうだけどぉ。
「それに、2人とも楽しんだんじゃないの?アノ制服で」
シアの言葉にあたしは返す言葉が無かった。
見透かされてるわよ、クライス。
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