Your Wish

 月が変わってカレンダーを捲った時、気がついた。
 不覚にも忘れていた。
 書き込んであって良かった。
 でも、何も考えていない。
 どうすればいいんだろう?



「どうした?クラリス?」
 声を掛けられて我に返る。

「いえ、別に。何でしょう?マリウスさん」
 研究室でいつの間にか目の前に座っていた彼に意識を向ける。

 彼がマイスター・ランクに来て2ヶ月。
 彼が精製した『賢者の石』が高く評価されて、他の研究員とも上手くやっているようだ。

「ヘンだぞ、ボーっとして。風邪でも引いたのか?」
 額に手を当てられて思わず顔が赤くなりそうになる。
 全く!この人は!

「ヒューヒュー!お熱いね!お二人さん!」
 ホラ、人前でそんな事をすると他の研究員に冷やかされますよ。
 それでなくてもお揃いの指輪が知れ渡って一緒にいると目を引くのに。

 でもマリウスさんときたら
「ヘヘン!羨ましいか?」
 と堪えた様子も無くて・・・懲りて下さい、少しは。
 私は恥ずかしいんですから。

「風邪じゃありませんから!ところで何の御用ですか?」
 マリウスさんの手を払い除けるようにして睨みつける。
 用があるから声をかけてきたのでしょう?

「あ、そうそう、明日からヘーベル湖に採取に行こうと思うんだけど、空いてるか?」
 尋ねられて少し悩む。
「ヘーベル湖ですか?」

「そう、湖光の結晶が足りなくなっちゃってさ」
 湖光の結晶?
 そんなものを何に?
 まさか・・・

「最近、マイスター・ランクの研究員で市井にモノを下ろしている人がいるという噂を聞きましたが、まさかマリウスさん」
 私が睨むとマリウスさんは明るく笑いました。

「あれ?もう噂になってんの?だってさ〜研究員の賃金って高が知れてるモンなぁ。こんなんじゃとっても・・・っと」
 と言いかけてマリウスさんが自分の口を抑えました。

「マイスター・ランクの研究員には宿舎と食事が与えられているんですからお金なんて必要ないじゃありませんか?」
 研究材料費だってアカデミーから出ているんですから。
 自分自身の研究に専念すべきなのに、お小遣い稼ぎなんて。

「でもなぁ、工房を開いていた時のお客さんがいるしなぁ、飛翔亭でも高く買ってくれるんだぜ、オレのアイテムは」
 ちっとも反省していませんね!

「んで?一緒に来てくれるの?それともダメ?」
 屈んで上目遣いで覗き込まれると・・・
「・・・仕方ありませんね」
 ああ、私が一番彼に甘いのかもしれない。

「ありがと♪クラリス♪」



 ヘーベル湖、あそこに行くのも久し振りだ。
 冬が近付いてきた今は朝晩には息も白くなる。

「今日はシアさんは?」
 ここの所、ずっと一緒だった彼の逞しい幼馴染は今回は同行しないのだろうか?

「フフフッ、シアは今、婚約者の所に行ってる。もうすぐ帰ってくるらしい」
 冒険者よりも強いかもしれないシアさんはマリウスさんにとって苦手な存在らしい。
 彼女と仲良くなった私としては少し寂しいが、シアさんと一緒でなくて彼は嬉しいらしい。
 そうか、シアさんの婚約者が・・・留学から帰ってきたら直ぐにでも式を挙げると言っていたから、もうすぐなのか。

「二人っきりじゃイヤなのか?」
 考え込んだ私にマリウスさんが尋ねて来る。

「い、いいえ」
 思わず首を振って否定するとマリウスさんはニッコリと笑った。
 私はどうも不意打ちの質問には正直に答えてしまう。
 マリウスさんと二人だけで出掛ける・・・採取が目的だけど、ヘーベル湖と言えば・・・。

「二人っきりで行きたかったんだ〜何しろあそこは思い出の場所だもんな〜」
 私が考えていた事をマリウスさんが口にする。
 やだ、顔が赤くなる。

「あれから5年かぁ〜」
 あれから随分と変わりました私達は、外見も中身も。
 あの頃、貴方は落ち零れの落第生で私もまだ学生で、貴方の髪は長くて私の髪は短かった。
 今とは逆ですね。

 ふわりと風になびく髪を掻き上げる。
 キレイだと彼が褒めてくれる髪。
 ふと、視線を上げるとマリウスさんがじっとこちらを見ている。

「5年前も可愛かったけど、やっぱり今の方がキレイだな」
 は、恥ずかしい事を言わないで下さい。
 顔が赤くなるじゃありませんか。

「早く出発しないと」
 私は赤くなった顔を見られたくなくてマリウスさんを追い越した。

 5年前と変わらない事が一つだけある。
 それは素直になれない自分。
 彼の言葉を素直に喜べない。
 彼のように言葉に出来ない。
 マリウスさんは髪を切って前より逞しく見える事や彼の錬金術師としての腕が確かになっている事が素直に言えない。


 湖までは途中で1泊しなくてはならない。
 火を熾してキャンプの仕度をする。

「おお!クラリスのスープ!久し振りだなぁ!」
 そんな、言うほどの物ではありませんが、マリウスさんは私の料理とは呼べないほどの物でも作ったものを喜んでくれます。

「寒くなりましたから、これで温まって下さい」
 お茶と乾燥肉だけでは体が温まりませんし。
 そう言うと

「温まるなら別の方法もあるよな?」
 火に掛けた鍋を掻き回している私の後ろから抱きしめる。
 まだ調理中なのに!

「・・・食事はいらないんですか?」
 彼の腕に捕えられると体が暖かくなるどころか熱くなってくる。

「スープはじっくり煮込んだ方が美味くないか?」
 詭弁です。

「あっ」
 でも彼が服の上から身体を弄ると声が出てしまう。
 胸を握り締めて後ろから足を開くように膝の裏を押される。
 腰に硬いモノを感じると服を着ている事が邪魔にすら思えてくる。

「クラリス・・・いいだろ?」
 マリウスさんの手は服を脱がせ始めてしまっていて、髪を掻き分けて首筋に唇が這うと背筋がゾクゾクとしてくる。

「・・・スープが鍋に残っているうちに終わらせて下さいね」
 彼に誘われてノーとは言えない。
 私自身が強く望んでいる事だから。

「あ・・・ん、やっ・・・やぁん」
 マリウスさんに背中を預けたまま、服が緩められていく。
 首筋に舌が這わされて時折、吸い上げられる。
 彼の顔が見えないのがイヤです、こんな格好は。

「ふふっ、もうこんなになってる」
 背中のファスナーが下ろされて、ストンとドレスが落ちて胸が露にされてしまう。
 彼の手が胸を包んで指先で勃った尖端を突付く。
 貴方の触り方がイヤらしいからですよ。

「ああん!」
 肩越しに乳房を持ち上げられて勃った先端を咥えられると痺れるような感覚が走る。
 このままの体勢でするつもりなんですか?
 恥ずかしいのに・・・

「あっ・・・ん・・・んんっ」
 彼の手が下に伸びて、もう濡れている場所を探ってくる。
 そう・・・そこ、もっと触って。

 クチュクチュッと濡れた音を立てて彼が指を激しく動かす。
 もっと、もっと・・・指だけじゃ足りなくなるくらいに激しくして欲しい!

「ああん、マリウス・・・」
 腰が引けて彼の身体にぶつかると、彼の硬いモノが私の腰に当たる。
 そっと後ろ手でズボンの上から触れると硬さを感じてお腹の奥が疼く。

「欲しい?」
 マリウスさんに尋ねられてチョット唇を噛む。
 自分だって欲しいくせに、ズルイ聞き方です。

 だから私もずるい返し方をしてしまう。
「貴方は欲しくないんですか?」
 私を・・・

「欲しいよ、クラリス」
 耳元で囁かれて背中がゾクゾクしてしまう。
 早く、挿れて・・・

「あん!ああっ・・・」
 イイ!もっと、もっと奥まで挿れて!

 後ろから抱き上げるように突き動かされて私は自分の身体を抱くように腕を回す事しか出来ない。
 快楽を高めるように自分の胸をきつく掴みあげる。
「ああっ、はぁっ・・・ん・・・んん」

 胸にぶら下がって揺れるリングが指に当たる。
 左手の薬指に填めている指輪に触れて音を立てる。
 今の行為を形にしてくれた大切な物。

「ああん、マリウス・・・」
 愛してる、貴方を愛してます、ずっとずっと・・・これからも・・・

「クラリス・・・ああっ」
 彼の激しい動きが止まって足が下ろされると圧迫感が消えてしまう。
 太腿に流れ落ちるモノを止めようとキュッと閉めてもムダな事。

「寒くないか?」
 やっと彼の胸の中に正面から抱き寄せられてホッとする。

「平気です」
 こうしていれば寒さなんて感じない。
 彼の背中に腕を廻してギュッと抱きしめる。
 ずっとずっとこうしていられればいいのに・・・でも。

「スープが煮詰まってしまいます」
 現実を忘れ去る事が出来ない自分がイヤだ。
 彼の腕から逃れて服を着る。

 でも、食事の後、二人っきりで身体を寄せ合って・・・裸のまま寝てしまいそうなマリウスさんに服を着させるのには苦労しましたけど。



 次の日はヘーベル湖に着いて早速、湖光の結晶を探しました。
 でも、中々簡単には見つかりません。
「寒くなったから見つかるはずなんだけどな」
 確かに冬限定の希少アイテムですが、着いた日に見つかるほど簡単な物ではないから希少なのでは?

 その時、草叢からピョンピョン飛び跳ねるものが!
「危ない!マリウスさん!」
 思わず彼を突き飛ばすようにして腰に下げた袋からアイテムを取り出す。

「えい!」
 投げつけると大きな音を立てて吹き飛んだ。
 よかった。

「おいおい、クラリス!どうしてぷにぷにごときにメガフラムを使うんだ?」
 マリウスさんが呆れた声をあげてます。
 咄嗟に手に取ったものを投げただけですから、選り好みは出来ません。

「一度で確実に仕留めたのですから構わないのでは?」
 ぷにぷにとは言え、金色をしていましたから強いはずです。
 私はまだ貴方のように杖で一撃撃退は出来ませんから。

「そうだけど・・・ヘーベル湖に来るのにメガフラムを持ってくるなんて・・・」
 何だかマリウスさんは不満そうです。
 どうしてでしょう?

「ほら、クラリス・・・こっち来いよ」
 マリウスさんは水筒を出して私を呼び寄せました。
 まだ怒っているんでしょうか?

「メガフラムは気力を使うからなぁ、飲んどけよ」
 水筒からカップに入れているものは香りでミスティカティだと分かりました。
 そんなものを持ってくる貴方も用意周到すぎるのではありませんか?マリウスさん。

 カップを受け取ろうとした私は、マリウスさんが飲み干してしまうのを見て唖然としてしまいましたが、次の瞬間、彼が私を抱き寄せて唇を寄せてきた時に彼の考えが分かりました。
 口移しだなんて・・・恥ずかしい真似を。
 いつもより甘く感じられた事は言わないでおきましょう。

 ミスティカティを飲み終えた後でもマリウスさんは唇を離してくれませんでした。
 いつまでもそんな事をしているからぷにぷににまた襲われてしまうんですよ。
 今度はマリウスさんが杖で撃退してしまいましたけど。

「あった!」
 日が沈みかけて採取を諦めかけた時、漸く湖に煌く結晶を見つけました。
 でも、もう薄暗くなってしまったので湖畔で泊まる事になりました。

「へへへっ、こうしてると思い出すな〜」
 焚き火の前で鍋を掻き回していると、マリウスさんがニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべてます。

「私が湖に填まって濡れれば完璧に再現出来ますね。そうしますか?」
 この時期に濡れるなんてゾッとするけれど、彼の考えを嗜めるようにそう言ってみる。
 嫌味だわ、私って。

「そこまでしなくていいよ」
 マリウスさんは苦笑してました。
 素直じゃない自分がイヤになる。
 いつかきっと彼も呆れて見捨てられてしまうかも。

 いよいよ明日だというのに、何も思い浮かばないし・・・彼に直接聞いたほうが良いのだろうか?
「あの・・・マリウスさん」
 恥ずかしくて彼の顔を見られないから、鍋をグルグルと掻き回しながら尋ねる。

「ん?何?」
「・・・今、何か欲しいものってありますか?」
「欲しいもの?」

 尋ね返されて頷く。
「う〜ん」
 と考え込んだ彼をそっと窺う。

「そうだな・・・取り合えず、そのスープとクラリス」
 余程お腹が空いているんでしょうか?
 私は少し顔が火照るのを感じてしまいました。

「そうじゃなくて!・・・その・・・服とか小物とか・・・欲しい品物はありませんか?」
 誕生日のプレゼントに相応しいものを言って欲しい。

「品物?別に無いなぁ・・・困っているものはないし、湖光の結晶は手に入ったし・・・」
 意外と物欲の無い方ですね。
 困りました。

「何でまた急にそんな事、言い出すんだ?」
 マリウスさんは不思議そうにして聞いてきます。
 もう!

「明日は貴方の誕生日でしょう?プレゼトが欲しいと私のカレンダーに書き込んでいったのは貴方じゃありませんか!」
 忘れるなよ!とあれほど言い続けていたくせに!
 気の効いたところを見せて驚かせてやろうと思っていたのに・・・私ったら言ってしまった。

「あ!覚えててくれたんだ?嬉しいな♪プレゼントは別にもういいよ、だってこうして一緒に採取に付き合ってくれてるだろ?」
 そんな事ではプレゼントとは言えないのでは?

 納得した様子を見せない私にマリウスさんはにっこり笑いました。
「それじゃ遠慮なく欲しいものを言うけど、その前にメシにしてくれよ、腹減っちゃってさ〜」
 まずは食事ですか、ハイハイ。



「は〜食った!食った!相変わらず美味いな〜クラリスのメシは!」
 喜んでもらえるのは嬉しいんですが、鍋が殆どカラです。
 食べ過ぎでは?

「クラリス、おいで」
 マリウスさんに呼ばれて彼の膝の上に座らされる。
 恥ずかしいけれど、赤くなった顔は焚き火で見え難いだろう。

 彼の膝の上に座って、彼の肩に頭を預けて腕の中に包まれる。
「ホントに欲しいものをくれる?」
 そっと囁かれて頷く。

「じゃあ、さ。聞かせてくれよ、オレの事、どう思ってたのか」
 聞かせて、って・・・今更、告白させるつもりですか?この私に?

「・・・貴方はご存知じゃありませんか」
 私の気持ちなんて。

「今はね、判ってるつもりなんだけどさ。指輪も受け取ってくれたし、こうして填めてくれてるから。でもさ、最初の頃とか分かんなかったんだよ。誘えば断らなかったけど、最初の時とかさ。何度も喧嘩とかして不安にさせてくれたし、心配してたんだ〜いつ捨てられるかな〜?って」
 オレは落ち零れだったしな〜とマリウスさんが呟く。
 彼がそんな事を考えていたなんて・・・思いも寄らなかった。
 いつ捨てられるか常に不安だったのは私の方。

「5年前にここであんな事になった後、何度も思い出したんだ。この身体とあの時の事を・・・」
 彼はそう言いながら服の上から私の胸をギュッと掴む。

「そうだったのはオレだけじゃなかったなら教えて欲しいんだ、クラリス」
 キミの気持ちを・・・彼の腕の中の私の小さな体を包み込まれるように抱かれて、私は覚悟を決めた。
 私だって・・・知って欲しい、どれだけ長い間、貴方を求め続けていたのか。

「私・・・掲示板の前で貴方に声を掛けられるよりも前から、貴方の事を知ってました。貴方はアカデミーでは有名人でしたから」
 この言葉にマリウスさんは驚いていました。
「え?ウソ?マジで?」
 思わずクスリと笑ってしまいます。
 本当にこの人は鈍い人ですから、自分がどれだけ人目を引く容姿をしているかとか女の子達に騒がれる存在だったのか分かっていないようです。

「本当です。例え最下位の落ち零れでも女の子達はみんな貴方と話しをしたいと思っていました」
 私も・・・ですが。

「その・・・クラリスも?」
 おずおずとマリウスさんが尋ねてきた言葉に私は頷きました。
 今更、隠しても・・・仕方ありませんし、ね。

「ですから、採取に誘って頂いた時は、正直言って・・・嬉しかったです。シアさんの事を貴方の恋人だと思っていましたから、冷たい態度をとって、これ以上・・・好きにならないようにしようと・・・」
 自分に言い聞かせてました。
 言葉に詰まる、思い出すと辛くて。

「でも、貴方に誘われて・・・嬉しかったです。その場限りの事でも構わないと・・・」
 唇を塞がれて言葉が遮られた。
 激しく吸い上げるキス、今なら思いは通じていると信じられるからあの時とは比べ物にならないほど嬉しい。

「・・・ゴメン」
 唇が離れた時、マリウスさんは辛そうに謝りました。
 いいえ、いいんです。
 言葉に出来ずに首を振る。
 言えなかったのは私の所為ですから。

「あの時から・・・時々でも逢えて、関係が続けられた事が嬉しかったです。いつ終わってもいいと言い聞かせ続けてましたから」
 私の頭を抱え込んだマリウスさんがクスクスと笑い出しました。

「オレだってそうだよ・・・でも言っただろう?コメートの原石を渡した時」
 ええ、聞かせて下さいましたね。
 責任を取って下さるつもりだと言う事とこんな関係を続けているのは私とだけだと、でも信じられませんでした。
 あまりにも突然に私の願いが届いたみたいで。

「でも、その後、採取や調合で会えない日が続いたりしたし・・・何度この身体を思い出した事か・・・」
 彼の手がドレスのスカートを捲り上げて素足に触れる。
 撫で上げられてビクンと身体が震える。
 イヤだ、あまり触らないで・・・話が出来なくなります。

「クラリスは?そんな事なかった?」
 マリウスさん・・・貴方は・・・
「私にその時を思い出して欲しいと?」
 何をさせるつもりなのか分かりました。

「うん、見せて欲しい」
 この人は・・・誕生日のプレゼントに何をさせるつもりなんですか!
 あんな事は他人に見せるものじゃありません!

「イヤ?」
 憤慨している私にマリウスさんがお伺いを立ててくる。
 ・・・私が貴方に頼まれた事をイヤと言えない事を知っているくせに!
 酷い人です。

 それならいっその事・・・
 私は彼の膝から下りて背中を向けました。
 髪を掻き上げてファスナーを外すように促します。

 緩んだ服を思いっきり良く脱いで肌着姿になって膝を立てて脚を広げました。
「貴方に逢えない時、眠る前に思い出しました」
 ベッドの上で、こうして・・・
 誘うような視線を投げると、マリウスさんがゴクッと息を呑んで見ているのが分かります。

 肌着の中に手を入れて自分で触れる。
「あっ・・・ん・・・」
 マリウスさんは胸に触るのが好きだから、よく揉まれました。
 彼の手の動きを思い出してはそれをなぞる様に揉みし抱く、強弱をつけて、重さを推し量るように揺らして。

 そして腰が疼き始めると胸を甚振っていた手を片方外して、下へと持っていく。
 一人だとまだ濡れていない場所は、今まで抱かれていた感触にうっすらと濡れていたけれど。

 下着をずらして指を潜り込ませる。
 一番敏感な部分を擦り上げていく、段々とスピードを上げて。
「ンん・・・あっん・・・はあん!」
 身体がビクビクと震えてきて腰が動き始める。
 もっと快楽を求めて・・・もう彼を見る余裕が無い。

「ん・・・はぁん、あ・・・ああっ」
 私の指が中に入る、1本2本と数とスピードを増して。
 つけている下着が邪魔に感じていると、スッと脱がされた。

 待ってたんです、我慢出来ないでしょう?
 私にこんな事をさせたんですから、ちゃんと満足させて下さいね?

 脚を大きく開いて彼を誘う。
 何も障害が無い場所に彼の金色の髪が埋まっていく。

 指で開いた入り口の淵を舌で舐め上げられる。
「やん!」
 そこじゃなくて・・・もっと上!
 そう、そこ・・・一番気持ちがいい所を舐めて欲しい・・・貴方はご存知でしょう?

「ああ・・・もっと・・・」
 舌で弄られて唇で吸い上げて、もっと激しくして!
 そして私よりも太い指で中を掻き回して下さい!
 その柔らかい舌でもイイ!

「あん!」
 どうして止めてしまうんですか?
 まだ足りない・・・もっとして欲しいのに。

 批難の視線を投げかけるとマリウスさんは服を脱いでいた。
「もうダメ、ガマン出来ない!いいだろ?」
 せっかちな人ですね。

 私も残っていた肌着を脱いで裸になって抱き合う。
 この重み・・・いつまでも感じていたい・・・のに、マリウスさんときたら、足を抱えて直ぐに挿れようと身体を離すんですから!全く!
 ちょっと刺激が強すぎたんでしょうか?

「あん、あん・・・あっ、ああっ」 
 突き上げられるリズムに合わせる様に腰が動く。
 激しい動きに終わりが近い事に気づく。
 そうこのまま・・・

「マリウス・・・」
 私に倒れこんでくる彼の身体を抱きしめる。
 貴方は私だけのものです。
 私の大切な・・・愛しい人。

「なぁ・・・クラリス」
 冷気の漂う湖畔で二人、抱き合っているとマリウスさんがホツリと呟きました。

「何ですか?」
 頭の上にある彼の顔を見上げると
「オレの誕生日は明日だから、アレ、明日もやってくれない?」
 エヘヘっと笑って図々しい事を言うマリウスさんのお尻を私は黙って抓り上げました。

 泣こうが叫ぼうが、あんな事を続ける訳には行きません。
 でも、いつもより・・・ちょっと気持ち良かった。
 恥ずかしかったけど。
 やみつきになったらどうしましょう?

 やっぱりプレゼントは無難な品物にする事にします。
 これで味を占められたら困りますから。

 

「マリウスのアトリエ6」に戻る    クラリスのお誕生日編「私の願い」へ続く


Postscript

マリーのお誕生日記念創作は・・・マリウスのアトリエ番外編。
アハハハハ・・・まさかまた書く事になろうとは・・・自分でも思っていませんでしたよ〜
新しく書き下ろすのも面倒で(蹴)コスプレは去年やったし(殴)時間が無いので古いものを使いまわし(爆)

タイトルは「貴方の欲しいモノ」
ってクラリスちゃん、マリウスが欲しがっているモノはアレしかないでしょアレしか(笑)
今回はクラリスちゃんだけの視点からのお話になっています。

「マリウスのアトリエ」で交互の視点から話を進めたのは片方だけだと話が見えない部分が多すぎると思ったのです(長い話だから)
乙女で意地っ張りで素直じゃないけどえっちな彼女の心情は書いてて楽しい♪

ヤローの誕生日を祝うつもりはありませんが、これはクラリスの誕生祝の前振りですから、ハイ続いちゃうのです♪

マイスター・ランクは研究員、という事にしてしまいましたが、生徒が正しいのかな?
給料まで出てる・・・いいのか?そんな勝手な設定にして(パラレルだから♪)

クラリスは既に3年間マイスター・ランクにいる事になってますよね?
いいのかな?いつまでいられるんでしょう?マイスター・ランクって。

初めての時と同じ場所(だけじゃないけど)で思い出に浸りながらの野外えっち・・・(オイ)
寒いのに風邪引かないでネ♪

この話は(本編も含めて)色々なえっちバリエーションを出してしまったので、他の創作の際に苦労させられました。
結局、使いまわしてますが(能無し)

男の前で一人えっちをするのもどこかで・・・(細かい事は気にしないで下さいね〜)
でも結局、マリウスは最後までガマンすることが出来ませんでした〜おバカさん♪
しかし・・・マリウスのバースディプレゼントというよりは・・・クラリスが結構いい想いをしてる・・・(ドカバキ)い、いや、やっぱり女の子にあんな恥ずかしい事をさせたんですから、マリウスがイイモン貰ったと!思う事にして置いてください。

マリウスがなぜ小遣い稼ぎをしているのか?
クラリスのお誕生日記念創作で明らかになります(最近コレばっかだな)

2003.11.5 UP

 

 

 

 

 

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