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31.越後湯沢の陽気なやつら

説明

1994年は2月の北海道旅行を皮切りに、いろいろなところに行きました。12月もはじめての広島・岡山・香川の旅行に行き、青春18きっぷを1枚(当時は1日1枚)使いました。

実家の家族に2枚送ったので、ぼくの割り当ては残り2枚です。

天皇誕生日近辺に3連休があるので、なかびは休んで1日目と3日目に18きっぷ旅行をしようと思いました。さてどこに行くのがいいでしょう。

2月の北海道旅行のほか、6月と10月にハートランドフリーきっぷ旅行をしています。ハートランドフリーきっぷの旅行はなるべく東京から遠いところで使って、近いところは18きっぷを使いたいです。

それを考えると、3月に高崎線→上越線→只見線→磐越西線→東北本線という旅行をしているので、磐越西線の残りの区間、新津〜会津若松に乗るのが良さそうです。

磐越西線は只見線よりも列車の本数が多いので、かなり接続がいいです。朝早く高崎線に乗るとちょうど接続のいい磐越西線に乗れて、会津若松には只見線経由よりも早く着けるようです。

そのまま郡山経由で帰ってもいいですが、そう言えばこのあたりには会津鉄道・野岩鉄道(やがんてつどう)っていうのがあったなあ、いつか乗ってみたいと思っていたけど乗らずじまいになっていたんだよなあと思い出しました。正確には実家の家族と龍王峡(りゅうおうきょう)には降りているので、そこから北に乗っていないのです。

よし、会津若松からは会津鉄道・野岩鉄道に乗ろうと思いました。

そのまま東武日光線で浅草まで行くのでは、せっかく青春18きっぷがあるのにもったいないから、下今市から乗り換えて東武日光に行き、JRの日光まで歩いてあとはJRで上野に行こうと思いました。

こちらの旅行は1日目にして、3日目は大垣行き夜行にでも乗って、あとはどうするかまた考えようと思いました。

こうして天皇誕生日をむかえたのです。

高崎線

旅行記本文

朝5時前、なんとか早起きに成功し、上野駅にやってきた。

3月に只見線に乗った時と同じく、高崎線のホームに向かう。高崎行きの電車に乗る。客は少ないようだ。

電車は発車する。荒川を越え、大宮を過ぎてもまだまだ外は暗い。

熊谷を過ぎて明るくなってきた。青春18きっぷのシーズンは寒すぎるか暑すぎるシーズンである。寒さに耐えられないと18きっぷは使いこなせない。とりあえずこの暖房の暑さ、ドアが開いた時の風の寒さに耐えないといけない。

神流川(かんながわ)、烏川(からすがわ)を越えて高崎が近づいてきた。レールの多い場所を進み、何度か来た高崎駅に到着した。電車を降りる。さあ、水上(みなかみ)行きの電車に乗り換えだ。

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上越線

高崎〜水上

上野から乗ってきた高崎線の電車を高崎で降り、階段をのぼった。

なんでもものの本によると、高崎駅には「朝がゆ弁当」という駅弁があるが、数量限定なのでめったに食べられないとか。

でもしょせんおかゆだしなあ。ぼくは駅弁売り場で、結局「鳥めし」を買って、上越線の電車で食べることにした。そして階段をおりて水上(みなかみ)行きに乗る。

水上行きが発車する。3月にも9月にも通った路線なのであまり気負うこともない。

高崎線より車両数が少ないので、多少1車両あたりの人数は多いようだ。まずは鳥めしを食べよう。

食べ終わると電車は渋川(しぶかわ)に近づいていた。このあたりから山が左右に迫るようになる。渋川を過ぎた。

だんだん左右の山々に雪が見えるようになってくる。この分だと新清水トンネルを抜けたら雪でいっぱいだろうなあ。電車は沼田を過ぎた。

そして終点、水上に着いた。さあ、乗り換えだ。

水上駅発車

階段をのぼっておりて長岡行きの電車に乗り換えたが、さすがに今度の電車は客でいっぱいのようだ。みんな青春18きっぷの客なのかなあ。とりあえず立っていよう。電車は長岡に向けて発車する。

電車はトンネルに入っていく。

「大沢くん!大沢くん!」という声がする。ぼくは大沢という名字じゃないので振り向かずに立っていたが、なんとなくぼくを呼んでいるような気がしたので振り向いた。

「あー、良く似ているけど違うなあ。きみ何ていう名前なの?」

などと言われたが、正直に本名を名乗るのもなんなので、

「池袋では『佐々木』と呼ばれていました」

と言ったらうけたらしくみんな笑っていた。

回想

ここでさきほどの「池袋では『佐々木』と呼ばれていた」についてくわしく書くことにする。

アイドルファンだったぼくは、よく池袋サンシャインアルパ噴水広場というところでアイドルが歌を歌いに来るのを見に行ったものだった。

たいてい1Fや2Fの方から地下1Fにいる女の子たちを見おろしていたのだが、たまにCDを買って握手券をもらうと女の子の近くで歌を聴くことができたのである。

その日もぼくは映画に出ていた中江有里(なかえゆり)ちゃんという歌も歌っている女優の握手会に参加していた。
CDを買った人はロープで囲ったかこいの中に行くことができ、CDを買わない人はかこいの外で歌を聴くことになるのである。

ぼくがロープのかこいの中で握手会の開始を待っていると、

「佐々木!佐々木!」

というように上越線で「大沢!」と言ったやつみたいにぼくに呼びかけていたのである。

もちろんぼくは佐々木って名字じゃないので自分が呼ばれているとは思わなかった。

なんでも中江有里ちゃんが出ている映画の舞台が熊本だということで、

「熊本かあ・・・」とぼくはつぶやいた。そうすると彼らの1人が、

「佐々木くんよくぼくたちが熊本から来たってわかったね」などと言ったのである。

なんでもぼくに良く似たやつが彼らの友人にいて、佐々木ってやつだとのことである。

まあ、初めて会ったやつらではあるが、同じ中江有里ファンであるので、それなりに仲良く話をした。熊本から何の用事で池袋に来たか聞き忘れたが、イベントの開始を待ち、いっしょに中江有里ちゃんの歌を聴いたのである。もちろんCDを買っていない彼らは有里ちゃんとは握手できず、ぼくは握手したのだが。

越後湯沢駅到着

さて、上越線の話に戻る。

池袋と同じく、彼らの仲間の中にもぼくと似た大沢ってやつがいるのだろう。

池袋でこんなことがあった後で似たようなことがあったので、こんなことってけっこうあるのかなあと思っているうちに、とりあえず彼らは席を空けてここにすわってもいいと言う。いろいろ話をする。

彼は「たばこ吸う?」と何度もぼくにたばこを差し出して来た。彼らの頭の中には男はみんなたばこを吸うもんだという認識があるのだろう。たばこを吸わないぼくはもちろん断った。

あれから数年で普通列車全面禁煙になるとは彼らも思わなかっただろう。そんなふうにしてトンネルを抜け、時間が過ぎる。

電車は越後湯沢に着いた。

若者たちの1人が、「おい!降りる駅だぞ!」と言うと、彼は「えっ!降りなくちゃ!じゃあね!大沢くん!」と言ってどやどやと降りていった。これから3日間スキーなのだろう。

スキー

越後湯沢〜長岡

そして電車は越後湯沢を発車していく。

越後湯沢を過ぎてからは車内は閑散となった。すわって景色をながめる。

もちろん雪が左右に見える。このあたりは季節が変わると景色が変わっておもしろい。でも青春18きっぷシーズンくらいしか来たことがない。そんな景色を見ながら電車は進んでいく。4月に来た小出も過ぎた。

だんだん左右の山々が少なくなり、宮内を過ぎて、終点長岡に到着した。きちんと定刻に着いてまずはめでたい。

ぼくは電車を降りて新津(にいつ)に向かう電車に乗り換えることにした。

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信越本線

旅行記本文

水上(みなかみ)から乗ってきた電車を降りて、長岡で新潟行きの電車に乗り継いだ。電車は発車する。

もう12月だが、まだまだ長岡から先は越後湯沢のあたりほど雪は積もっていない。

越後湯沢近辺みたいなスキー客がいるわけでもなく、車内はいたって静かなまますいすい進み、無事目的地、新津(にいつ)に到着した。ここで降りる。

乗り換えに余裕があるのでそれほど急がなくてもよいのだが、なんとなく急いで階段を上がって磐越西線のホームに向かった。

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磐越西線

旅行記本文

長岡から乗ってきた電車を新津で降り、階段を上がっておりて会津若松行きの出るホームに来た。

さすがに列車の数が少ないだけあって客が多い。3連休の初日なので出かけだす人も多いだろう。もちろん12月の新潟県なのでまわりは雪である。

列車が入ってきた。ディーゼル機関車に引っ張られた客車だ。なんとも古い。さすがは磐越西線だ。磐越西線は会津若松から東には乗っているが、新津からは乗ったことがないのでどんな車両かわからなかったが、こういう古い車両はおもむきがあっていいなあ。

車内はボックス席ばかりの車両だった。年輩の夫婦といっしょの席になる。そして発車。客車は静かでいい。もっとも暖房が効いているので暖房の音がする。

新津の市街地はせまく、客車が新津を出るとすぐに郊外に出る。外はずっと雪景色である。

こうやって新潟の雪景色の中を鉄道で旅すると、青春18きっぷっていいきっぷだなあと思う。平野の雪景色はしばらく続いた。

そのうち山が増えてきた。

郡山から会津若松の間は、北に磐梯山が見えるいい景色だが、このあたりはそんなに高い山は見えないけれど、山が近くに迫り、しかも山々はすべて雪化粧されている。とてもおもしろい景色である。

そして喜多方に着いた。かなり客が降りるが乗ってくる人もけっこういる。混雑はあまり変わらないまま客車は進んでいく。若干雪は減ったような気がする。

喜多方を過ぎるとそれほど時間もかからずに客車は会津若松に到着である。3月以来ひさしぶりの会津若松であるが、3月と同様にすぐに会津高原行きのディーゼル車に乗り換えである。またいつか時間があるときに観光することにして、今は先を急ごう。ぼくは客車を降り、会津鉄道のホームを探した。

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会津鉄道

旅行記本文

新津から乗ってきた列車を会津若松で降りた。3月にも来ている場所であるが、きょうもすどおりするだけである。

階段をのぼり、ずんずん進むと会津鉄道の会津高原行きの乗り場が見つかった。多少新しめではあるが、7月8月に乗った水郡線のディーゼル車ほど新しくなさそうなディーゼル車である。でも只見線ほどは古くないようだ。まずは乗ろう。

もうお昼をかなりまわっているせいか、3連休でも客はそれほど多くなく、座席にすわると発車である。しばらくは3月に乗った只見線を進んでいく。

まだ会津若松の市街地にある西若松を過ぎると只見線と分岐し、市街地を離れていく。
しばらく進むと平野が減り、山がせまるようになる。川が見えるがそれほど川幅は広くない。

磐越西線は雪景色であったが、このあたりはそれほど雪も多くないようである。雪はやはり日本海に近い方が多いのかもしれない。そんな山の谷間の景色がしばらく続く。そして浅草から電車が来ている会津田島を過ぎる。ここからは浅草と直結した場所だ。

このあたりは意外に盆地が広く、山もそれほどせまっているわけではない。そんな景色のまま終点、会津高原に着いた。運賃は運転手に払わなければならない。青春18きっぷを見せて、西若松〜会津高原の運賃を払って降りる。

きょうはほとんど冬至なので日没が早い。それでもまだ明るいので景色を見てみた。枯れた田んぼの広がる景色である。まだ野岩鉄道の発車時刻までは時間があるので、きっぷの自動券売機を探すことにした。東武日光まで行く予定なので、東武日光まで買えたらいいなあと思った。

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野岩鉄道

旅行記本文

会津若松から乗ってきたディーゼル車を会津高原で降り、自動券売機を探した。

無事見つかった。東武日光は・・・あった。きっぷを買う。これでよし。

電車がやってきた。こんな場所に電車が走っているのも不思議だが、もともと電車はもし蒸気機関車だとトンネルで煙が車内に入ってけむいという理由のため、飯田線とか信越本線とかのトンネル区間から先に開業し始めたのだから、野岩鉄道で走っているのはむしろ当然なのかもしれない。

なにしろ野岩鉄道は国鉄末期開業なのだから電車も新しい。そんな電車に乗るが客は少ない。そして発車。

しばらく進むと多少広めの盆地を離れ、山の中に入っていく。なんでもこのあたりはつい最近まで電気も通っていなかった場所だという話だ。人口も少ないだろう。

山

トンネルもけっこうある。山がせまっているので空があまり見えないが、日も暮れてきたようだ。

このあたりは家族といっしょに龍王峡(りゅうおうきょう)までは来たことがあるのであまり気負って景色を見ることもないだろう。龍王峡を過ぎる。あとはもう乗った区間なのでぼーっと窓の外を見ていた。

電車は新藤原に着いた。ここからは東武鬼怒川線だ。もう景色は見えないが、終点の下今市(しもいまいち)までまだまだ山の中だろう。

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東武鬼怒川線

旅行記本文

会津高原から乗ってきた野岩(やがん)鉄道の電車は新藤原に着き、しばらくして発車した。

それほど進まずに鬼怒川公園に着く。このあたりは4月に大学の同期のやつらと泊まった宿がある。ぼく以外全員車だったし、東武鬼怒川線は若者にはあまり使われていないのかもしれない。

そして鬼怒川温泉。駅のまわりはにぎやかそうな明かりがちらほらとある。3連休だからお客も多いのだろう。もうみんな宿に入る時刻らしく、ホームの人影は少ない。

そんな景色を見ながら電車は進み、終点下今市(しもいまいち)に到着した。ここで降りる。さあ、東武日光に行かなければならない。

ここで降りてJR日光線の今市まで歩くのはけっこう距離がありそうだし道も複雑そうなので東武日光に行くのである。人影もまばらな中をなんとか日光方面のホームに行き、電車を待つ。

やってきた。オールロングシートである。東武の普通列車なのだからあたりまえと言えばあたりまえなのだが、きょうはオールロングシートの電車は上野までしか乗っていないのでなんだかなつかしいような気がする。もちろん客は少ないので無事すわれ、発車。東武日光まではけっこう時間がかかる。日光線も今市から日光までは時間がかかるから当然か。

そしてようやく電車は東武日光に到着した。特急も入ってくるのだからけっこう長いホームである。そんなホームを進み、改札で会津高原で買ったきっぷを渡して通る。きょうはいい旅行だったなあ。

さあさあ、まだまだ上野までは遠い。まずはJRの日光駅まで歩かなければならない。どっちだろう。

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日光線

旅行記本文

下今市(しもいまいち)から乗ってきた東武の電車を東武日光で降りた。もうだいぶ日が暮れている。さてJRの日光駅はどこだろう。

なんとなく、下今市の方向に歩くとあるんじゃないかと思い、歩いてみる。多少下り坂だ。

しばらく歩くと、今年の4月に来た日光線の駅舎が見つかった。こうして見ると東武日光と比べてやや小さめの駅舎である。会津高原で車内精算したときに見せた青春18きっぷを取り出し、改札に入る。

そして宇都宮行きに乗る。土曜日の夕方、お客は少ない。電車は発車する。

4月に乗ったのでそれほど気負わずに景色をながめる。とは言ってもそのうち暗くなって景色が見えなくなってきた。人家の少ない場所を、宇都宮に近くなるまでずっと走る。

夕暮れ

栃木県は山がちな場所が多いので、これでも平野が多いのかもしれない。

すっかり暗くなったころ、電車は終点宇都宮に到着した。

夕食がまだなので腹が減っているが、あさっても青春18きっぷで電車に乗る予定なのでできるだけ早く寮に帰りたい。はやいところ上野行きに乗って、夕食は寮の近くのコンビニで買って寮で食べようと思い、階段を上がってただちに上野行きのホームに向かった。

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東北本線

旅行記本文

日光から乗ってきた電車を宇都宮で降り、階段を上がっておりて上野行きのホームにやってきた。

じきに上野行きがやってきた。1時間に何本も電車が通っているのはとてもありがたい。

電車に乗ると発車だ。このあたりは電車の本数が多いのでけっこうすいている。そのまま小金井まで進むと電車が増結される。そして小山を過ぎ、利根川を渡るとだんだんお客が増えてくる。とは言ってもたいしたことはない。

夜も遅くなったが、3月に只見線に乗った時より若干早い時刻のようだ。だんだん上野が近づいてくる。きょうは乗ったことのない鉄道にたくさん乗れた。3連休だが、この冬使える青春18きっぷはあと1枚なので、あしたは夜まで休んで、大垣行きにでも乗ろうと思った。

電車は大宮、赤羽を過ぎ、終点上野に到着した。寮に帰り、寮の近くのコンビニでめしでも買って食べることにしよう。

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