北野白梅町(きたのはくばいちょう)から乗ってきた京都市営バスは、無事京都駅前に到着した。
今日は臨時大垣行き夜行を降りてから、大阪や京都の私鉄にばりばり乗った1日だったが、今夜はこれから山陰経由で博多へと向かうことにしている。
とある旅行関係のメーリングリストで、今日と明日乗る「ムーンライト八重垣」「ふるさとライナー九州」の指定席券が余ったので売るというメールがあったので、譲り受けることにしたのである。はじめて会う人なので無事に会えるか心配だったが、その人からムーンライト八重垣の指定席の位置を聞いていたので、その位置に座っていれば会える予定なのである。
さて、まだ夕食を食べていないので、コンビニでもさがそうかと駅の北口(烏丸口)から北にちょっと歩いてみることにした。しばらく歩いたころ、ローソンを見つけたので弁当を買って駅に戻った。工事中の狭い通路を通り抜け、これから乗ることになる出雲市行きムーンライト八重垣の発車ホームを確かめてホームに行き、弁当を食べた。
弁当を食べ終わって容器をごみ箱に捨ててしばらくすると今夜乗ることになるムーンライト八重垣が入線してきた。
やや古めの箱型4人席の客車であった。古めとは言っても今年1月に乗ったムーンライト高知やムーンライト松山よりは若干新しいようであった。
ドアが開いたがあまり乗る人はいない。どうやら京都ではあまり乗る人はいないようであった。
メーリングリストで指定席券を売ると言った人(以降、「友人」と呼ぶことにする)に言われた席に行き、しばらく待った。
しばらくすると、ぼくの席を見て、あなたですか、という声が聞こえたので、はい、ぼくですと答えた。
彼がメーリングリストの友人であった。
そしてぼくは彼に当時の青春18きっぷの値段の11300円と、指定席券500円×2=1000円、計12300円を払って青春18きっぷとムーンライト八重垣、ふるさとライナー九州の指定席券を引き取った。
それにしてもはじめて見る1枚タイプの、駅の端末発券でない青春18きっぷである。
日本でもこれを売る駅は少なくて貴重なのでと、友人が売っている駅をさがしてわざわざ買ったのである。
まあぼくは、こういうきっぷは効果が大事で、形はそれほど重要でないと考えているので、それほど苦労して欲しいとも思わないが、せっかく売ってくれるのだから買ってみようと考えたのである。この冬はこれを使い切るあてがあるということもある。
そんなことを考えているうちに発車時刻になり、ムーンライト八重垣は京都駅を発車した。客車なのでかなり静かである。
あまり大きな声でおしゃべりしては悪いだろう。もう夜9時を過ぎているし。
どうやら今日は指定席も自由席もほとんど混雑しないみたいなので、多少は混雑している指定席よりは、自由席のほうがいいだろうと考え、自由席の方に移動することにした。
同じように旅行好きな人と3人で、鉄道のことについて語り合いながら大阪、神戸を過ぎていった。
そして明石を過ぎた。この列車はなぜか姫路に停車しないので、もう今日のうちは停車する駅はない。
待ちかねたかのように車掌がやってきたので、青春18きっぷにスタンプを押してもらった。
これでもう眠れる。友人とはこれからずっと下関まで一緒だし、来週(1月初旬)にも一緒に旅行することを約束しているので、それほど急いでおしゃべりすることもない。
目を閉じて次に開けると、どうやらここは岡山のようであった。
岡山では停車時間があるので列車を降りてトイレに行ってみた。
改札近くにコンビニでもあったら寄ろうと思ったのだが、どうやら岡山は改札近くにはコンビニはないようだ。また列車に戻った。
席に戻り、目を閉じる。
いつのまにか夜が明けていた。
腕時計を見ると、もう米子も松江も過ぎており、もうすく終点のようである。
右手に湖のような水面が見える。宍道湖だろう。
宍道湖がやがて見えなくなり、到着時刻がやってきた。
ムーンライト八重垣は無事定刻に出雲市駅に到着した。向かい側に浜田行きのディーゼル車が停車している。乗り換え時間はわずかだが、こちらの列車も向こうの列車もあまり混雑していないのですぐに乗り換えられるだろうと思った。
出雲市でムーンライト八重垣を友人と降り、向かいの浜田行きに乗り換えた。
ここから江津までは3月に乗っているので目新しい景色でもないが、西出雲の西に広がる車庫とか見ているとけっこうおもしろい。
そのうち日本海が見えてきた。山陰本線は海がずっと見えるわけではないが、見える場所がかなり多く、しかも12月の海なのでけっこういい景色なのである。
江津を過ぎてもそれほど景色には変化はなく、浜田に着いた。ここから益田に行くディーゼル車までは乗り換え時間があるので改札を出る。
駅の中にみやげものがたくさん売っている店があった。
なにしろ帰省を兼ねた旅行なので洗濯物をバッグに入れて持ち歩いている。バッグがみやげものに当たって落ちてしまった。拾って戻す。
朝食がまだなので、駅弁っぽいものを買っていこう。「さば寿し」があった。すしめしにさばが乗っただけの弁当である。これでいいだろう。買ってホームに戻り、益田行きに乗る。
益田までの間にさば寿しを食べる。けっこううまい弁当だった。こういう単純な弁当の方が味がしっかりしているような気がする。
長門市行きに乗り換える。相変わらず日本海はいい景色である。
長門市で小串行きに乗る。お昼になり、お客も多少増えてきた。ディーゼル車は相変わらずかなり古いディーゼル車である。
ディーゼル車は南に向きを変え、いよいよ下関が近づいた。海も日本海から玄界灘と呼べるところまでやってきた。
海の中に島が見える。このあたりに住む人はたいへんそうである。
小串で向かいの下関行きに乗り換えである。このあたりは客が多い。やはり下関が大都市だからであろう。
そのうち海が見えなくなり、客がどんどん乗ってきて終点下関に到着した。
ぼくと友人はディーゼル車を降りた。ぼくは門司行きの列車に乗り換えることにした。
京都からずっと一緒に旅行してきた友人は、下関で人道トンネルを見てくると言って別れた。
ぼくはあくまで鉄道の乗り歩きが目的なので、今回は鹿児島本線の門司港や香椎線の宇美(うみ)に行くことにしたわけである。なんでも下関でぼくと別れた後で別の友人と待ち合わせしていると言っていた。なお、この日彼が再び博多で会うまでどんな行動をとっていたかは、2000年現在もわかっていない。
とりあえずぼくは山陰本線のディーゼルカーを降りて門司行きのディーゼルカーに乗った。ここの路線はけっこうディーゼルカーが通るのである。
トンネルに入り、トンネルを出てたちまち九州入りである。さて、なんでも鹿児島本線の門司港駅の駅舎は重要文化財に指定されているそうであるので、一度見ておきたい。
ディーゼルカーを門司で降りて、門司港行きの電車が出るホームを探した。見つかった。階段を昇って降りて進んだ。それほどホームは混雑していない。
やってきた電車はとても新しい電車だった。そのまま2駅、門司港まで進む。
海沿いの太陽のまぶしい路線を、ほとんど空の電車が進んでいく。
すぐに電車は終着、門司港駅に到着した。
すいていると思った電車だが、編成が長いので、集まってみるともし電車が1両ならばいっぱいになるくらいのお客はいた。そして門司港は改札員の数が少ないのでたちまち行列になる。あまり急がないとはいえ、ちょっとつらい。
それでもなんとかムーンライト八重垣で4日目の所にスタンプを押してもらった18きっぷを見せて改札を出た。
門司港に着いたら、まずは駅の外に出て、駅舎をながめるのが礼儀だろう。青春18きっぷを出して改札を出て、さらに駅からちょっと歩いて振り返ってみた。
写真で以前に見た通りの格調高い駅舎である。今は小倉のベッドタウンになっているみたいだし、まだまだこの駅も残っていくのだろう。
再び駅に戻った。
博多方面の快速が出るホームを確認して18きっぷを見せて、改札をくぐった。
再び電車に乗った。真新しい快速である。
やはり門司港から乗る客の数などしれていて、楽に座った。そして快速は発車し、門司に来て小倉へと進んでいく。
小倉でかなり乗ってきた。しかし東京や名古屋や大阪や仙台みたいにものすごく混雑するわけではない。
夕暮れの景色の中を快速は進んでいく。
去年来た黒崎を過ぎて、折尾も過ぎていく。
そして快速は香椎に到着した。1年数ヶ月ぶりにこの駅で乗り換えることになる。去年は香椎線から鹿児島本線に乗り換えたので、今度は逆である。とりあえず全国の鉄道を効率よく乗ることが目的なので、まずは宇美(うみ)に行くのが効率が良いだろうと考えた。さあ、階段を昇って降りて香椎線に行こう。
香椎(かしい)で鹿児島本線のホームから階段を昇っておりて香椎線のホームに向かう。
ここのホームは西戸崎(さいとざき)行きも宇美(うみ)行きも出るホームなので、どっちのディーゼル車なのかなかなか難しい。
でもなんとか宇美行きであることを確認して乗った。多少古めのディーゼル車であった。
博多に近いので、けっこうお客が多い。ディーゼル車は発車していく。すぐに市街地から離れていく。
乗っていたお客は何駅もしないうちにどんどん降りていく。香椎からはそんなに遠くまで乗る人はいないようである。
12月なので日暮れは早く、あたりは暗くなってきた。そのまま進む。
長者原(ちょうじゃばる)に着くと、お客がどやどやと乗ってきた。博多からの帰り客だろう。
博多から香椎線の各駅に帰る人は、香椎〜長者原の各駅に行く人は鹿児島本線〜香椎線経由、長者原〜宇美の各駅に帰る人は篠栗(ささぐり)線〜香椎線経由で帰るということらしい。
お客が分離できていいかもしれない。
すっかり暗くなった中を、多少混雑したディーゼル車は宇美に向けて進んでいった。
宇美に着いた。
宇美は自家用車が集まる場所であった。ディーゼル車でやってきたお客がどんどん駅前にいた自家用車に吸い込まれ、家へと帰っていく。けっこうこういう駅は多いのだろう。
特にどこか行く必要もないし、それにこれから乗る予定の博多南線まであまり時間がないので、そのまま折り返しの列車に乗ることにした。
さすがに夕方なので博多方面のお客は少ない。
長者原で降りた。博多行きの篠栗(ささぐり)線まで時間があるので、青春18きっぷを見せていったん改札を出て、散歩することにした。
長者原(ちょうじゃばる)で散歩してみた。お店はないが、住宅はあるらしく、人通りもそれほどまばらではなく、細い道を車が通っていく。
駅では乗り換えの人がすることもなく休んでいる。乗り換え時間がけっこう長いこの駅では、駅前に店を作れば絶対もうかるぞ、と思うのだが、現実はそうもいかないのかなあ、と思う。
さて、博多行きの時刻だ。篠栗(ささぐり)線ホームに進む。
香椎線のホームは地面の上にあるがっしりしたホームであるが、篠栗線のホームはやすぶしんで、狭くて屋根もないホームであった。香椎線と立体交差するためだから仕方ないのだろう。
来たのは長者原の篠栗線ホームに似つかわしくない新しめのディーゼル車であった。快適に博多に向けて進んでいく。
吉塚はもう博多の市街地の一部になっている。
そしてひさしぶりに博多に到着する。去年の4月に来た時は、またこうやって何度も来ることになるとは思わなかった。さて、これから乗る予定の博多南線の発車時刻まではまだちょっと時間がある。
青春18きっぷを見せて改札の外に出てしばらく駅をながめてみた。
篠栗(ささぐり)線のディーゼル車を降りて、いったん改札を出た。青春18きっぷを使っていたので博多南線に乗るためには別にきっぷを買う必要があり、どうせならオレンジカードで買おうと思っていたからである。オレンジカードで買えることは下関で別れた友人に確認済みである。
さて、博多南線にはどこで乗ればいいのだろうか。
うろうろするうちに、なんだか裏口のような改札に出た。
自動券売機があり、博多南行きのきっぷも売られているようだ。改札の中はどうやら新幹線ホームに通じているらしい。
自動券売機にオレンジカードを入れて、「博多→博多南」のきっぷを買った。よくある乗車券と特急券一体のタイプである。
下関で別れた友人は、もしかしたら博多→博多南に乗車するかもしれない、乗らないかもしれないと言っていたのでしばらく待ったが、来ないようなのできっぷを見せて改札を通り過ぎた。
1年数ヶ月ぶりに博多駅の新幹線ホームにやってきた。しかしこれから乗る新幹線の車両はあくまで在来線特急扱いなのだ。
時刻表を見ても、博多南線は新幹線とは別列車扱いになっているので、おそらく小倉から来た新幹線が博多に着くと、お客はいったん全員おろされて、改めて博多南に行くお客を入れるのだろう。
そのうち友人の予定した時刻の博多南線の発車時刻が近づいて、博多南に行く車両が小倉の方からやってきた。博多南に行くらしいお客も集まってきた。
そしてしばらく待たされ、ようやく乗車になった。
6両しかなく、かなりの行列であるものの、座るには全く支障なく、ゆったり座れた。
これが290円で乗れるなんて、なんてぜいたくなんだろう、と思った。
そして発車時刻となった。やっぱり友人はやってこなかった。まあいいか。今夜のふるさとライナー九州では会えるだろう。
新幹線車両は博多駅を出発した。あたりまえだが発車した方向は小倉とは逆方向である。
博多の高いビルの間を進んでいき、やがて高いビルが遠ざかっていく。高架のまま、やがて複線だった線路が3本になり、4本になっていく。まるで車庫のようだ。そして新幹線車両はスピードを落としていく。
そして到着。
そこはまるで南武支線の八丁畷(はっちょうなわて)の駅のように、ホームは1本だけ、ホームに面したレールも1本だけ、他に3本ほどレールはあるがそっちのレールにはホームが面していない、という駅だった。
ホームに降りて、狭い改札にずらっと並び、なんとかきっぷを渡して外に出た。階段をおりてみた。
駅前は高いビルはないものの、けっこう家が建っており、駅前の道路はかなり車の交通も多い。
また階段を上がると若い男がぼくに話しかけてきた。
「ずいぶん大きな荷物を持ってるけど、ここには何で来たの?出張?帰省?」
「旅行です。ここに乗っておかないとJR西日本に全部乗ったことにならないんで来ました。」
「ああ、鉄道ファンってやつね。」
そこで話は終わってしまった。仲間がたくさんいる夜行列車の中、観光地などと違って、博多南みたいな駅はめったに鉄道ファンも来ないのだろう。
博多南の駅はJR西日本の駅のはずなのに、なぜかJR九州の旅行会社であるジョイロードがあった。遠くに行くきっぷはここで買えということだろう。
また自動券売機で290円の博多行きのきっぷを買い、改札があくのを待ち、改札に入って新幹線車両に入った。さすがにさっきよりお客が少ない。
新幹線車両は博多南駅を発車した。ふたたび郊外の住宅街を進み、また高いビルのある博多の市街に戻ってきた。
そしてなにごともなくまた博多の新幹線ホームに到着する。
いったん外に出て、また青春18きっぷを見せてふるさとライナー九州の出るホームへと向かった。