黒の宴 1


(1)
体の奥底に火が残っている。
消し去りたくても消えない。可燃物が近付けば一気に燃え広がりそうな小さくても危険な火種が。
男達の手による狂乱の宴から解放されたものの、しばらくの間アキラは毎夜のように
悪夢にうなされ苛まれた。
暗闇の中、ぬかるみのような地面から何本もの腕が生え出て来て足を掴まれアキラは転倒する。
その手は寄ってたかってアキラの衣服を引き裂き剥ぎ取り、口を塞ぎ目を覆い髪を捕らえる。地面に
大の字に縫い付けられて指先すら動かせないほどに全身を固定されると一斉にその手が数を増やして
体の表面を這い回る。手は指先が一体化してしっとりと濡れた生暖かい舌となり、首元を、胸を、
腹部を、腰を、そして局部を舐め回す。
ぬめぬめと敏感な箇所を責め立てられ、やがて両足の間に特に熱く固いモノが押し当てられてそれが
体の奥深くに侵入を始める。自分はそれを拒む事ができない。侵入を容易にするために足を限界まで
大きく開かされて腰を高く浮かされる。
体の奥に潜んでいた小さな火が大きく燃え上がって侵入して来るものと結びつきうごめいて呻き声すら
あげられないアキラを長い間翻弄し一気に外へ吹き出そうとして体の先端のある出口に突進する。
その瞬間に目が覚める。
部屋の中の空気はまだ早春の硬質な冷たいものなのにもかかわらず全身が汗でぐっしょり濡れている。
動悸がする。思わず夜着の下を見るが自分自身が熱く溶けそうな程に脈うっているだけだった。
いっそ吹き出てしまっていればよかったのに、寸前で止まっている。
その状態から先に自分で導く事が出来ない。試しても無駄だった。そうして消えない火種が
残る。壁にもたれかかって苦しいため息をつく。あのおぞましい経験は二度としたくない。
だけど体は、あの感触を望んでいる。あれ以上の快楽を求めている。あの研究会の日から。



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