黒の宴 10


(10)
そういえばこの近くに父が新たに事務所として一室を借りたと聞いていた。市河が軽く清掃をしてくれたのだ。
「やっぱ東京モンは違うな」
碁会所を出て間もなく社がそう口にし、アキラが怪訝そうな顔を向けた。
そして直ぐに社がさっきの鍵の事を何か誤解しているのだと気がついた。
「違うよ、この鍵は事務所の部屋の鍵。」
ゆくゆくは自分も使う機会があるだろう。一度見ておきたい場所であった。
「なんや、色気の無い話やなあ。」
「色気って…」
「まあお互い碁一筋の青春っちゅうことやな。ハハハ。」
と、爽やかな笑い声と同時にグルウウウウと豪快に社の腹が鳴った。
「…ハ」
社は赤くなるとパンッと手を合わせてアキラに頭を下げた。
「スマンが塔矢三段、ちょこっとつき合うてくれ」
数分後、アキラはファーストフードの店内でハンバーガー五個とポテトとコーラのLを
2個のトレーに分乗させた社と向き合って居た。
アキラはオレンジジュースのsのコップを手にしていた。社はほとんど二口程で立続けに3個ハンバーガーを
無き物にすると4個目からようやく味わう気になったらしくゆっくり頬ばった。
ヒカルも空腹の時は3個位頼む事はあったが社の豪快さには届かない。
「やっと収まった。実は死にそうに腹減っていたんや。」
ポテトをひょいひょい口の中に放り込みながら社が屈託のない笑顔を見せる。つられてアキラも笑顔になる。
店内の、特に若い女性が振り返り友人同士で社とアキラのどちらの方が好みか囁き合うのが聞こえて来る。



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