遠雷 12
(12)
イヤダ! 気持ち悪い!!
助けて、誰か!
お父さん、お母さん……ヤダ、ヤダ!
イヤダ!
脳裏に閃く言葉の数々は、声となることはない。
追い詰められた小動物のように、全身を小刻みに震わせて、必死になって抗うアキラに、芹澤は囁いた。
「このクリームはね、ただの潤滑剤じゃないんだよ。
君を素直にする、甘い薬が入っているんだ。催淫剤、聞いたことはあるかい?」
アキラは、思わず瞼を開けていた。
驚くほど近くに、芹澤の整った顔があった。
その男らしい美貌に、冷たい笑みがある。
それは、残酷で危険な微笑だった。
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