遠雷 14


(14)
アキラの気持ちなど置き去りにして、行為は続く。
「かたくなな心とは裏腹に、ココは随分解れているようじゃないか」
芹澤が楽しげに囁く。
手が自由になるものならば、耳を塞ぎたいとアキラは思った。
グチュグチュと耳に響く水音が、どこから聞こえてくるものか、考えるだけで死にたくなってくる。
「何本入っているか、わかるかな?」
アキラは答えない。いや、答えられるはずがない。
言葉は奪われたままだ。
「二本だよ。君の肛門は、美味しそうに咥えこんでいる。
物足りないかな。うん、物足りないようだね。待っておいで」
ぬちゃっという音がして、アキラの体内に差し込まれていた異物が、ずるりと抜け出ていった。
ほっと安堵の息をついたのは束の間、更なる質量が少し強引に入ってくる。
――――うあっ!
「そんなに驚くことはないだろう。ココは従順に受け止めているのだから。
三本。わかるかい、三本の指を君の肛門は受け入れているんだよ」
芹澤がゆっくりと押しこんでくる指にアキラは恐怖した。
痛みがない。それが怖い。
吐き気を伴う圧迫感と嫌悪感はあったが、痛みは感じられない。それが怖い。
心はこんなにも反発しているのに、体は既に受け止めている事実が、怖い。
根元まで押しこまれた指が今度はゆっくりと退いていく。
ニチャッと音を立てるのは、クリームだろう。
抜かれた指がまた進む。クリームの助けを借りたその動きに淀みはない。

クチュリ



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